第15話 2対2の魂

 ケイオスは剣を構えると直ぐに走り出した。そして、時計を1度確認する。


「……まだ時間はかかりそうだ」


 ケイオスはそう呟いて光の元へと向かった。


「光、どんな感じか?」


「ん?あぁ、動きが単調になって来ている。避けるのも簡単になっているよ」


「了解。なら彩音達のところに戻ってこれを開けててくれ」


 そう言ってケイオスは四角い箱を渡した。


「これは?」


「最終奥義……みたいなやつさ。奥の手みたいなものだから使わないかもしれないけどね」


「そうか……分かった。負けるなよ」


 光

 そう言って彩音達の元へと戻っていく。ケイオスはそれを確認して直ぐに神に向き合った。


 このオーラからして恐らく主体は神だ。神の中に悪魔の魂が融合している感じだ。


 ケイオスはそれを見て不敵な笑みを浮かべた。そして、剣を構えスピリチュアルアイを発動する。


「……やっぱり真耶が居ないと目の能力も使えねぇな。物理変化も真耶が居ないと上手く出来ねえし」


 そんなことを呟きながら地面を物理変化で変え、神の元へと登っていく。そして、剣に魂の力を込めて切りつけた。


「グゥッ!クソォ!」


 神は少し呻吟する。そして、直ぐに反撃しようと手を突き出してきた。しかし、魔法が発動しない。そのことに神は動揺する。


「何故だ!?何をした!?」


「魂魄を傷つけただけだよ。別に魔力回路を断ち切ったわけじゃないから魔法は使えるよ」


 ケイオスはそう言って空気を物理変化を使って固定する。そして、その固定した空気を足場に飛び、神に向かってかかと落としを食らわせた。


「グァッ!この野郎!人間風情が舐めるなよ!」


「そんな人間風情に追い込まれてるのはどこのどいつかな?」


 ケイオスはそう言って転移眼テレポートアイを目にうかべる。そして、直ぐに自分の居場所を別の場所に移す。


 移した場所はビルの屋上だった。ケイオスはそこに転移し1度神との距離をとる。そうすることで体制を1度立て直そうとしているのだ。


「っ!?いつの間に!?……まぁいい。これでも喰らえ。”ゴッドフェニックス”」


 神はそう言って炎の不死鳥を放ってきた。その威力は凄まじく、触れたものを全て焼き尽くすような勢いだ。


 ケイオスはその不死鳥を見て剣を構える。そして、星の眼スターアイを使い星の魔力を剣に注ぐ。


「避けたら街が大火事だよな。なら、切るしかないか。”スターライトソード”」


 そう言って縦に剣を振り下ろした。すると、不死鳥は真っ二つに切り裂かれ、霧散する。その様子はまるで流れ星のように綺麗だった。


「っ!?まさかこれを……!?」


 神はそれを見て驚きを隠せない。動揺しながらも魔力を溜める。そして、再び魔法を唱えた。


「”カオスフェニックス”」


 そう唱えると、今度は黒い炎の不死鳥が飛んできた。恐らくこれも触れてはならない。


「”プラネットブレイク”」


 ケイオスはそう唱え剣を横に振る。すると、さっきと同じように剣は黒い炎の不死鳥を切り裂き爆発させた。


「……」


「……」


 2人は同時に向き合う。恐らくどちらも考えていることは同じだ。どちらか一方が隙を見せれば終わり。そして、どちらかの大技が当たれば終わりだ。


「……まさか、お前のようなやつにここまでの力があるとはな……道理でゼウスも本気を出すわけか」


「そっちが何もしないならこっちも何もしない。お前らが先にちょっかいかけたんだろ?」


「そうかもしれないな。だが、それでもお前のような不穏分子は消しておくべきだ」


「理不尽なことは嫌いなんだよ」


 ケイオスと神はそう言い合って睨み合う。そして、どちらも殺気を極限まで高める。


「もう終わりにしよう。”デスゾーン”」


 神はそう言って指を鳴らした。その瞬間、光達を含め、全員が黒い空間に囚われた。


 ケイオスはそれを認識した瞬間に光達の元へと戻る。そして、直ぐに結界を張った。


「そう構えなくてもいい。どうせ無駄だ。”天の裁きをくらえ。ジャッジメントエンド”」


 その刹那、その空間が光で埋め尽くされる。その光は瞬く間に強くなっていき結界を壊そうとしてきた。


 どうやら光自体に物質を破壊する能力が付与エンチャントされているらしい。ケイオスはそれを確認すると、玄翔の崩壊の魔眼を発動する。これは、先程共鳴状態に入っていたから出来たことだ。


