第20話 だし巻き卵
ど、どうしましょう……。
そう思った所で『やっぱり気持ち悪いから要らない』と突き返す度胸も無ければ、そもそもここに住む人たちが当たり前に食べている物を『気持ち悪い』と突き返す行為はかなり失礼である為、わたくしに残された道は卵かけご飯という、生の卵を炊いたライスに混ぜるという料理を食べる道しか残されていないのである。
ちなみに朝食のメニューは、お味噌汁という見たことない茶色い飲み物に、だし巻き卵という見たことないチーズのような違うような食べ物に、鮭という魚の塩焼き、そして焼きのりというまるで黒い色した紙のような食べ物に、炊いたライスである。
昨日食べたウナジュウに使われていたライスもそうなのだが、このライスもわたくしが良く見る細長い物と違い短くぷっくりしている。
そして、その朝食をソウイチロウ様や使用人たちは細い棒二本で器用に掴んで口へと運び食べていくではないか。
昨日出された料理からこの朝食に至るまで見たことない料理ばかりで、味も見当もつかず異国の地へ嫁いでしまったような気分になってしまう。
そんな中わたくしは一旦卵かけご飯については思考の端に追いやり、ナイフとフォークを使ってチーズの様なだし巻き卵という卵料理から手を付けようとナイフを入れた瞬間、その柔らかさに軽く驚いてしまう。
火を入れた卵というのはもう少し弾力があるものではないのか?
しかしながらいくら触感が想像よりも柔らかいといっても、見た目からして卵が多く使われている料理である事は間違いないだろうし、であればその味もおのずと想像できるというものである。
そう思いながら半分に切っただし巻き卵をフォークで刺して口へと運んだ瞬間、わたくしの口の中は旨味を含んだ汁で満たされるではないか。
「なんですのっ!? このジューシーすぎる卵料理はっ!? しかもその味はわたくしが想像していたどの味とも異なる上に、今まで食べてきたどの卵料理よりもおいしいですわっ!!」
「美味しいよねだし巻き卵っ!! これを嫌いだという人に今まで出会った事が無いくらいだからねっ!!」
そして、想像以上の美味しさに思わず感想が口から出てしまい、それにアンナが答えてくれる。
確かに、これほどまでに美味しい卵料理を食べて『苦手』だと言う者はまずいないだろうと、納得できるほどの美味しさであった。
「ちなみに似たような料理で卵焼きもあるから、こっちも美味しいよっ!! しかも甘いバージョンもあるからっ!!」
「あ、甘い……っ!? それはスイーツではないんですの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます