第5話 問題点
「これって……動画配信アプリ?あの、有名人を何人も作りだしたやつでしょ。これでどうするの?」
「ライブ配信で俺が戦っているところを配信する」
その言葉にその場の全員が絶句した。
「そんなことしちゃダメ!真耶!考え直して!」
「何度ダメなんだ?」
「だって……私達はこの世界の人じゃないのよ!もしそれでこの世界に干渉なんてしたら……」
「俺は一時この世界に住んでいた。この世界に干渉もした。だが、何も起こらなかった。だから大丈夫だ。それに、俺がこうしてネットを使っている時点で何かしらのことは起こるはずだ。だが何も起こらない。だから大丈夫だ」
「そ、それなら良いけど……」
「どちらにせよ、神々と悪魔がこの世界に干渉してんだ。俺一人がなにかしても何も変わらない」
真耶はそう言ってアプリを開き準備をする。モルドレッドはそんな真耶を見ながら少しだけ心配そうな顔をした。
「ほら、彼氏がそう言ってんだ。信じてやれよ」
彩音がいつも通りの感じでそう言う。すると、モルドレッドは少しムッとして頬を膨らませてぷいっとそっぽを向いた。
「彼氏じゃないです!私達は正式な夫婦です!」
「え?そうだったの?それは悪かったなぁ。……ん?でもちょっと待てよ。ということは、モルドレッドは何歳なの?」
彩音は自然と聞いた。その言葉を聞いて真耶が振り返る。そして、モルドレッドの顔を見つめた。
彩音はそれを見て、再び悪いことを聞いたのかと思った。しかし、真耶から発せられた言葉を聞いてそんなことはすぐに忘れる。
「そう言えば、モルドレッドは何歳になったんだ?てか、俺って何歳?見た目年齢は17歳だけど、実際何歳なの?」
「もぅ!レディに歳を聞かないでよ!それに、真耶の年齢なんて覚えてないよ!」
「おいおい、そんな怒らなくてもいいだろ。俺達夫婦なんだからさ」
「そういう事じゃないの!」
「……そうか、分かったぞ。当てて欲しいんだろ?あと、ここに俺以外の男がいるから恥ずかしいんだろ?」
真耶はそう言ってニヤリと笑う。そして、光と玄翔に頼んで少し部屋を外してもらった。
「これでいいだろ?」
「……うぅ、言いたくないのに……!絶対笑うでしょ。そしてバカにするでしょ」
「いやいや、しないよ」
彩音は優しくそう言う。真耶も優しく微笑み頭を撫でる。
「大丈夫だって。俺達しか聞いてないんだからさ。それに、明日ってお前の誕生日だろ。ケーキにロウソク刺したいから言ってくれよ。それに、俺の誕生日でもあるんだからさ」
真耶は優しくそう言う。ドアの向こうでは光と玄翔が耳を当てて聞こうとしているが、これは言わなくてもいいだろう。
ちなみに、明日が誕生日というのは本当だ。この日は7月10日。そして真耶とモルドレッドの誕生日は同じ日で7月11日だ。
「うぅぅ……」
モルドレッドは涙を流しながら俯く。そして、顔を真っ赤にしながらボソボソと呟いた。
「え?なんて?」
「だから……、1万700歳……!」
その言葉を聞いた瞬間彩音は固まった。光と玄翔は聞こえなかったのかずっと聞こうとしている。そして、真耶は何も思わなかった。強いて言うなら……
「何だよ。意外と若いじゃねぇか。マーリンのやつなんか3万歳位だったろ?あ、てか、今思い出したけど俺はアーサーと同級生だから30万歳くらいだろ」
「あれ?そうだったっけ?」
「そうだよ。だから笑ったりしねぇよ」
真耶はそう言って笑顔を作る。だが、彩音達からしてみれば笑い事では無い。なんせ、人間の寿命は長くても100歳前後。だが、この2人は平気で1万年以上生きているのだから。
「1万……やっぱり研究したい。ちょっと体をバラしてもいいかな?」
「何だよ?急に。俺達からしてみたら1万なんてあっという間なんだよ。100年がこっちの1年みたいな感覚だからな」
「でも、時間軸は一緒だから私達はこっちの世界の1万年以上前から生きているってことだよ」
モルドレッドはニコニコしてそう言う。どうやらさっきまでの不安などの負の感情は無くなったらしい。
「あの、俺達入っていい?」
部屋の外から光の声がした。
「あぁ、済まないね。入っていいよ」
彩音がそう言う。そして、部屋に入ってきた。その時の2人の顔は何故か猜疑心に包まれていた。
「我から1つ問おう。本当に30万歳なのか?」
「嘘じゃないよ」
即答する。そのせいか、まだ疑っているらしい。まぁ、俺らの歳がまだまだ若いということがわかったのだ。これくらいで話を切り上げよう。
