第28話 少しばかり不安になってくる


 今日『ニッポン』へと転移門を使っていく事は予め聞かされていたのだけれども、周りがわたくし以上にテンションが高くて少しばかりビックリしてしまう。


 それほどまでにソウイチロウ様が仰っていた『スシ』という料理は魅力的かつ美味しい料理なのだろうか?


「あの……『スシ』という料理はどのような料理なのでしょうか?」

「そうですね……お酢や砂糖、塩などの調味料を混ぜたご飯を一口大にして、その上に生の魚の肉を乗せて食べる料理ですね」

「……生の、魚……それは大丈夫ですの?」

「えぇ、生の魚に関しては日本では一般的に食べられており全く問題ないですので安心して大丈夫ですよっ」


 気になったわたくしは隣にいたミヤーコへと聞いてみるのだが、調味料で味付けしたご飯の上に生の魚の肉を乗せた一口大の料理だと言うではないか。


 ミヤーコのその説明を聞いたわたくしは『スシ』という料理が、本当に大丈夫なのかと心配になってくる。


 ソウイチロウ様に嫁いだ身である以上ソウイチロウ様の故郷へと訪れる事は何も思う事は無いのだけれども、わたくしたち帝国民が今まで当たり前のように食べて来た食生活とは全く違うという事に少しばかり不安になってくる。


 今までは何とかソウイチロウ様の故郷の料理はおいしく食べる事ができたのだが、もし『ニッポン』で一般的に食べられているという生の魚を食べる事ができなければ、ソウイチロウ様はそんな人ではないとは理解しているのだけれども、もしかしたら幻滅されてしまうのでは? と、思ってしまう。


 ミヤーコは安心して大丈夫と言うのだけれども、その根拠が明確でない以上やはり不安はぬぐえないわけで。


 そんな事をうじうじと考えながらソウイチロウ様の後に着いて歩き屋敷の外にでると、そこには見た事も無い金属製の、大きな乗り物が出迎えてくれるではないか。


「段差に気を付けて」

「ありがとうございますわ……っ。そ、それで馬が見当たらないのですけれども……?」


 その乗り物へと、ソウイチロウ様に手を添えて乗り込むのだけれども、馬が見当たらない。


 あれほど大きな乗り物であれば馬もかなりの数揃えないと動かすことは出来ないと思ったわたくしは、隣の席に座っているソウイチロウ様へと疑問に思った事を素直に聞いてみる事にする。


「あぁ、なるほど。確かにそう言われてみればそうだな。でも大丈夫。これは馬が無くても走る事ができるから」


 そして全員が乗った事を確認するとソウイチロウ様が言った通り馬が無くともこの大きな乗り物は動き始めるではないか。それも物凄いスピードで。


 

 

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