第17話 薄い板


「き、着物にいたしますわっ!!」


 ミヤーコの『着物を着るとソウイチロウ様が意識する』という言葉を聞いた瞬間、わたくしは気が付くと着物を選択していた。


「そうですか。では今こちらに持って来ている桜という花の柄の着物でよろしいでしょうか? 他の柄が良ければお持ちしますが……」

「…………綺麗。これにするわっ! ミヤーコッ!」


 するとミヤーコは微笑ましいものを見るような表情をしたあと、今手元にある着物を見せてくれるのだが、その美しさにわたくしは思わず言葉を失ってしまう。当然、目の前の着物に一目ぼれしたわたくしは迷う事もせずにさくらの柄の着物にする。


 それに、他の柄があるというのならば別の日に着ればいいだけである。


「かしこまりました」


 そしてわたくしは、初めて着る着物とう衣服に四苦八苦(ミヤーコが着付けをしてくれたのでわたくしは殆ど立ったままだったのだが)しながらも、なんとか朝食まえに着る事ができた。


 その姿を姿見で確認すると、そこには今まで着ていたドレスとは異なる美しさを身にまとったわたくしの姿が映し出されているではないか。


 正直言ってずっと見てられるのだけれども、流石に朝食に間に合わなくなるので後ろ髪を引かれながらもわたくしは食堂へと向かうのであった。



「きゃぁぁあああっ!! シャーリーさん可愛いっ!! 写真撮っても良いっ!? って、もう撮っているんですけどねっ!! シャーリーさんはスマホとか持っていないだろうから後で現像した奴を渡すねっ!!」


 食堂に着くなりアンナがわたくしを、何やら薄い板を取り出してわたくしの周りをうろちょろとし始めるではないか。


 何をしているのかは分からないものの、アンナに続いて他の使用人たちもアンナと同じようにし始めているので、いったい何をしているのか気になったわたくしは早速アンナへ何をしているのか聞いてみる事にする。


「その板みたいな奴で何をしているんですの?」

「あー、そか。 写真もこっちの世界にはまだ無かったんだった。 えっと、この板みたいな道具を使ってシャーリーさんを撮ってって……言葉で説明するよりも実際に見せた方が早いかっ! ほら、こんな感じでシャーリーさんの姿をこの板に保存していたのさっ!!」


 するとアンナは何やら薄い板の表面を指でスッスッとなぞったかと思うと、わたくしへ板の表面を見せてくるではないか。


「な……っ!? わ、わたくしが薄い板の中にいますわっ!?」

「因みに動画も撮っていたりっ」

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