第47話 『よくやった』と褒めてあげたいくらい


 そして、ソウイチロウ様はワタクシを寄越せと言ってきたシュバルツ殿下を思いっきり右フックでその顔面を殴り飛ばすではないか。


 いきなりの事にワタクシはもちろん周囲にいる貴族や、シュバルツ殿下自身も一瞬何が起こったのか理解出来ずに呆けてしまっていた。


「な、なななな、何をしやかった貴様ぁぁぁあああっ!!」


 そんな中殴られた本人であるシュバルツ殿下が最初に、自分が何をされたのか理解したのか激昂しながら尻餅を着いた状態でソウイチロウ様へ叫ぶ。


「は? お前こそ自分が何を言ったのか理解してないのか? 俺の妻を寄越せと言った相手を殴って何が悪い? そんな事を言われて怒らない奴などいないだろう。何ならここで一生俺に歯向かおうなど馬鹿な考えを思いつかなくなるほどの暴力を見舞っても良いんだぞ? それを一発殴られただけで怒鳴りやがって。そこまで怒るくらいなら初めから人の妻を奪うなどという言葉を吐かなければ良かっただろう?」


 そしてソウイチロウ様は『殴られるような事をする方が悪い』とシュバルツ殿下の抗議をバッサリと切り落とすのだが、わたくしはソウイチロウ様のその言葉を聞き先ほどまで感じていたシュバルツ殿下にたいする怒りや嫌悪感などといった感情は消え去り、ただ『ソウイチロウ様はわたくしの事を妻と言った』という事実が頭の中でいっぱいになり、嬉しさで満たされてしまう。


 ソウイチロウ様からわたくしが一番聞きたかった言葉を引き出してくれたと思えばむしろ『よくやった』と褒めてあげたいくらいである。


「……覚えておけよ…………っ!!」

「は? 何でお前みたいなクズを覚えている必要があるんだ?」

「お、俺はこの国の王となる男だぞっ!!」

「……いや、今までの言動だけ見てもお前は国王に相応しい器の持ち主ではない事は一目瞭然だろう? その為に今日のパーティーが開かれたんだろう? まさかその事にすら気付けずにこの場にのこのことやって来たとでも言うのか? 国王陛下が決まった行事以外でパーティーを開く異常性と、最近起こった国王陛下がパーティーを開きそうな出来事を鑑みればシュバルツ殿下の王位継承権の順位降格、弟を王位継承権第一位へと順位の変動である事は濃厚だろう? しかも良くて王位継承権の順位降格であり最悪廃嫡もありえるだろうな。では、俺は国王陛下・・・・に呼ばれているので城内に入らせてもおうか。あ、一応国王陛下より俺が城内へ入ったら他の貴族も城内へ入って良いとの事なので。では」


 そしてわたくしはソウイチロウ様に手を引かれながらどの貴族よりも早く城内へと入って行くのであった。


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