第16話

「こちらSD隊隊長から本部へ」

「こちら本部、どうした?」

「敵勢力の掃討を完了した。あとは拠点の破壊だけとなったため周囲の警戒を解除し後方部隊の撤退を進言する」

「敵SDはどうした?報告では3機あるとなっていたが」

「格納庫付近に半壊したのを2機確認した。しかし残り1機の姿はない。おそらく攻撃を開始する前になんらかの理由で離れたのだと思われる」

「そうか……後方部隊の撤退を許可する。ただしSDを1機護衛につけろ。万が一という事も考えられる」

「了解」


 本部との通信を終了したSD部隊の隊長は壊され尽くした傭兵会社ペットショップの様子をSDのモニターで見る。


「……馬鹿な連中だ。故郷を売らなければ死なずに済んだものを」


 SD部隊の隊長は自身の部下達であるSDパイロット達に通信をする。


「隊長機から全機へ。6番機は後方部隊の護衛。残りは俺とこれより証拠隠滅作業に入る。建築物を徹底的に破壊しフライガで全ての焼きはらえ」

「「「了解」」」


 6番機は早々に後方部隊の方に走っていく。残ったSD部隊はライフルを腰にマウントすると背中に手をまわし同サイズの火炎放射器を取り出す。


「こちら2番機から隊長機へ」

「どうした?」

「協力者の女を発見したのですがどうすればよいでしょうか?」

「あぁ、社長秘書の……アマギ大佐からはもう必要ないと聞いている。速やかに処理しろ」

「了解」


 その会話後地球軍のSD部隊は速やかに命令に従い行動を開始し瓦礫と大地を燃やし夜空を血の様に赤い炎が照らす。


 後方部隊は完全に戦線を離脱し現地部隊ももう間も無く任務が完了する。


 しかし5番機から全機に通信が入る。

 

「こちら5番機!こちら5番機!誰か応答願う!」


 なにやら危機迫る声に仲間達は何事かと首を傾げていると隊長機が応答する。

 

「こちら隊長機、どうした5番機?そんなに取り乱して?コンテナの回収はどうなった?」

「それどころじゃないんです!?今格納庫で——」


 酷いノイズで通信が乱れその後通信が完全に途絶した。


「なにか問題が起きたようだな……まさか姿が見えなかったSDの仕業か……いや、どうだ?」


 隊長は呟いた自身の言葉を疑う。


 敵のSDは旧型でオンボロであるガルメ。自分達の使っている最新鋭機のシンバには逆立ちしたって敵わない。


 だが戦場に絶対がないという事を隊長は知っていた。故に万が一という場合も考え部下を格納庫へ向かわせて状況を確認させようと通信するのだが……。


「……通信が繋がらない?」


 部下達だけじゃない。全てへの通信が不可能となっている。


「通信が妨害だと……?」


 なにやらただ事ではなくなってきた事から隊長は急ぎ格納庫へと向かおうと走り出したした。


 その時、隊長はモニター越しに見た。


 天高く舞い上がり落ちるシンバの姿を。


・〜〜〜○


 隊長機と通信が途絶した直後SD部隊が動揺する中で2番機だけが素早く動いた。


「通信途絶の原因はおそらくジャミング。問題ではあるが今すぐにどうこうなる問題ではない。なら今優先すべきは明確な問題である5番機の元へと向かう事だな」


 5番機が居るであろう格納庫前までやって来た直後、格納庫の天井をぶち破り天高く何かが舞があった。


「なっ、なんだ!?なにが飛んで——!?」


 数秒後目の前に落ちてきたそれを見て2番機のパイロットは目を見開く。


 落ちてきたそれは自分達と同じSDシンバ。件の5番機だ。


 慌てて駆け寄り接触通信を試みようとするがやめる。


「コクピット部分が砲弾をくらった鉄板みたいに押し潰されている……これじゃあパイロットも……」


 2番機はゆっくりと炎と煙に包まれた格納庫へ視線を向ける。


「武器の類じゃない。センサーにSDの反応がある」


 事前に去ったと考えていたガルメとは考えなかった。旧型で新型であるシンバを倒すなんて不可能だからだ。


「俺達の知らないSDか?だとするなら、まさか月の……っ」


 2番機のパイロットに凄まじい緊張が走る。


 フライガでは役に立たないと考え慌てて実弾ライフルに持ち換えようとした、その瞬間だった。格納庫から炎と煙を裂いて正体不明のSDが飛び出す。


「!?」


 予想外の速さで動く影に2番機は対応が間に合わずすれ違いざま頭部を破壊される。


 姿が見えなかった。モニターが消えた。はやくサブモニター切り替えなくては……と、パイロットは慌てて操作する。


 これが決定的にまずかった。


「くそっ……!どうしたモニターが切り替わらない!?」


 本来SDはメインカメラからサブカメラへの切り替えは自動で行われる。だが焦ってそれを失念し手動でやった事で切り替えをオフにしてしまったのだ。


 動きを止め完全に意識の逸れてしまった事による数秒の、しかし致命的な空白が発生。謎のSDは木偶の坊となった2番機をこかすとコクピット部目掛けて足を踏み下ろす。動く気配がなくなるまで何度も……。


 そこへ遅れながらやって来た3番機と4番機。


 彼等は最初は直ぐに助けに入ろうとした。だが彼等は謎のSDの容赦のない徹底ぶりに恐怖し動けず2番機が完全に動かなくなった後も見てる事しか出来ない。


 その後、謎のSDは2機に目もくれず星空を見上げ両手を伸ばす。


 意味がまったく分からない動作。いや、実際意味なんて微塵もない……だがその場で黙って見ていた敵は自分達への侮辱なのだと受け取ってしまった。


「このっ……なめやがって!!」

「ぶっ殺してやる!!」


 敵は怒りライフルを謎のSDへと向け発砲し突っ込んでいく。


 炎が消え月と星の光だけが照らす廃墟で戦いの第二幕が上がった。

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