第16話 聞き慣れない音
こんなふざけた話、いくら余の息子と言えども許される訳がないだろう。
そもそもソウイチロウに向けて醜い容姿などと言ってしまうあたり、どう考えても余の息子であるシュバルツはソウイチロウの事を知っておらず、ある事無い事でっち上げているというのはほぼ確定とみて良いだろう。
「ほんとうに、息子だからと言って余が見過ごす訳が無いという事と、悪い事をしたらしっかりとその償いをしなくてはいけないという事を教えてやらねばならぬようだのう……」
そして我は深いため息を吐くと、余の息子にどういった制裁をするべきかと考えるのであった。
◆
翌日。
わたくしは『ぴぴぴぴぴ』と鳴る、聞き慣れない音で目覚める。
どうやらこの聞き慣れない音は白い箱型の、文字が緑色に光る時計から出ているようなのだが、しかし止め方が分からず、時計を持ち上げてみたりしながら四苦八苦していると、ノックが聞こえて来たので返事をするとミヤーコが入って来る。
「ミ、ミヤーコッ! 良いところに来ましたわっ!! こ、この時計が先ほどから鳴っているのですけれども、どうやって止めたら良いのか、そしてこの頭のボタンは押しても良いのか分からなくて……っ」
「あら、ごめんなさね。 どうやらアラームを設定したままにしていたようだわ」
そしてわたくしはミヤーコに、この鳴っている時計はどうすれば止まるのかと聞くと『あらあらまあまあ』と言いながらわたくしの手にある時計をひょいっと掴み取ると、ポンと頭のボタンを押して音を止める。
「頭のボタンを押すと止まる仕組みですよ、奥方様。 後で時計の操作方法を教えた方が良いかしら? それとも、アラームの設定は消した方がいいかしら?」
「そ、そうですわね……わたくしもこの時計の操作方法を知りたいので後で教えてもらえるとありがたいですわね。 それにしても……設定した時間に鳴る魔道具とは、便利ですわね」
どうやらミヤーコがこの時計の操作方法を教えてくれるという事なので、わたくしはそれを承諾する。
しかしながら、天井の光る魔道具にお風呂場の魔道具、そしてこの時計型の魔道具など、もしかしたらわたくしは偉大なる魔術師様の元へ嫁ぎにきたのだろうか……?
「それでは、朝食がもうそろそろできる時間ですので準備をしましょうか。 お召し物はどういたしましょうか? 洋服にいたしますか? ドレスにいたしますか? それとも着物にいたしますか?」
「き、着物……とは何ですの?」
「そうですね、旦那様の産まれた国の伝統的な民族衣装ですね。 綺麗で可愛い物も多く、ドレスとは違った魅力がございますよ。 そして、奥方様の着物姿を見た旦那様は間違いなく意識してしまう事でしょう」
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