第21話 女は度胸
「ちっちっちっ。これがスイーツじゃなくてちゃんとおかずなんだよなぁ。ちなみに甘い派と甘くない派で派閥が分かれているけど私はどっちも好きだったりするよっ!! まぁ、日本にはキノコ派かタケノコ派かで派閥が分かれていたりとかもするんだけれど、これはまぁ、後で良いか」
そしてアンナが甘くてもスイーツではなくてちゃんとおかずになる料理だと教えてくれるのだが、甘いのにスイーツではなくておかずになる料理など皆目見当もつかないのでいつか食べてみたいと思う。
しかしながら、恐らくソウイチロウ様の故郷なのだが色んな派閥があるようで、ソウイチロウ様が所属している派閥を、わたくしが間違えて敵対派閥を応援するような過ちを回避する為にも今度教えて貰わなければと心に刻む。
そんなこんなでわたくしは料理を食べ進めていく。
ミソシルというスープも、サケという魚の塩焼きも美味しくて食べ進める手が止まらないのだが、だからこそわたくしは敢えて白銀に輝くライスと、異様な存在感を放つ生卵の事を考えないようにして食べ進めていく。
しかしながら食べ進めていくという事は、異様な存在感を放つ生卵をライスにかけて食べる料理を食べるその時が近づいているという事でもある。
そして、その時はついに来てしまう。
白銀に輝くご飯と生卵以外を全て食べてしまったのだ。
どうしようと……? と軽くパニック状態になったわたくしは周囲を見渡すと、ソウイチロウ様含めて生卵を貰った者たちは既に『卵かけご飯』とやらを食べているではないか。
「鮭やだし巻き卵をおかずにご飯をたべたものだと思っていたのですが、おかずだけ食べてご飯は卵かけご飯の為に残していたんですね。生卵だけ残した人はゆで卵にしてもらえるという事を説明し忘れていた事を思い出したわ。なのでもし『チャレンジしようと思ったけれどもやっぱり無理そう』と言う場合はゆで卵にしてもらうので言ってくださいね。けれど、ここの世界では初めこそ常識が邪魔をして一口目は勇気がいるかもしれませんが、意外と美味しいですよ? それこそ一度食べたら完食するまでスプーンが止まらないくらいには」
そんなわたくしを見てミヤーコが声をかけてくれるのだが、どうやら生卵をゆで卵にしてもらえるようである。
その誘惑に負けそうになるのだが、わたくしはシノミヤ家に嫁いだ身でありソウイチロウ様が食べている料理を『気持ち悪い』からという理由で拒否するなど言語道断。
ええいっ! 女は度胸ですわっ!!
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