しゅうさく
そうま
しゅうさく
私の名前は秀作。秀でた人物になってほしい、という両親の期待が込められている。私はこの名前が好きである、そして誇らしい。
たしか小学生の頃。習字の授業の時だった。したためる書の題材が「習作」という言葉になったときがあった。クラスの中でも、賢くて、そしていやみで、妙に人受けがいい男が笑いながら言った。
「おい、秀作。お前の親はひょっとして、本来習作と名付けるところを間違えたんじゃないか。つまり、お前の存在は前座にすぎない。子育ての習作だったんだよ」
そう言って奴は、はははと笑った。なんと下品で、暴力的な言い草だった。しかし、先生は特に強く叱責もせず、クラスメートたちもその冗談をそれなりに面白がっていた。授業が終わり、下校の時間になると、私は奴の鼻っ柱をぶん殴り、そして倒れこんだ奴の頭を踏んづけてやった。いや、嘘だ。そんなことを実行することは出来ず、目に涙をためて、今にも泣きそうなのを必死にこらえながら、通い慣れた家路をとぼとぼと歩いたのだった。
しゅうさく そうま @soma21
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