第13話 暗黒世界
彩音は差し伸べられたその手を掴む。すると、ケイオスの体が白く発光し始めた。
「……よし、共鳴完了だ。それじゃあ行ってくる」
ケイオスはそう言ってモルドレッドの近くまで行く。モルドレッドはめに光を失い、まるで人形のようにその場に立ち尽くしていた。
ケイオスはそんなモルドレッドの頭に手を置く。そして、魔力を流し込んだ。真耶の意思をその魔力に込めて。
「真耶……頑張ってくれよ」
ケイオスは小さく呟いた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……真耶が目を覚ますとそこは闇だった。何も無い。暗く冷たい空間。どこを見渡しても、あるのはただの闇。
「真っ暗だな。前はこんなこと無かったんだが……」
真耶はそんなことを呟きながら歩き出す。
「……さて、どこに行こうかね……」
ここは深淵。どこを見渡してもあるのは闇ばかり。手当り次第歩いたとて見つかるわけもない。
「八方塞がりだ。だいたい、俺はこういう1人で頑張るタイプのことが得意じゃないんだよ」
誰もいない場所にそう言う。しかし、返答が帰ってくることは無い。
「……フッ、今俺がこう思ってるということは、あいつもどうせ『俺はこういう力を合わせる集団戦闘は得意じゃないんだよ』とか言ってるだろうな」
またしても誰もいない空間に呟く。やはり、返答はかえってこない。
いや、別に帰ってくる必要は無い。帰ってこないと分かれば、この近くにモルドレッドが居ないことが証明されるからだ。
なら、もう少し遠くを探すべきだ。真耶は頭の中でそん考え、魔法を発動した。それは、光の玉を作り出す魔法。
真耶はその光の玉を8つ作り出し自分の頭上に等間隔で浮かべ並べた。
そして、もう1つ光の玉を作り出すと、自分の足元に置く。
「さて、本格的に探すか」
真耶はそう言って光の玉を8方向に飛ばした。それも、かなり遠くに。これで
「よし。行くか。……そっちは頼んだぜ。ケイオス」
そう言って自分の真正面にあった光の玉に向かって歩き始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……ケイオスは……
「それで、どうする?相手も2人揃ってしまったが、また二手に分けるか?」
「いや、もう一緒に倒した方がいいんじゃない?」
「だよな。じゃあ、本気で倒しに行くか」
ケイオスはそう言ってゲーゲンタイルを構えた。
「待ってくれ。恐らくあいつらは1人で戦って勝てるようなやつじゃない。連携をとるんだ」
彩音はそう言う。しかし、ケイオスはその意見に対しかなり嫌な表情を見せた。
「連携か……」
「嫌なのか?」
「いや、嫌じゃないけどさ、俺はこういう力を合わせる集団戦闘は得意じゃないんだよ」
「そうなのか?でも、連携が取れてたじゃないか」
「あれは全部真耶がやった事だ。今の俺はケイオス。俺自身は1人で頑張るタイプのやつだから集団戦闘は得意じゃない」
彩音はその言葉を聞いて、疑問に思うこともいくつかあったが気にせず話を進めた。
「じゃあ、こっちが合わせるのはどうなんだ?」
「……合わせられるなら良いぜ」
ケイオスはそう言って不敵な笑みを浮かべる。彩音もそれを聞いて不敵な笑みを浮かべた。
光と玄翔はその会話を聞きながらシミュレーションをする。この2人は仲間ということもあって、連携は取りやすい。だから、ケイオスを含めた状態で連携を取れるように先に予測を立てておく。
彩音はそんな2人を見て少し嬉しそうに笑った。心の中を読んだのだろう。かなり上手くいっていたから嬉しかったのだ。
「まぁ、一応俺行くけど、着いてくるなら来てもいいよ」
ケイオスはどこか気まずそうにそう言う。そして、ゲーゲンタイルに魔力を込めた。
「……真耶……早くしてくれ。頼んだぞ」
そう小さく呟いてその場から飛び出した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……そして、真耶は……
「……これで7つ目……残り1つか。今のところモルドレッドの魔力が強く感じられたのは無い。残り1つにかけるか」
そう呟いて最後の1つに向けて歩みを続けた。先程からモルドレッドの魔力や意識は感じる。だが、ここはモルドレッドの精神世界ということもあって、感じるのは当たり前なのだ。
少し強い所があれば、そこからどの方向か分かるのだが、8つの方向のうち7つがダメだった。
最後の1つも可能性はかなり低い。それでも真耶は歩みを続けた。
ある程度歩くと光の玉を見つけた。やはり、何も感じなかった。ここもハズレだったらしい。最初の位置に戻り、さらに遠くに光の玉を飛ばす必要がありそうだ。
そう言いながら光の玉の元まで進んだ。しかし、その時それは起こった。
「……っ!?」
なんと、声が聞こえてきたのだ。それも、助けを求める声。
「モルドレッドか!?」
真耶は慌ててそう聞く。しかし、その返答が帰ってくるわけもない。だが、聞こえたのは確実だ。魔力感知の範囲をさらに広げる必要がありそうだ。
真耶は魔力感知の範囲を3kmから5kmに変更した。そして、細部まで細かく感知する。すると、この場所から約4km離れた場所で特殊な魔力反応を感知した。
「見つけた」
そう呟いて全速力で走る。その速さはとてつもなく、すぐに3km走ることが出来る。
真耶は暗い空間をずっと脱兎のごとく走り続け、すぐにその不思議な魔力を感知した場所に到着した。
すると、そこに待っていたのは驚愕と絶望、怒りなどの負の感情だった。
「っ!?モルドレッド!」
思わず真耶はそう叫んだ。なんと、モルドレッドが拘束されていたのだ。その近くには男が2人居る。しかも、見覚えのある顔が……
「っ!?お前ら、ケイオスがモルドレッドと初めて会った時にいたやつか。じゃあこれは、モルドレッドの記憶を媒介にして作られた
真耶は少しだけ怒りのオーラを醸し出しながらその男2人に近づく。しかし、男達は
「……」
真耶はそんな男達の背後に近づいた。そして、肩を叩く。
「っ!?誰だ!?」
その時男達は背後に真耶がいた事に気がついた。
「月城真耶です。以後は無いけどお見知り置きを」
真耶はそう言って左手に雷を発生させ男の心臓を貫いた。そして、そのまま隣の男の首を切り落とす。すると、男達は倒れて暗闇に飲み込まれるかのように消えた。
「モルドレッド……助けに来たよ。遅くなってごめん。全て忘れて」
真耶はそう言って邪眼を目にうかべる。真耶はその目でモルドレッドの目を見つめた。その目には光は無く
「……ごめんな。寂しかっただろ……
苦しかっただろ……お前がどんな苦しみを味わったのか、今のお前を見ればよく分かる。俺が遅かったからこんなことになってしまった。もう二度とこんなことはさせない。約束するよ」
真耶は
そして、真耶はその空間に狭間を作り現実世界へと意識を戻した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます