第4話 ブイブイ
「ナオさん、やっぱり3階から閉め出されちゃった。何か秘密な話でもあるのかな」
「仕事に集中したいのやない。レイちゃんがいるとルナもすぐ行くし」
「ルナちゃん、幼稚園は順調?」
「まあ、楽しいみたいやわ。お弁当食べるのは遅いみたいやけど。はよ食べられるようにお握り入れてたら、白ご飯にふりかけを持って行きたいって。誰かお友だちがやってるのやね」
「ガクさん、クラブでブイブイ言わせてたって本当? レイ、クラブとか行ったことない」
「それなら今度行ってみるか」
家から少し走った所のビルの地下駐車場に車を入れると、ガクは手慣れた様子でエレベーターのボタンを押した。
ドアマンが扉を開け招き入れてくれた。
大音響の渦に飲み込まれて、レイはしばし呆然としていた。
「レイちゃん、ちょっと待ってて」
ガクは奥の鉄骨の階段を上がるとディスクを回しだした。
「みんな、元気にしてた? おれは元気だよ」
「死んだんじゃなかった?」
キャーという歓声と指笛が鳴った。
すると、スタッフの一人がガクに耳打ちした。
「おーとっ、残念、もうお別れの時間がきてしまいました」
「ええっ、もう?」
「また来てね」
階段を駆け下りて来たガクは、レイの肩に手を回すと、
「レイちゃん、ごめん、ちょっと急ぐよ」
厨房のスタッフ専用の扉から入り、厨房を抜けると貨物用リフトで下り、駐車場に出た。
ガクは何度もミラーで後続の車を確認した。
「やっぱり胎教にはよくない社会見学だったね。昔、食い詰めたときの生業だったんだ。こんな一面もあるってことを知っておいてもらったほうがいいと思って。レイちゃん、がっかりした?」
「ううん、ガクさん、違う人みたいだった。裏口から脱出って、トム・クルーズみたいで格好よかった。レイ、まだ胸がドキドキしている」
ガクは後続車がやはり気になるようで、大型量販店に車を乗り入れ、駐車場を一周すると、すぐにまた車を出した。
そこまで用心しなければいけない何があるというのだろう。
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