第5話 バースデー

「レイちゃ、おたちょう、おめれとうごだいます。ママとちゅくったの」


 大きなハート型のクッキーの入った箱をルナが渡した。

 遼平と一之介からは造花の花束。

 一平からはマザーズバッグ。

 哲平と顔なし、モンキーからはマタニティドレス。


「パパ、だっこ」

「テーブルの上のプレゼントがが見えないのか」


 一平はルナを抱き上げた。


「ルナ、甘い匂いがする」

「ママくれたの」


 ルナはエプロンのポケットを一平に広げて見せた。


「ああ、割れちゃってる。ママにお洗濯してもらおうね」

「うん」


 ルナはクッキーのくずを一平の口に入れようとしたが断ると自分の口に運んだ。


 ガクの演奏するキーボードからバースデーソングが流れ、それに合わせてプレゼントが渡された。しばらくすると、


「ぼくの愛しき妻、レイちゃんに捧げるバラード」


 美しいメロディラインが静かに流れていった。

 哲平、顔なし、モンキーが小さな音で伴奏をつけた。

 ナオまでがうっとりと聞き入ってるのを見て、一平はおれも何か楽器を覚えておけばよかったと後悔した。


 曲が終わるとレイに近付き、ガクはひざまずいた。


「渡すタイミングがなくて遅くなっちゃったけど」


 指輪を箱から取り出してレイの指にはめた。

 ナオは自分の指先を見詰めた。

 それを見て一平は、


「指輪ほしいのか?」

「金属アレルギーやからいらんけど、ええもんやなあって。あっ、ケーキ持って来なあかん」

「ここの冷蔵庫か?」

「うん」


 大きなケーキにロウソクが立てられ火が灯された。

 レイが勢いよく吹き消した。

 わあー、と歓声があがり拍手が鳴り響いた。


「レイ、牛窓のおふくろさんとTV電話が繋がっているよ」


 レイの涙がますます止まらなくなった。


「財テクの女王ナオさんの貸しガレージも完成して、大谷家も安泰だな」

「哲さん、安泰というにはまだまだやけど、裏庭を遊ばせておくのは勿体ないし、固定資産税と光熱費分は確保出来たねん。お義母様はマンション経営のほかに株もやってらしたって」


「それでナオさん、どれだけの収益が見込まれるんだ」

「月200万くらいと思ったんやけど、もうちょっとリサーチしてからやわ。いくらでもええからっていう予約が入ってんねん」


「そしたら最後はアレでしめようか。ルナちゃん、笛吹いて」

「はーい」


 ルナは右手を挙げると、笛を高らかに吹いた。

 ダイニングテーブルの回りに輪が出来、ルナを先頭にその輪が回り出した。


 おんまがみんな パッパカはしる

 パッパカはしる パッパカはしる

 おんまはみんな パッパカはしる🎵







 



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