第49話 言い訳があるのならば申してみよ


「そうだな、まさかここまで頭が悪いとは余も思なかったぞ。それこそ少し前までは強めのお灸をすえるだけで許してやろうと思っていたのだが、どうやらこの考えは甘すぎるようだの」

「そうでしょうっ!! やっと父上もコイツのヤバさに気づいたようで一安心ですっ!!」


 そして国王陛下は頭を抱えながら自分の考えが甘かったと呟くと、シュバルツ殿下がそれに同調するように返す。

 

「お前の事だこのバカ息子がっ!! 王家の顔に泥をぬりたくっている事に未だに気付かぬとは馬鹿にも程があろうっ!!」

「……へ?」


 その瞬間、国王陛下は鬼の形相で息子であるシュバルツ殿下へと怒鳴り叫ぶ。


「お前がここ最近行った愚行の数々、余の耳に届いておらぬとでも思っているのかっ!? それでも余の息子である為王位継承権の降格と半年間の謹慎ですまそうかと思っていたのだが、こんなバカ息子に国を任せたら、それこそグラデリア王国そのものが数年と持たずに無くなりかねんわっ!!」

「ちょ、な、何を言っているのですか父上……っ!?」


 そんな国王陛下の怒り具合にシュバルツ殿下はただただその場でおろおろとする事しか出来ないようで、その姿をみただけで私の中のシュバルツ殿下に対する溜飲が下がるほどだ。


「まだ分からぬか? そもそも何故お主はシャーリーとの婚約を余に話さずに無断で行った?」

「い、いえそれはシャーリーがアイリスに対してイジメを──」

「シャーリーがアイリスをイジメていたとでも言いたいのか? そんなガバガバな嘘で余を欺けると思っているのであれば、これほどふざけた話もなかなかあるまい。シャーリーは無実であることの証明とその裏取りはできておる」

「そ、そんな……っ」

「どうせ世に話さなかったのも嘘がバレるのが怖かったとかいう理由であろう。そして、それだけではない。無実の罪で無理やりシャーリーへ冤罪を擦り付けて婚約破棄をしただけでなく、余の無二の親友の悪い噂をまるで事実かのように言い放ち、ダルトワ公爵家の意向も聞かず、勝手に四宮家へと嫁ぐことを強引に決定させたそうだな。いった、どうやって嫁がせる事ができた? シュバルツよ。今お前はまだ王位を継承していない。言い換えれば権力を行使できる立場ではないはずだ。どうやってシャーリーを四宮家へ嫁がせる事ができた? 言い訳があるのならば申してみよ」

「…………いや、その……えっと」

「お主の悪事を余が知らぬとでも思っておったかっ!! 自分の行った行為も言えないようなそのいい加減な覚悟で、どんな手を使ってシャーリーを四宮家へ嫁がせたのかっ!! 申してみよと言っておるっ!!」

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