第12話 合流

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……モルドレッドは暗闇の中に1人立っていた。そこには何も無い。永遠に続く暗闇と、底知れない恐怖だけがモルドレッドを襲う。


「ここは……?っ!?」


 その時、モルドレッドの視界に不思議なものが写りこんだ。疑問に思ったモルドレッドは少し早歩きでそのなにかに近づく。すると、次第にその何かが明らかになってきた。


 しかし、モルドレッドはその光景を目で認識した瞬間自分が誤謬ごびゅうを犯したことを理解した。


 なんと、そこに居たのはボロボロの服を着て、手足に風をつけられ首輪で繋がれ呻吟しんぎんするモルドレッドがいたのだ。


「っ!?これって……っ!?」


 その刹那、モルドレッドの見ていた景色が突如として変化する。そして、なぜか目の前にいたモルドレッドが姿を晦ました。


 いや、そういう訳では無いみたいだ。なんと、モルドレッドの意識がそのもう1人のモルドレッドの体に恒常化してしまったのだ。


 要するに、過去の体を認識した瞬間モルドレッドの体に刻まれている記憶がフィードバックしこの世界と共鳴を起こしたのだ。そのせいで、自分の中にある魂がその記憶を所持した状態のまま対峙するもう1人のモルドレッドに取り憑いてしまったということ。


「っ!?」


 モルドレッドはその異常な現象に言葉を失う。しかし、この状況がすぐに幻覚だと理解する。


「真耶……!助け……て……?あれ?真耶って誰?ケイオス……誰?」


 突如としてモルドレッドの記憶が幼児退行した。そのせいで、ケイオスと出会う前のモルドレッドまで記憶が戻ってしまう。


「あれ?なんで私ったらこんなとこに?……違うわ。私が失敗したから……罪を犯したからこんなことになってるんだわ……」


 モルドレッドはそう言って自分の手を見つめる。この暗い空間がモルドレッドの記憶と共鳴し、さらに思い起こさせる。


「なんであんなことしたんだろ……」


 そう言って追憶する。だが、今更後悔しても仕方がない。罰は甘んじて受諾しなければいけない。


 もしかしたら、執行官に佞言ねいげんを言えば許してもらえるかもしれない。しかし、それで許してもらっても自分が納得出来ない。


 でも、罰は受けたくは無い。出来れば軽い罰の方が良い。そんな考えが頭をよぎる。モルドレッドはずっと心の中で葛藤を続けた。


「……」


「おい!」


「っ!?」


 その時、突如として場面が変わる。一瞬何が起こったのか理解が追いつかなかったが、すぐに理解した。


 どうやら今から罰を受けるらしい。そのためか、手足にはかなり重たい重りをつけられ三角木馬に乗せられている。


「う……あ……」


 痛い。その重りが重たいせいで、痛みが増してくる。それに、服を全て脱がされている。そのせいか、頬に含羞がんしゅうの色をうかべる。


 その時、突如お尻に痛みを感じた。その痛みは瞬く間に全身へと広がっていき、モルドレッドに衝撃を与えた。


「痛い!」


 モルドレッドは吃驚きっきょうし叫ぶ。そして、涙は滂沱ぼうだとして禁せず、モルドレッドの真下に水溜まりを作る。


「さて、これから始めるか……」


 その言葉と共に、津波のように苦痛が襲ってきた。


 ……それから何時間……いや、何日経過したのか分からない。モルドレッドは落魄らくはくの身となってただ目の前を見つめるだけだ。


 だが、気を失うことは出来ない。気を失わない程度に回復させられるからだ。そのせいで、痛みに慣れることも出来ない。


「……」


「さて、仕上げと行くか」


 そんな声が聞こえた。振り返ると、何やら面妖めんような表情を浮かべる男が2人いる。


 その男達はなんの躊躇もなくモルドレッドのお尻を細い木の棒で叩く。その時モルドレッドはすぐに理解した。自分のお尻が裂けたことを。その裂罅れっかから紅色に染る液状の物質が吹き出してくる。


 その痛みはこれまでのものとは段違いで、溌剌はつらつとしていたモルドレッドの声や表情は、闇に覆われてしまった。


「クハハ!お楽しみはこれからだなぁ!」


 男はそう言ってズボンに手をかけた。そして、カチャカチャという異音がその空間にこだまする。


 その音を聞いたモルドレッドは狼狽ろうばいする暇など無かった。逼迫ひっぱくした表情で逃げようと試みる。しかし、両手足が拘束されている状況ではモルドレッドが何をしようと無駄に終わる。


 そして、その瞬間、モルドレッドの尊厳やプライド、全ての感情は蹂躙じゅうりんされた。


 男は憐憫れんびんなく腰を振る。


「お♡あ♡いぎぃ♡あぁ♡」


 モルドレッドは抵抗することなく犯される。途中で男達に向かって睥睨へいげいするが、男達は逆上してしまいさらに強く腰を振る。


「おぉ♡ふぐぅ♡いや……や、やめ……♡」


 モルドレッドは弱り果てた声で喘ぐ。だが、モルドレッドの地獄はまだ始まったばかりだった。


 ……それからさらに何ヶ月か経過した。既に苦痛と絶頂を何度も繰り返し、心は崩壊してしまっている。


 それを知識の1つとして加えてしまった男達は、黎明れいめいまでモルドレッドに苦痛を与えることを普遍化ふへんかさせてしまった。


「……」


 モルドレッドは悔恨かいこんに満ちた心で深い闇に囚われた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……ケイオス達は全速力でモルドレッド達の元へ向かった。2人がいた場所からモルドレッド達のいる場所までそう遠くない。


 ケイオス達はすぐにモルドレッド達の元へ到着した。そして、すぐにモルドレッドに駆け寄ろうとする。すると、そこには彩音がいた。


「っ!?ケイオス!遅いよ!モルドレッドが……!」


「やはりか……ネザースターを食らったか」


「っ!?知ってるのか!?」


「まぁな。悪魔の中でも上級悪魔しか使用することが許可されていない魔法……それがネザースターだ。触れた物体を消去し、生命を持つものが触れた場合精神を犯す魔法だ。モルドレッドには特に当たって欲しくなかったが、モルドレッドがどこかで失敗したのだろう」


 ケイオスはそう言って剣呑けんのんなモルドレッドを見つめた。そして少し周りを見渡す。


「……彩音、お前に頼みがある」


「ん?何?」


「俺と共鳴してくれ」


「共鳴?どういうこと?」


「意志を合わせるということだ。俺と彩音が共鳴状態になれば、俺も心が読めるようになる。そして、心が読めればモルドレッドの精神世界に介入出来る」


「なるほどね。でも、真耶が精神世界に入っている時はこっちの世界はどうするの?」


「俺が戦えばいい」


「え?でも、それだと誰が精神世界に行くの?」


「フッ、もう1人の俺……そう、月城真耶に行ってもらえば良い。どうせ、こうなるのも真耶の考えだったんだろうからな。真耶は戦術より戦略の方が向いてるからな。あいつに戦略を考えさせれば、失敗はしない」


 ケイオスは小さくそう呟く。そして、彩音の前に出た。


 その時、背後から悪魔がネザースターを放ってくる。しかし、ケイオスは地面を隆起させ磐石ばんじゃくの素材へと変換し堅牢けんろうな壁を作った。それは、ネザースターがぶつかってもビクともせず、さらに、ケイオスはネザースターを囲いこんだ。


「時間が無い。彩音、早くやろう」


 ケイオスはそう言って彩音に手を差し伸べた。

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