第5話
「父さんに聞きたい事があるんだけど」
「なんだ?」
「ニッコウ達がやってる地球軍からの仕事ってなんなの?」
「なんだ?お前がそん事を気にするなんて珍しい」
「気にしてるのは私じゃなくてアカリ」
「なんだそうだったのか。なら教えてやろう!」
「む?」
口いっぱいにクッキーを頬張っていると自分に話の矛先が向いた。
あー、そんな話もしたっけかな。でも正直どうでもいいし断っておこう。
「ニッコウ達がやってる仕事は地球軍の奪われたコンテナの奪還任務だ。なんでも奪った敵側に地球軍の側のSDを何機も倒しちまう凄腕のSD乗りが居るらしくてな。そこでペットショップの優秀なSD乗りである猿組面々の力を是非とも借りたいだそうだ」
「ふーん、良い話じゃない。地球軍に猿組の力が認められてるだなんて」
「アルマは今の話を聞いてそう思ったのか?」
「うん、そうだけど……え、私今なんかおかしかった?」
困り顔のアルマを他所に親方は真剣な表情で俺の方を見る。
「アカリは今のを聞いてどう思った?」
おっとと、断る間もなく話が進んだぞ……うーん、どうと言われてもな。俺の考えもアルマと同じだし、でも親方が真面目そうに俺にも意見を聞くあたり何かあるのか……。
俺は口の中のクッキーをアルマの淹れてくれたコーヒーで胃に流し込んで少し真剣に考えること1分ほど……。
「……胡散臭いですかね」
「その理由は?」
「うちは数ある傭兵会社で中の下くらいの会社ですよね?もっと良い所があるだろうにわざわざうちを指名するなんてどうにも……」
「……」
親方はその通りだと言いたげに頷く。
「しかもですよ。地球軍は地球で1番性能が良いSDを使っててパイロットの数は多いし手練れも多い地球の支配者様です。そんな連中が金まで払って傭兵に依頼するなんて……知れれば自分達の絶対の支配体制にひびが入りかねない」
「た、たしかに…そう言われてみたら」
とまぁ、偉そうに語ってみて気づいたけど、今にして思えば今回俺がやらされた仕事も胡散臭いよな。テロリストが地球軍の軍事基地を占拠だなんて普通ありえないし。
「そう、お前達みたいによくよく考えれば分かる事なんだ……なのにあのバカ社長は」
頭が痛そうに言う親方に俺とアルマは苦笑いを浮かべながら頷く。
傭兵会社は戦ってなんぼだ。だが金とは命あっての物種。だからトップは自分達の生と死の分水嶺はきっちり見極めないといけない。
だがうちの社長は見極めない。
命は二の次で金を優先するクズなのだ。
「これまで金に目が眩んで一体どれだけの奴等を死なせたことか……」
「これからもそれが続くでしょうね」
「あぁ、だからこそ言える。此処はそう遠くないうち確実に消える」
親方の言葉に俺は黙って頷く。
正直な気持ちを言えば俺も親方も会社が消えるであろう事には抵抗はない。寧ろ喜ばしいとさえ思っている。無職になると考えると僅かながら抵抗はあるのだが。
「ならとっととそうなればいいのよ。こっちだって清々して次の仕事を探せるってもんよ」
「我が娘ながらなんともまぁ……」
「俺らが口に出しずらい事を平気で言っちゃいますもんね」
「ふん、こんな事くらい平気で言えなくちゃ女が廃るってものよ」
「「ほー、女ってつよ」」
堂々と胸を張るアルマに賞賛の拍手をおくる男2人。
でもお前は分かってるのかアルマ?
俺達の様な薄汚れた仕事をする会社が消える時っていうのはそこで働く奴等全員諸共だって事に……。
視線を自分を縛りつける腕輪に落とす。
いや、2人はまだ俺なんかより助かる確率は少なからずある……じゃあいいか。
「アカリ?どうかしたの?腕輪なんかじっと見て」
「え、いや別に——」
放送が鳴り響く。
『社長からの呼び出しです。問題児は直ちに社長室まで来るように。繰り返します——』
噂をすればか。件の社長から直々の呼び出しだった。
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