10・現状整理

 まず、こっちの「星井夏樹」のこと。


1・妹の彼氏だったはずの青野と付き合っている。

2・DTじゃない。

3・「わがままプリンセス」と呼ばれるほどわがまま。

4・男子とも女子とも付き合った経験あり。

5・かなり浮気性っぽい。

6・浮気するたびに、バレバレな言い訳をする。


(で──)


7・青野を口説いたのは俺。


「最悪だ……」


 こっちの俺、ひどすぎないか?

 自分から口説いたにも関わらず、いざ恋人同士になったら浮気しまくりってことだろ?

 浮気だけでも最悪なのに、それって……それって……


「はぁぁぁぁ」


 なんかごめん、ごめんな、青野。

 こっちの俺にそんなめに合わされているのに、俺、今日お前の急所を蹴飛ばして、左頬にグーでパンチしちゃったよ。


「そうだ、謝んねーと」


 ナナセに連絡先を聞こうと立ち上がりかけて、ふと自分のスマホを開いてみる。

 恋人同士ってことは、すでに連絡先が登録されているかも。

 で、案の定メッセージアプリには青野のものとおぼしきアカウントがあった。


──「今日はごめん」

──「頬っぺ大丈夫?」

──「ちゃんと冷やせよ」


 送ると、すぐに既読がついた。

 けど、青野からのリプライはない。

 待っている間、同じアプリ内の「アルバム機能」を開いてみた。

 写真がずらりと表示された。

 そのほとんどが青野とのツーショットだ。ほぼ無表情の青野と、嬉しそうに笑っているこっちの世界の俺。


(ああ、うん……)


 この笑顔、この距離感。

 ほんとに付き合ってるっぽいな、俺たち。

 でも、ごめん。

 やっぱり「俺」は、青野のことをどうしても恋人には思えないんだ。

 妹の、ナナセの恋人。それが俺にとっての「青野行春」なんだ。

 だから、どんなにこっちのナナセが「青野を恋愛対象として見ていない」と言ったところで、あっちの──俺の本当の妹の顔がどうしてもちらついてしまう。そんな状況で、青野と恋人関係でいられるわけがない。


(そもそも青野が可哀想だ)


 こっちの俺に口説かれて、なのに何度も浮気されて。

 俺が青野の立場だったら、絶対に耐えられない。


(だったら、こうなったら……)

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