第10話 共闘
「多数対2って……どっちが2なの?」
モルドレッドは恐る恐るケイオスに聞く。すると、ケイオスはモルドレッドの頭に優しく手を乗っけて言った。
「向こうがだよ」
ケイオスはそう言って後ろを見るように合図した。モルドレッドは後ろを振り返る。すると、そこには光達がいた。
「え?皆……?」
「ヒーローとは何か……忘れてしまってたよ。でも、やっと思い出した」
「私達ヒーローが見た目で敵か決めつけてたら良くないよね」
「済まない!今こそ我らの力を合わせようぞ!」
光達はそれぞれそんなことを言ってくる。それを見てモルドレッドは一瞬何が起こっているのか分からなかったが、すぐに理解した。
すると、自然と笑みがこぼれてくる。それと同時に涙も溢れてきた。
「え!?な、泣かないで!」
光が慌てて泣き止ませようとする。しかし、泣き止まない。ケイオスはそんな二人を見て優しい笑顔を作るとモルドレッドの頬に手を当てた。
「モルドレッド……」
「どうした……んむっ!?」
モルドレッドの柔らかい唇にケイオスの唇が当てられる。モルドレッドはそれだけで何故か悲しい気持ちがどこかに飛んで行った気がした。
「ん♡ん♡ん♡♡♡♡♡」
頬に滴る1粒の水滴は、さっきまで冷たかったはずなのに今ではそれすらも暖かくなっている。
「……どうだ?泣き止んだか?」
真耶は唇を話すとそう聞いた。すると、モルドレッドは涙を拭うと頬を赤くして真耶に抱きつく。
「ん!」
モルドレッドはそう返事をすると少し離れて笑顔を見せた。
「フッ、泣いてる時も可愛いが、やっぱり笑ってる時の方が可愛いな」
「ふぇ!?そ、そんなこと言われると照れちゃうよ!」
「悪い悪い」
「もぅ!」
真耶とモルドレッドはそんなことを言いながら笑い合う。
「あ〜、お取り込みのところ悪いんだけどさ、あっちは待てなかったらしいよ」
彩音がそう言って指を指した。その方向を見ると、神と悪魔がイライラしながらなにか攻撃しようとしていた。
「「「”ジャッジメント”」」」
その瞬間、白黒の光を放つ光線が向かってきた。しかし、真耶は全く動く気配を見せない。そうこうしていると光線は目の前まで来た。
真耶はその光線を見ると不敵な笑みを浮かべる。そして、空中で十字に指をなぞらせる。そして、青く光る玉のようなものを作り出しその十字になぞった場所にぶつけた。
その瞬間、その場に青い十字の光が出来る。その光は光線がぶつかっても壊れる様子を見せない。
「え?凄……」
「何これ?絶対やばい技でしょ」
皆不安な顔をしながらその十字の光を見つめる。しかし、十字の光は光線を通す素振りを全く見せない。
「見たか?これが応援の力だよ」
真耶はそう言って指を鳴らした。すると、光達も自分達の体になにか力が宿っていくのが見える。
「これが応援で貰った力さ。可視化したらわかりやすい。今、ここにいる人達は能力が普段の3倍くらいになっている。だから、神と悪魔ともやり合える」
真耶はそう言ってアムールリーベを鞘に収めてリーゾニアスを抜いた。
「ケイオス!行くよ!”エンペラーレイ”」
モルドレッドはそう唱えて赤く光る光線を放つ。真耶はリーゾニアスの理を放たれた魔法が剣に触れた時その魔法はエンチャントされるというふうに変えた。
そして、エンペラーレイに触れる。その瞬間、エンペラーレイはリーゾニアスへと吸い込まれて言った。
「”
真耶はそう唱えて神を剣で切りつける。
「クッ……!」
右腕を切り裂いた。そして、そのまま右腕をどこか遠くへ蹴り飛ばす。その攻撃はかなり効いたのか、神は少し怯んで動けなくなった。
その隙を見逃すケイオスではない。その一瞬を狙って首を落とそうと剣を横に振る。しかし、その攻撃は弾かれた。
悪魔が何かしらの防御結界で守ったらしい。しかし、その結界もすぐに壊される。なんと、光が後ろから悪魔の頭を蹴り飛ばしたのだ。その衝撃は大きかったのか、悪魔は地面に叩きつけられる。
その瞬間、神を守る結界が無くなった。
「ナイスだ!”エンペラースラッシュ”」
ケイオスは赤い光を放つ斬撃を放つ。それは、真っ直ぐ神へと向かって行った。しかし、途中で防がれる。
