第2話 メロンの気持ち

「一平さん、帰ってたん」

「おかえり。レイはどうした?」

「ガクさんにご飯でも奢ってもらって、ゆっくりしてきい言うたの」

 

 ナオは冷蔵庫から麦茶を取り出して、もう一度ダイニングの椅子に座った。


「で、相手の女性は何て?」

「あわよくば元サヤに収まろうと考えていたみたいやけど、結婚してお腹に子までいるとわかってショックを受けてたみたい。それに角膜1つくれようとする深い愛にはかないっこあらへんやん」

「えっ、レイはそんなこと考えてたのか」

 

 一平は目を見張った。

 レイの角膜の1つを移植すればいいと言い出したのだ。

 1つあったら事足りるとレイは安易に考えているようだったが、片目で生活するというのは躰のバランスが崩れ、あちこちに支障を来すことになるのを知らない。

 どうやってレイの暴走を止めようかと案じていたのだが、それも杞憂に終わった。



 浴室の扉が開いた。


「ルナ、何泣いてるん?」

「おにちゃ、おにちゃが」


 ルナをバスタオルで拭いていると、


「ルナ、シャンプーしてたら鼻から水を吸い込んでしまって」


 遼平がバスルームの扉を開けながら、困惑顔で言った。


「あっ、お風呂いれてくれたの、ありがとう。ルナもありがとうしなさい」

「おにちゃ、あいがと、うえー、いたいよー」

「お鼻、チーンしなさい。シャンプーハット破れてたんや。また買うておくから。そうだ、晩ご飯してないから、ピザかお寿司でもとろうか」

「やったー」




 子どもたちは寝てしまい、一平とナオはリビングのソファーに座っていた。


「ガクさん、付き合ってた人がおったんやね」


ナオがしみじみと言った。


「おれと同い年だし、背も高くイケメンだもの彼女の一人や二人いても不思議じゃないだろう」

「じゃあ、一平さんも付き合ってた人いてたん?」

「おれは女性恐怖症になって、いなかったよ。ナオさんだけだよ。ナオさんはおれを裏切らないと思ったんだ」

「もう、一平さんったら」


「その元彼女さん、大きな胸してるんよ。メロンみたいな。レイちゃんも大きいし、ガクさんて爆乳好きなんやろか?」

「おれはナオさんくらいでちょうどいいけどな」


 ここでもイチャイチャが止まらなかった。


 思えば始めてこの家に来たとき、レイがキャミソール姿で出て来て、一平の彼女だと勘違いしたナオはその胸を見て、負けたと思い踵を返したのだった。

 あのとき、一平があとを追って来なかったらナオはここにはいなかった。








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