「で、ですが俺は真実の愛に目覚めたのですっ！！　愛のない婚約者になんの意味があるのでしょうかっ！？　父上っ！！」

　しかし、問い詰められたのだがシュバルツ殿下はまるで被害者かのような立ち振る舞いで話題を変えて、どのように不正をしたのかという話題から、愛していない婚約者の存在意義について話題を逸らそうとしているのが丸わかりである。

　いままではそれで大衆の心を動かして自分の望み通りの未来を手に入れて来たのだろうが、今この場ではむしろ悪手であると言えよう。

　いくらシュバルツ殿下が被害者かのような立ち振る舞いをしたところで怒りを隠そうともしていないラインハルト陛下のせいで場がピリついているこの空気では誰一人としてシュバルツ殿下の被害ムーブに乗る者はいないどころか、むしろ強引に話題を変えたシュバルツ殿下へ厳しい目を向ける者が多いほどである。

「それは、本心から言っておるのか……？　ならば、仕方あるまい」

「さ、流石俺の父上ですっ！！　物分かりの分かる人で良かったっ！！　他の老害たちや話の通じない頭の固い者たちとは大違いですっ！！　流石一国を治め続けた王ですっ！！」

　そんなシュバルツ殿下の返事に対してラインハルト陛下は冷めた目線で『仕方ない』と口にすると、シュバルツ殿下はその言葉を聞いて『許された』と思ったのだろう。今まで青ざめていた表情が一気に和らぎ、嬉しそうに話し始める。

　しかしながらラインハルト陛下の言葉を聞いて喜んでいるのはシュバルツ殿下のみであり、他貴族たちはむしろシュバルツ殿下とは真逆の結末を予想しており、シュバルツ殿下側についていた貴族たちの顔色は、シュバルツ殿下とは対照的に更に顔色が悪くなり真っ青だったのが土のような色へと変わっていくではないか。

「あぁ、そこまで言うのであればシュバルツ、お前から王位継承権の剥奪及び王家を名乗る事を禁止し、明日以降平民として暮らす事を許そう」

「……え？」

「何呆けた表情をしておる。お主が先ほど言ったではないか。『愛のない婚約者に意味はない』と。それは王族としての義務は守りたくない。その王族としての義務よりも愛する者と一緒に居たいということであろう？　だからそれを許すと言っておるのだ」

「な、何を言っているんですか父上っ。そんなバカな話が──」

「自分の言った言葉くらい責任の持たんかこのバカ息子っ！！　そもそも貴様が国王だけが持つことを許される印鑑だけではなくグラデリア王国を表す印鑑である国璽までレプリカを作り今回のシャーリー嬢にたいする四宮家への婚姻から、裏で他国と繋がり金銭を得ている事も知っているのだぞこの国賊めがっ！！　本来であれば極刑であるのを平民へ墜とす事で許すと言っているのが分からないほど頭が悪いのかっ！？」