「やはり隙をつくしかないな」
ケイオスは小さくそう呟く。
「そうだな。それに、長時間戦うのも無理そうだ」
そう言って光がケイオスの隣に来る。
「……さて、どうしたものかね……。光、4速で走れ。両方から切り裂く。剣はこれを使ってくれ」
ケイオスはそう言ってアルテマヴァーグを光に渡そうとした。
「待てよ、俺じゃ触れないんじゃないのか?」
「真耶の意識がここに込められている。問題は無いさ」
「そうか。了解した」
「じゃあ行くぞ」
そう言った瞬間2人の姿が消える。そして、神が気がついた時には左右からケイオスと光が剣を構えて向かってきていた。
この場合対処するのは難しい。ケイオスの場合色々対処する方法は思いつくがそれでも少し迷えば終わり。そして、神はその一瞬の迷いを見せた。
その一瞬をケイオスと光は見逃したりしない。とてつもない速さで真耶と光は神の首を切り落とした。
「っ!?」
神は自分の首が落とされたことに気が付かない。そのせいで視線が低くなっていることに動揺する。しかし、すぐに自分の首が落とされたことに気がつく。
「っ!?ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
神はそう叫んで首から下を再生させた。すると、元々の体は灰となって消えていく。
「っ!?再生だと!?」
「何だあれ!?」
ケイオスは神が再生能力を持っていたことに、光は神が再生したことに驚く。そして、2人はすぐに神に近づきケイオスは右足を、光は左腕を同時に切り落とした。
しかし、すぐに神は再生する。しかも、前に切り落としていた右腕も再生した。
「馬鹿め!全て無駄なんだよ!」
神はそう言って光る剣を作り出し切りつけてきた。ケイオスはそれを難なく防ぎ、受け流しながら神の首を切る。
しかし、やはり再生されてしまう。
「……」
ケイオスは1度神を蹴飛ばすと地面に叩きつけた。
「……」
「なぁ、あいつどうやって倒すんだ?再生されちゃ倒せないだろ」
「……いや、倒せないこともない。あいつの能力を封じれば良い。ただ、それにはかなり時間を要する。さらに、当たる確率も低い。それ以外の方法だと、再生出来なくなるまで攻撃するだ。だが、それは出来なくもないがこの国が壊れる」
「っ!?」
「それに、応援の力もいつまで持つか分からない。一応見てる人にグロイのは見せないようにしてるが、それでもいつまで応援してくれるか分からない」
「じゃあ、もう手は残ってないってことか!?」
「……いや、ないことは無い。あと1つだけある。速攻で出来て必中する技……いや、状態が」
「っ!?」
「ただ、やったことがない上大事なパーツが1つ足りないどういう形で成功するか分からない」
ケイオスはそう言って少し俯く。
「……なぁ、失敗したらどうなるんだ?」
「……何も起こらないだけだ。ただ、俺の魔力は消費する」
「何回失敗出来る?」
「何回出来るかで言えば、何回でも出来る。ただ、回数を重ねる毎にその状態の持続時間は短くなり弱くなる」
「そうか……なぁ、やってくれないか?多分それをしないと勝てない」
「………………ま、1度試してないと、本番でミスるかもしれないしな。良いぜ。それをしないと勝てそうにないしな」
「そうか。済まないな」
「フッ、良いさ。アルテマヴァーグを返してくれ」
ケイオスはそう言ってアルテマヴァーグを受け取る。そして、全ての剣を抜いてリーゾニアスを中心にしてそのまわりに剣を突き刺した。
「……まて、悪魔はどうした?」
「あぁ、あいつならモルドレッド達の所に行ったぞ」
「何!?」
光はそれを聞いてすぐに行こうとする。しかし、すぐにケイオスが止める。
「仲間を信じろ」
その言葉で光はハッとした。そして、神に向き合う。
ケイオスはそんな光を見て、少しモルドレッドの方向を向いた。
(あの攻撃は食らうなよ。もし食らったらすぐに俺に言えよ)
そう、心の中で小さく呟いた。その呟きは、モルドレッドに届いたような気がした。
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