「まぁ、俺らの歳が若いってことがわかったから計画を進めよう。とりあえず明日の夜7時に新宿のど真ん中でライブを始める。そして、世界中の人々に応援してもらいながら倒す。これで良いな?」
「あぁ。だが、2つ問題があるぞ。まず、相手が敵だと言うことを世界中の人々に知らさなければならない。そして、新宿のど真ん中まで呼ばなければならない。それらをどうするつもりだ?」
「あぁ、それは簡単だよ。DMで既に煽りの文を送ってある。恐らくだが、かなり怒っているから街を破壊しながら来るだろう。アイツらはプライドが高いから傷つけてやればすぐにキレる」
そんなことを平然と言う。どうやら真耶は神々のことや悪魔のことをよく知っているみたいだ。
「ま、多分だけど皆にも戦うのを手伝ってもらうよ。俺1人で2人相手するのは難しいし、モルドレッド1人で神々か悪魔のどっちかを相手にしてもらうのは少々心もとない」
「いやいやいや、私達が戦える相手なのか?真耶の実力でも難しい相手を私達に相手しろって言うのは少々無理があるんじゃないのか?」
「だからこその応援の力だろ。その力で強くなれば良い。それに、少し俺の力も貸してやる。ただし、それはいざと言う時だけだ。何故か分からないが俺の力はほとんどの人が拒絶反応を示す。恐らく持って30秒……いや、1分くらいだな」
「そうか……確かにそれなら行ける気がするな」
彩音は少し考えながらも納得をする。しかし、そこには大きな問題があった。
「なぁ、それってさ、応援してくれる人が集まらなかったらどうするんだ?応援してくれる人がいなかったら強化することは出来ないだろ」
「そうだな。まぁ、そこは運だ。どれだけの人が危機感を持ってくれるかのな。それと、どれだけの人が信じてくれるかのな」
真耶の言葉はかなり重く感じた。どれだけの人が信じてくれるか……それは、ヒーロー屋がどれだけ人に信じられているかという事だ。
当然だが真耶の人望は無い。かと言って、向こうの敵に人望があるかと言われると、無い。逆に敵対する人は多そうだ。
だが、いざ戦うとなった時皆はどっちを応援するだろうか?
日本だけならば真耶を応援してくれる人もいるかもしれない。だが、世界中で見ればまた別の話だ。
海外では宗教的な問題とかもあって神を尊重している。その中に悪魔を尊重する人もいるだろう。それに、神や悪魔と言われたら人々はそっちの方に目が行く。悪魔は別かもしれないが、神と言われればそっちの方が味方だと思う人が多い。
それに、こんなどこの誰かも分からない、かつ1年近く失踪していた人が突然現れて
「神を倒すので応援してください」
なんて言っても誰も信用してくれないだろう。それに、真耶の格好を見ても誰も正義の味方とは思わない。実際に戦ったからこそ分かる。
真耶は自分の中にきちんとした正義があるが、それ以外の全てが悪だ。もっと仲良く、そして深く関われば真耶の本性も分かるかもしれない。だが、世界中の人々はそんな時間は無い。だから、真耶を1度見てこう思うだろう。
コイツが敵だと。
だから、どれだけの人が信じてくれるかは、ヒーロー屋を信じてくれる人の数だけだということだ。
「……」
「……」
「……」
「……はぁ、あのなぁ、そんなに深く考えるなよ。たとえ信じてくれる人が居なくてもいつかは必ず信じてくれる。もし応援してくれる人がいなかったら、その時は俺1人で戦うよ」
真耶は光達にそう言った。そして、少しだけ優しく微笑む。その顔は初めてあった時と違って悪ではなかった。
「でもさ、2対1だと厳しいんだろ」
「安心しろ。いざとなったら自分の理を変えて不敗にでもすれば勝てるだろ」
真耶は軽くそんなことを言う。しかし、モルドレッドはその言葉を聞いて少し怒りのオーラを放った。
「ん?どうした?」
「どうしたじゃないよ!そうやって簡単に言うけど、自分の理を変えるのがどれだけ危険か分かって言ってるの!?」
「分かってるよ。それをするくらいの覚悟があるということだ。今回の件は俺が招いたことだ。だったら、ケジメは自分でつける」
真耶はそう言って目を黄色く光らせる。モルドレッドは真耶のその覚悟に満ちた目を見て何も言えなくなった。
「もぅ、しょうがないなぁ。真耶は1回言ったことは曲げないからね」
「そう言ってくれると助かるよ」
真耶はそう言って左目に神眼を発動させた。
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