「おぉ!それは我が崩壊の魔眼。まさか使えるとは」


「俺だけ特別なんだ。真耶は魔眼系統は得意だからな」


 そう言いながら光を崩壊させていく。しかし、それでも耐え切れそうにない。いずれこちらが先に負ける。それに、この崩壊の魔眼はかなり扱いが難しい。下手をすれば目が焼ききれてしまう。今使っているが、既に目がぼやけて来てしまった。


「フッ、まさかこんな魔眼を使っているとは……玄翔は本当に凄いよ」


「それほどでもないさ」


「そうか……とりあえず褒めるのは後にしよう。今はこれをどうにかしないと行けないからな。光!さっき渡した箱の中身を出してくれ!」


 光はそう言われて直ぐに箱を開ける。すると、中から何かしらのオーブのようなものが出てきた。


「これは……?」


「それは友情のオーブだ。とりあえず強くなれる」


 ケイオスは目から血を流し、何とか結界を保とうとしながら説明をする。


「とりあえずって……いや、でも今はそれくらい単純な方がいいのかもしれない。それで、これはどうやって使うんだ?」


「……俺と一緒に使う。玄翔、一瞬だけ魔眼でこの光を崩壊させられるか?」


「多分出来る。だが、どれくらいできるか分からない」


「そうか……じゃあ、この一点だけ消すような魔法的な技はあるか?」


「……っ!?一応……できるか分からないけど……」


「そうか。なら、それでこの光に穴を開けてくれ。そこから俺と光がお前達を連れて脱出する。そして、そのままあいつを殺す」


 ケイオスはそう言ってさらに結界を強めた。今気がついたが、既に結界はボロボロで壊れそうだ。


「クッ……っ!?」


 その時、ケイオスが倒れた。そして、結界がの壊れてしまう。


「「「っ!?」」」


 3人は慌てた。しかし、直ぐに結界は修復され、ケイオスは立ち上がる。しかし、少し雰囲気が違う。


「……はぁ、危ないな」


 なんと、真耶に変わったのだ。どうやらケイオスは限界が来たらしい。


「……はぁ、結界とか苦手なのに無理するなよ」


 真耶はめから垂れる血を拭き取りそう呟く。そして、直ぐに光達と向き合い玄翔にもう一度頼んだ。


「頼む。やってくれなければ、俺達は負けてしまう」


「……分かった。やってみるよ!」


 そう言って力強く拳を握る。真耶はそれを見て優しい笑顔を作った。そして、指を指す。


「この方向に撃ってくれ」


「あぁ!……頼む……!出てくれ……!あの力……!”深淵の光ネザーレイ”」


 玄翔はそう言って拳を振り抜いた。その拳から放たれた大量のエネルギーは真耶達を襲っていた光を切り裂く。


 光はその瞬間に彩音を抱きかかえて飛び出した。真耶も玄翔とモルドレッドを抱きかかえて飛び出す。そうして、無事に生還することが出来た。


 しかし、まだ神は生きているし、もう1つの空間からは抜け出せていない。なら、これも抜け出さなければならない。


「……ん……あれ?ここは……?」


 その時、モルドレッドが目を覚ました。真耶はそれを見た瞬間に不敵な笑みを浮かべる。何やら嫌な考えが思い浮かんだろだろうか。そんな様子が見て取れる。


「やったぜ。役者は全員揃ったようだ。やっぱりヒーローってのは、全員で合わせ技をしないといけないからな」


 そんなことを言って不敵な笑みを浮かべる。それを聞いて光達も何かに気がついた。そして、友情のオーブを見つめる。


 気がつけば、そのオーブは虹色の光を放っていた。

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