第4話 真耶のネット進出
「ねぇ、ソフトウェアアップデートって何?」
その静寂を破ったのはモルドレッドだった。モルドレッドは何も分からないといった様子でそんなことを聞いてくる。
「そういえばアヴァロンにスマホはないから分からないよな。とりあえずこのスマホを最新にしなければならないんだ」
「そうなんだ。時間魔法で早めたら?」
その一言にその場が凍りついた。
「……あれ?なんか悪いこと言った?」
「いや、その考えはなかったな」
真耶はそう言ってスマホの設定画面からアップデートを始める。そして、時間魔法を使い1日ほどスマホの時間を進めた。すると、スマホのアップデートが終わる。
「よし、じゃあ始めるか」
そう言ってアプリを開いてポチポチ文字を打ち始めた。覗き込むと、そこにはそれほど辛辣とも思えないアンチが書き込まれている。
なんと言うか、アンチというよりアンチに見せ掛けた褒め言葉だ。
「ねぇ、もしかして真耶って悪口とか言えないタイプの人間か?」
「いや、言えるぞ。多分これはあれだな。前にアンチを食らった時にアンチは良くないものだと理解したから言えないんだと思う」
「なにそれ?なんか面白そうじゃん。話してよ」
彩音はそう言って食いついてくる。
「別に良いけど……。あれは俺が召喚される1か月前、俺は小説を書いてたんだがな、まぁその事で色々あってアンチを言ってきた奴がいたんだよ。その時俺は別に何も思わなかったし、こいつの言ってることは全て自分の事だろって思って笑ってたんだよ。まぁ、他の仲のいい人達が色々助けてくれたから今は大人しくなってるがな。いやさ、本当に面白かったよ。ああいうアンチ垢の人って無いことしか喋らないんだよ。だから、言ってることが全て詐欺。てか、友達がどうのこうの言ってたけど、小学生かよって思ってたからな。お前らもこの話聞いたら確実にこう思うぞ。黙れクソガキッズがってな」
真耶は真顔で画面を見つめながらそう言う。さすがに光と玄翔はその怒涛の悪口から後ずさってしまった。しかし、彩音はその話にさらに食いつく。どうやら彩音にはハマったらしい。
「それでそれで?その後はどうなったの?」
「物好きだな。その後はさらに面白かったよ。とりあえず運営に報告して、垢BANしてもらった後に、他のアカウントで開示請求したから住所も顔も本名も全ての個人情報を手に入れたよ。そして、その個人情報とか色々持って警察の所に行った。ネットのアンチは場合によっては脅しの罪に問われるからな。コイツの場合、他の人が脅しと思えるものだったから犯罪者として逮捕してもらったよ。裁判ではとことん追い詰めて1000万近く搾り取ってやったからな。そうだな、久しぶりに会いに行ってみるか」
真耶はそんなことを言って不敵な笑みを浮かべる。だが、さすがにそんなことしてる暇は無いからモルドレッドは行かせないように手を繋いだ。
「フッ、大丈夫、行かないよ。だって、この人と違って俺は暇じゃないから。じゃあこの文投稿するよ」
そう言って呟きを投稿する。そして、スマホを閉じようとした。しかし、そこで真耶は少しだけ手を止めた。そして、そのアプリのある場所を見る。それは、DM……いわゆる、ダイレクトメッセージを送ったり受け取ったりする場所。そこには大量のメッセージが届いていた。
「ん?真耶は仲がいい人が多かったんだね」
「……そうだな」
真耶は少しだけ悲しそうな顔をして画面を見つめる。しかし、そのボタンは押さず、確認することなく真耶はスマホを閉じた。
「見なくて良いのかい?」
「……どうせ皆俺の事を忘れるからな」
「それはどういうこと?」
「……いや、何でもない。お前らは深く知らなくて良いよ」
真耶はそう言って目をそらす。その時、スマホから音が鳴った。確認するとDMが送られてきている。
「やっぱり確認した方がいいんじゃない?多分この人は真耶が突然いなくなって心配してるんだよ」
「……そうだな。一応真実だけ伝えておくか。信じるかは分からないがな」
真耶はそう言ってDMを開く。そこには数百にも及ぶメッセージが来ていた。それらは全て真耶を心配するもの。真耶はその全員に丁寧に返事を返して行った。
そして、何人かだけには自分が異世界に召喚されて、今はなんやかんやで帰ってきていることを伝えた。
「これでいいだろう。……ん?」
見ると、通知欄になにか来ている。早速反応があったらしい。真耶はそれを確認する。すると、そこには神々と悪魔が怒っている写真が写っていた。
「本当にこれで見つかったんだね。凄いな」
彩音は少々驚いた様子でそう言う。
「でも、これじゃわかんないよな」
光がそう言ってスマホを覗き込んだ。
「お前らまだまだだな。こいつらの目とか見ろよ。なんか反射してるだろ。これで場所とか撮影者の顔が……あ、コイツ俺にアンチ言いまくった奴じゃん」
真耶は半分呆れた様子でそう言う。すごい奇跡だ。どうやら会いたい人達が一緒にいてくれているらしい。
「ちょうどいいや。神々と悪魔と一緒にこのアンチ野郎も殺すか」
「ちょっ、何言ってんだよ!」
「そんなこと我らが許さないぞ」
光と玄翔がそう言ってくる。
「いや、さすがに冗談だよ」
その言葉に2人はホッと胸を撫で下ろす。そして、もう一度スマホを覗き込んだ。
「でもさ、いきなり行って良いの?準備していかないとダメじゃないのか?」
「そうだな。まぁ、相手も2人じゃ無いかもしれないな」
真耶達は少し頭を悩ませる。確かにいきなり行ってボコボコにするのは簡単だが、相手が2人以上の場合こっちがボコボコにされかねない。
まぁ、アンチ野郎を殺すのは確定事項だが、神々と悪魔は本気で行かないとやばいからな。落ちこぼれでもかなり強い。
「……」
「……」
「ねぇ、あれ使ったら?皆の応援をそのまま力にするやつ」
「え?何それ?そんなのあったっけ?それなんか別の漫画と勘違いしてないか?」
「してないよ!ほら、前に使ったでしょ!」
「前って……あ〜、あれね。やっと理解した。確かに前に使ったな。大分前だけど」
「ちょっと待ってくれよ。一体なんの話しをしてるんだ?」
「ん?あぁ、そうか、お前らは知らなかったな。俺がまだアヴァロンにいた頃に1度だけ遊びで世界中の人々から魔力を分けてもらうってことをしたんだよ。モルドレッドはそれをしたらいいって言ってるんだ」
「おぉ!いかにも強そうだね!」
「でも、それにはかなり誤算があるぞ。まず日本人は魔力を扱えない。そして、どうやってその分けてもらうことを日本中に広める?」
光その言葉に全員頭を抱える。確かにそうなのだ。日本人は魔力を扱えない。それは世界中全ての国が同じだ。魔力じゃないものを貰うしかない。
「……いや、何とかなるかもしれないぞ。さっきモルドレッドが言ってだろ。応援を力にするって。そう、魔力じゃなくて応援を貰うんだよ。それを魔力に変換する」
「なるほど。それはいい案だな。だが、それを広げる方法がまだわかっていない」
「フッ、それこそあるだろ。ここに」
そう言ってスマホのあるアプリを指さした。
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