第19話 TKG(卵かけごはん)



 あぁ、どうしましょうっ!? こんな出来すぎた展開は流石のわたくしもその想定外といいますか。心の準備ができていないですわっ!!


 で、ですが嫁いだ妻の役目は家の跡取りを作る事。


 という事は早速今夜にでも呼ばれるのでしょうかっ!?


 そんな妄想を繰り広げていると、食卓に朝食が並べられていく。


「生卵がいる人は挙手お願いします」


 それと共にかごの中に卵を入れた給仕であろう女性が、生卵が欲しい者は挙手するように言うではないか。


「あ、あのミヤーコ。生卵はいったい何に使うのかしら?」


  しかしながらわたくしはその生卵が何に使われるか皆目見当もつかない為隣に座っているミヤーコへと話しかける。


 ちなみに席順はアンナ、ミヤーコ、わたくという順番であり、わたくしの正面にはソウイチロウ様が座っているので、正面を向くたびにこの国にはまず見ない妖艶さを持つソウイチロウ様の色気に当てられてしまう為、極力視線は料理に集中しないといけないのだけれども、昨晩ウナジュウにがっついているところを見られて恥ずかしかったという失態もある為全く意識しないというのもそれはそれで恥ずかしいところを見られかねない。


 あぁ、まさか食事一つ取るだけでこれだけ集中力を使わないといけないだなんて誰が想像できようか。


「あぁ、奥方様はこちらの世界の住人でございます為『卵かけごはん』というのは初めてでしょう。卵かけごはんとは言葉の通り生の卵とご飯を混ぜて醤油をかけて食べる料理です。そして給仕係りの人はご飯に卵をかけて食べる人は挙手するようにと聞いているわけですね」

「…………え? た、卵を? 生で?」


 そしてわたくしの問いにミヤーコが『生の卵をご飯に混ぜて食べる料理』と説明してくれるのだが、流石のわたくしも生の卵という部分に若干引いてしまう。


「そうっ!! 卵かけごはん、略してTKGっ!! シンプル故に奥深く、使う醤油が変わるだけで味も変わり、アレンジも無限大っ!! しかしながら死ぬときに食べたい最後の食事に上げる者もいる程の美味さと魅力がある至高の料理、それがTKGっ!! マジで美味いよっ?」


 そんなわたくしの反応などお構いなしにアンナが、いかに卵かけごはんが素晴らしいか熱弁するのだけれども、流石に生の卵はちょっと……と遠慮しようと思ったその時、ソウイチロウ様が手を挙げて給仕から生卵を貰っているではないか。


 その姿を見たわたくしは、気が付いたら手を挙げて生卵を貰っていた……。

 

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