第44話 バッサリと切り捨てる


 そんな中、王城への入り口をふさぐようにシュバルツ殿下が立ちふさがり、わたくしたちの進路を立ち塞ぐと、上から目線で突っかかってくるではないか。


 確かに、階級だけ見れば王位継承権を持ち、何事も無ければそのまま即位する王太子と男爵ではシュバルツ殿下の方が偉いように見えるのだがそうではない。


 即位していないのであればそれが例え騎士爵であろうとも爵位を持つ者の方が立場は上である為、この場合はシュバルツ殿下の態度の方があり得ないのである。


 しかしながら将来の事を考え損得を考慮した場合は、こちらの方がまだ・・偉いだけでしかないにも関わらず偉そうな態度で対応して近い将来得る筈だった甘い汁を吸えなくなるような事は避けて、耳心地良い言葉を並べておべっかを使った方が良いに決まっているし、誰しもがそう考えるだろう。


 それ故に今のシュバルツ殿下は所謂裸の王様状態であり今の自分の正しい立場というものを忘れて、こうして本来であれば目上にあたるソウイチロウ様へ無礼な態度を取っているのだろうし、だからこそわたくしに対して根拠もない罪で婚約破棄し、勝手に嫁がせるという罰を執行したのだろう。


 あの時は現実を受け入れる事と怒りや悲しみという負の感情でいっぱいいっぱいであったのだが、今ではシュバルツ殿下がいかに小さくてくだらない可哀そうな人物であるかというのが見えて来る。


「即位していない君が爵位を持つ私に楯突くのかい? この国のルールでは貴族や王族の息子は家を継ぐまでは何の権力も持たない筈では? そうでなければ複数人継承権力を持つ子供がいる家などは考えただけでも面倒な事になる上に、変に権力を持ちそれを振りかざす様な事があっては国の事業や政などが最悪めちゃくちゃになりかねないだけではなく、大人の悪知恵で敵対貴族の子供をたぶらかしたり、賄賂を贈って出し抜いたりとやりたい放題ではないか。ただでさえ大人同士でそのような事が日常的に起きているというのに、子供にまで権力を与えてしまっては収集がつかなくなるのは少し考えれば分かる事だとは思うのだが、逆にその事が分からないほど馬鹿なのかね?」


 そんなシュバルツ殿下へソウイチロウ様は一度深いため息を吐くと、バッサリと切り捨てる。


 その言葉のあまりの切れ味にシュバルツ殿下は一瞬何を言われたのか理解が追い付いていなかったようで数秒間口をぱくぱくするだけで言い返しもせずに突っ立っていたのだが、徐々にソウイチロウ様から言われた言葉を理解していくにつれて顔を真っ赤にしていき、怒りの表情へと変化していく。

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