第16話 決着
「合体技……?何それ?面白そうじゃん」
「でも、俺達にそんなものないぞ」
彩音と光はそう言って首を傾げる。真耶はそんな2人を見て少し考える素振りを見せると、不敵な笑みを浮かべながら言った。
「じゃあ、今考えたからその技を使おうぜ」
「「「え!?」」」
「今考えたって……そうは言っても成功するか分からないでしょ。それに、私に関しては戦闘系の能力じゃないし」
「別に戦闘系じゃなくてもいいさ。合体技なんだから、全員が力を合わせれば良い」
真耶はそう言って手足をポキポキと言わせ始めた。
「あ、そうやって手足をポキポキ言わせると太くなるらしいよ」
彩音はそんな真耶にそう言った。すると、真耶は少し暗い表情をしてポキポキ言わせるのを辞める。そして、小さな声で言った。
「……そうなのか……」
「……そうだよ」
「……まぁいいや。じゃあ技の説明をする……っ!?」
真耶が話を始めようとすると、神が巨大な灼熱の球体を作っていることに気がついた。どうやら今まで話している間に作っていたらしい。
「……我はあんなもの崩壊させられないぞ」
「いや、あれを壊せたら玄翔を異世界に持って帰りたいよ」
そんなことを言いながら呆然とする。しかし、今はそんなことをしている場合では無い。
直ぐに気を取り直して説明を始める。
「あんなことになってしまったが、問題は無い。彩音はいつも通りあいつの思考を読んでくれ。それでタイミングを合わせる。玄翔は光の乗ってくれ。光は4速で真っ直ぐ突っ込むんだ。俺もその隣でモルドレッドを背負いながら突っ込む。それだけだ」
真耶は勝ち誇ったような笑顔でそう言った。しかし、その作戦は全然勝ち誇れるようなものではなかった。
「なぁ、それって誰かがミスれば終わりじゃないか?」
「そうだな。だが、失敗しないだろ?」
真耶はいつも通りな感じで光達にそう聞いた。
さすがは策士だとその時光は思った。そんなことを聞かれたら、答えは1つしかない。
光達はヒーローなのだ。悪を倒すには、失敗は許されない。
「当たり前だろ」
光は自信を持ってそう言った。すると、真耶はこれまで以上に恐怖に満ちた笑みを浮かべる。しかし、今の光達はその顔も怖くはなかった。
「それと、さっきからだんまりをこいているモルドレッドちゃんは魔法で敵の攻撃をいなしてくれ。そして最後にエンペラーレイを真っ直ぐ放ってくれ」
真耶はニコニコ笑顔でモルドレッドにそう言う。その笑顔がどこか恐怖心を煽るような、気味悪さが滲み出ていた。
「うぅぅ……怖いよぉ……」
「……誰のせいでこんなにピンチになってると思う?」
「うぅぅ……後でお仕置は受けるから許してぇ」
モルドレッドはそう言ってへたり込む。まぁ、いじめるのはこれくらいにしてそろそろやらなければならない。なぜなら、さっきから神の作っている灼熱の球体が熱波を放ってきて暑いからだ。
「やるぞ」
真耶がそう言った刹那、全員同じタイミングでその場を飛び出した。それと同時に神は灼熱の球体を投げてくる。
「彩音!弱点はあるか!?」
「ちょっと待って!……クソッ、もう対策しているな。もっと深層を読むんだ……!……っ!?わかったぞ!中心の核だ!」
「っ!?何!?考えてないのに読んだだと!?まさか、無意識の領域まで読んだと言うのか!?」
神は彩音のその能力の凄さに動揺を隠せない。真耶は彩音の言葉を聞いて直ぐに剣を構えた。
もしかしたらあいつのあの動揺は真耶達をはめる罠かもしれない。だが、それでも彩音を信じるしかない。
「モルドレッド!」
「うん!”ディスアセンブル砲”」
モルドレッドが真耶の背中の上から球体に向かって魔法を放った。真耶はそれを直ぐに剣で絡め取り
(理を変えろ。今の理では出来ないことでも、全てできるようになるために、理を変えろ!)
「”
その瞬間、世界の理が変化した。それは、魔法で作られた物質は全て作られた2秒間だけすり抜けるというもの。
これは、作られた2秒間だけ素粒子が100パーセントの確率で噛み合い、トンネル効果が起こるというものである。
真耶はそう理を変えることで、斬撃が2秒間だけすり抜け灼熱の球体の核の部分まで突き進んでいく。そして、ちょうど核の部分ですり抜けられなくなる。
「っ!?」
「「「っ!?」」」
その瞬間、灼熱の球体が霧散した。辺り一面に火の粉が舞う。
「クソッ!まさかあの技を壊すだと!?」
「俺を舐めるなよ!これで終わりだ!」
真耶はそう叫ぶと剣に魔力を込めた。すると、剣も白いオーラを纏う。
「俺は昔見た技は全て使えるんだよ。”
そう言って剣を振り下ろした。黒い刃が神を襲う。しかし、その剣から放たれた斬撃は神によって止められてしまう。
「協力プレイは強いな!」
そう言って光がその斬撃を足で押した。すると、スピードが出ていたこともあってか、凄まじい勢いで斬撃は神を押していく。
「クソッ!何故だ!?なぜ押される!?」
「これが2人の友情の力だよ。さよならだな。”
真耶はそう言って、これまで崩壊させてきた神の技を全て再構築した。そして、全て神にお返しする。
光はそれを確認した瞬間、斬撃を蹴りその場を離れる。斬撃はけられたことでさらにスピードを上げ神を斬ろうとする。さらに、再構築された魔法やらなんやらは全力で神を襲った。
「クソォォォォォォォ!」
神の断末魔が聞こえた。その刹那、大爆発が起こる。しかし、その爆発も真耶が放った斬撃が突然花のつぼみみたいになったことで全て包み込まれてしまった。
「お前が死ねば、お前の魔力で花は咲く。お前の魔法を閉じ込めてやったよ。自分の技で死ね。これこそ、文字通り自業自得だよ」
そう呟いて近くのビルの屋上に着地した。その刹那、花は咲く。黒かった花は、開いた瞬間に彩を持ち始め鮮やかで綺麗になった。そして、その花からは鱗粉のようなものが出てきて、日本中に降り注ぐ。すると、今の戦いで壊されたところは修復し、日本中の草木が生い茂った。
「やっと終わったのか……」
「そうだな。意外と短かったが、これも皆の力を合わせた結果だ」
「そうだな」
真耶と光はそんな会話をして微笑み合う。
「じゃあ、一旦彩音の元まで戻ろっか」
光はそう言って歩き出した。その後ろを真耶達もついて行く。ふと、真耶が後ろを振り返ると、黒い花は儚くも美しく、光の粒子となって消えていっていた。
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