正しいペットのかい方
空一
正しいペットのかい方
「正しいペットのかい方」
「俺、新しくペット飼おうと思うんだ。」
「はあ?」
唐突に言い出した、遥斗の突拍子もない言葉に花子は唖然とする。
「どこにそんな金があるのよ。」
「それは…なんとか金を作るよ。」
「あのねえ、今の時代ペット一匹買うのに何十万と金がかかるのよ?食費もあるし、散歩もあるし」
「それでももう決めたんだ。俺は、ペットを飼うって!」
止まっていた信号が赤から青に変わり、対角線から歩いてくる人たちとすれ違う。今どき皆ペットを飼っていて、そのペットにぶつからないように避けながら信号を渡りきった。
「さっきの子、可愛かったなあ…って、いててて。何すんだよ!」
「知らないっ!」
私は知らぬ間にヤキモチを焼いて、遥斗にそっぽを向いた。
最近遥斗は、私に全然興味がない。しかも、新しいペットを飼うとか言うし…。昔遥斗が私に捧げた愛情は、どこに行ってしまったのだろうか?初めて出会ったときの彼は、ガラス越しに居た私をキラキラした表情で見つめていて、私も遥斗をキラキラした表情で見つめ返していた。運命的に出会った私達は、今までずっと仲良く暮らしてきたはずなのに…。
花子は、そっと遥斗の裾を握った。
「ねえ、私じゃダメなの?そんなに、ペットが大事…?」
「いや、ダメってわけじゃないけど…ほら、さ、新しい家族が増えるみたいな感じでさ、多分花子も楽しいと思うよ。」
「だから私は、それが嫌だって言ってんの!」
私はとうとう耐えきれなくなって、遥斗を強く殴ってしまった。
「いてて。おい、何すんだよ。」
「遥斗はなんにもわかってない!私はさ、とても嫉妬してるんだよ?!遥斗はあの時私に言ってくれたじゃん!一生君だけを幸せにするって!なのに、なのにさ、新しくペット飼おうなんてさ…。あーあ、私、もうすぐ捨てられちゃうんだ。」
「だから、誰もそんなこと言ってないだろ?もちろん、ふたりとも幸せにするさ。」
「はあ!?だから、私が言いたいのは、なんで昔からいる私と、新しく飼う子が同じ愛情をうけるのかってことなの!」
「そらおんなじだろ。じゃないと不公平じゃないか。」
「…はあ、もういい。わかった。あんたが話が通じない浮気クソやろうってことは分かったわ。もうこれ以上、新しいペットを飼うって言うんなら私」
「あなたを道連れにして死ぬから。」
「お、おい。ちょっと待てよ!話聞けって!」
「もう遅いよ、先に捨てたのはあなたのほうなんだもん。ね?」
そう言って花子は、懐に忍ばせておいたナイフを手に取った。
「さよなら、私の遥斗…。」
「うわああああああああああああ
ぴー ぴー ぴー
知能機能停止。体力機能低下。これから、強制シャットダウンに移ります。
「…はあ。やっぱり人間って、飼うものじゃないな。」
遥斗はペットととしての役割を終えた花子を横目に見ながら、ペットショップに急いだ。
「やっぱり次は、知能指数を落として飼ってみるか。
ペットも、正しく買わないとな。
Fin_
正しいペットのかい方 空一 @soratye
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