第4話
詳しい事は知らないがムーンクラウンとは地球から月に移住に成功した者達が独立宣言して出来た国らしい。何が理由で地球に宣戦布告なんてしたのやら……。
質量兵器の名は隕石弾。名の通り宇宙を腐るほど漂っているデカい石ころだ。
隕石弾の威力は絶大で各国家主要都市は落とされたその日にあっさり壊滅した。
普通に考えてここまでされたのなら地球は降伏するべきだったのだが……何を血迷ったか降伏を受け入れず今もムーンクラウンに降伏勧告と共に隕石弾を落とされ続けている。
だが地球側もただ黙ってやられ続けているのではなく、対抗策としてミサイル基地を世界各国各所に配置し迎撃出来るようにした。その結果、隕石弾による被害はある程度抑えられた。だが抑えられたと云っても直撃に比べたらという話で破壊した隕石弾の破片は地球上に多大な被害をもたらし続けている。
「色々と差がありすぎるのよね。こっちは迎撃のためにちまちま発射する弾を装填して標的に向けて撃つっていう工程があるのに月の方はただ隕石を地球に向けて押し出せばそれでいいんだから」
呆れた様子でそう口にするアルマ。
「そうだけど多少なりとも対策がある分マシだろうさ。でなければ今頃俺達はモグラみたいに土の中で生活しないといけないんだから」
「それはそうね。でもそれもどれだけの効果があるのか……」
アルマは整備中のSDを見る。
「SDを最初に作ったのは月……なら当然月にもSDは存在する。それも革新的な技術の宝庫と云われる月のとなるとその性能は地球のとは比べ物にならないでしょうね。噂じゃあ地球産のSD、そこにあるガルメは月のSDの性能には遠く及んでないって話だし」
その話は俺も知っているが正直信じ難い話だ。今地球で動いているSDは核ミサイルなんかを除けば最強の兵器といっても過言はない。なのに月のSDの性能が地球のを遥か凌ぐなんて全く想像出来ない。
ただ、月のSDの話は噂なので本当かどうか疑わしいんだよな。せめて月のSDの戦った記録とか姿を目撃してたら信憑性もあるんだけど。
格納庫内を歩き回り物置部屋と書かれたボロい扉を開けて入る。すると短い一直線の通路の先に1枚だけある重厚な鉄板の扉。
通路を進みアルマは強めに1回扉をノックし2秒ほど間を置いてからもう2回ノックした。
この妙なノックはなんでも侵入者を警戒しての事だそうだが何を警戒してるのやら。
「親方はこっちで仕事?」
「いま仕事じゃなくて寝てる。昨日徹夜だったから」
そう言ってアルマは扉を開けて中へ入って行く。
「警戒してるって言ってるくせに鍵掛けてないんだよな……」
呆れながら俺も中に入って数秒で室内の様子に俺は苦笑いする。
部屋中に散乱した工具に色んな雑誌、パソコンやタブレット。おまけにコーヒの空き缶に皿や割り箸なんかのゴミ。俺の部屋相当だけど此処はそれ以上に見事な汚部屋だ。
「おーい起きてる父さん?」
アルマが足元の邪魔なゴミを蹴飛ばしながらそう言ってしばらくすると数秒後、ソファーの後ろから頭にバンダナを巻いたガタイの良いおっさんが眠そうにあくびをしながら起き上がった。
「んー、アルマ……いま何時だ?」
「10時よ」
「……夜の?」
「朝。因みに父さんが寝てから8時間経っただけだから日は跨いでないわよ」
アルマのその言葉に嫌そうな顔をしたその人はアルマの横に立つ俺に気づくと眠そうな目を擦って凝視した後、驚いた様に見開いた。
「おおー!アカリじゃねぇか!もう帰って来てたのか!」
「今朝の8時くらいに」
「はは!流石に早いな!それに無事そうでなによりだ!」
眠気が吹っ飛んだのか元気に俺の肩を叩いて笑うこのガタイの良い人の名前はテツジさん。鳥組のチーフメカニックマンであだ名は親方。そしてアルマの実の父親でそのアルマ同様俺に親しく接してくれる気の良い人だ。
「昨日は徹夜だったんですって?」
「そうなんだよ。昨日の9時くらいに突然明日の仕事で使うSDの数が足りないから壊れたやつ2機を使えるようにしろってあの二頭身社長が無理難題言いやがってな」
「ご愁傷様です」
「まったく、胸糞の悪いたらねぇぜ……こちとら徹夜までしてやってやったのに労いの言葉も言いやがらねぇ!あいつ絶対碌な死に方しねぇな!いや、むしろしろ!苦しんで死んじまえ!」
火がついた様に怒り愚痴る親方。
俺とアルマは親方の気が鎮まるまでただ黙って首を縦に振るのだった……ほんの30分ほど。
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