第14話
テツジとアルマは歪んだ扉の前で尻もちをつく。
「危なかった……後少し、少し扉の方に飛び込むのが遅かったら死んでるところだった」
テツジ達は幸運だった。
目の前で混乱したアカリをどうにかしようと冷静に接していたから爆発で天井から落ちてきた瓦礫にも咄嗟に動けた。今いる物置部屋も前もって改修していたおかげで此処の何処よりも長くもつ。
でも不幸もあった。
「アカリ!返事してアカリ!」
歪んだ扉を叩き叫ぶアルマ。
アカリは此処には居ない。
扉の向こうに1人とり残されてしまった。
「くそっ、こんな筈じゃあ……!」
当初の予定ならアカリの腕輪を壊したら色々説明して物置部屋内にあるテツジの部屋に作られた地下通路を使いアカリ、アルマ、テツジの3人で攻撃前に難なく脱出する筈だった。
しかし想定外にも説明の段階でアカリは錯乱。それによりほんの数分、しかし大事な数分を忘れ攻撃の時間となりアカリを置き去りにしてしまった。
アカリならどんな状況だろうと難なく対応すると思い込んでいた……でも違った。
異常とも思える戦闘力があろうが心はなんら他と変わらない傷つきやすい16歳の子供だった。
「大人失格だな……」
テツジは歪んだ扉を見つめ血が滲む程に拳を握りしめて立ち上がる。
「……此処から脱出するぞアマル」
「っ!?何言ってんの父さん!?まだ扉の向こうにはアカリがいんのよ!早く助けに行かないと!」
「無理だ。その扉の歪み具合から見て外から瓦礫で押されてる。どうしようもない」
「なら道具を使えば……!」
アルマが自分達の部屋へ行こうとするのをテツジは手を掴んで止める。
「部屋にこの状況をどうにか出来る道具なんてない。知ってるだろう?」
テツジの言葉通り部屋には瓦礫を撤去出来るような道具はない。でもそれを知ってて尚アルマはこの場から離れたくなかった。アカリはアルマにとって友人以上、家族に限りなく近い大事な存在なのだ。
「アカリを見捨てるなんて絶対嫌だ!!そんな事をするくらいなら私も此処に——」
「——アルマ!!」
「!」
テツジに手を伸ばされぶたれるかと思ったアルマは目を瞑る。
「っ……?」
しかし一向に痛みが来ない。代わりにきたのは頭の上に置かれた撫でる大きな手から温もりだった。
「アカリが心配なのは俺も一緒だ」
「……」
「でもな。何も出来ない俺達が此処に残って死ぬとしたらアカリはどう思う?」
「それは……多分、泣くとおもう」
「だろ?あいつは誰よりも人の命を尊んで大事に思う優しい奴だからな。だから俺達がもしアカリのためにって無駄死にした日には、アイツは悲しむ……それでもって二度と立ち直れなくなる。さっきのちょっとした錯乱と違ってな」
「でも……」
アルマはついに耐え切れず涙を流す。
その姿にテツジは安心させる様に笑う。
「ああ、それでも心配は心配だよな。でもな忘れてるかもしれないが、あのアカリだぞ?たかだか瓦礫が落ちて来た程度で死ぬ玉か?昨日だか一昨日の仕事の時だってSD1機なら難なく倒しったていう様な非常識の塊なんだぞ?」
「……」
泣いていたアルマは考える様に俯く。
「俺達はアカリを見捨てて逃げるんじゃない。もしもの時を考えて早く此処から出て助ける準備を整えて戻って来るためだ。それでもお前は此処に残るって言うのか?」
そう言われて数十秒ほど考えたアルマは涙を拭って顔を上げる。
「行こう。早く準備しないと」
「ああ」
2人は部屋へ行き隠し扉を開けて地下通路を進む。絶対に戻って来てアカリを助ける意思を抱いて……だがそれはアルマだけでテツジだけは胸に罪悪感を抱えていた。
ああだこうだ言って結局自分の娘を助けたいだけの言い訳……酷い目にあってるガキを置いて……ほんと大人失格だな。
暗い地下通路に響く爆音もそうであると言っているようでテツジは泣きそうになるのを堪えてアルマと2人で進むのであった。
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