第12話
宮本の話を聞きながら幽世の世界を想像する。
幽世の文明は江戸時代までの文明が混在しているようだ。だが、甲冑は着ていてもマゲは結っていない。しかし、手紙を送るのは飛脚という走って届ける人に任せないといけないらしい。
スマートホンで簡単に送れる現世とは文明が遅れているようだった。
際立って違うのは魔物がはびこっており、人間同士の戦争は滅多にないとのこと。
農民は町の外で田畑で作業する。そのため、魔物に狙われることが多いらしい。そのため、農民の地位は高い。その代り、町の商人は守られた場所で仕事をするため地位は低かった。
本当に江戸時代のような身分制度だった。士農工商。この順に地位が与えられている。だが、えた、非人はいない。役所は人権を大事にしているようだ。理由は魔物という外敵がいるため、人間は人間で団結しなければならないと凛音は推測している。
姫様の旅行はまだ続いた。前板に座り、みすの向こうの姫と話す。だが、どこまで行くのかわからない。
しかし、町に寄る姫の一行は都合がよかった。情報を集めるために町に簡単に入ることができるからだ。
凛音は宿の仲居に話を聞く。どれも新鮮な話だ。この世界は現世で手に入れた情報とは違った。
神通力を持つ人間は少ないらしい。町に一人いればいいようだ。そのため、重宝されていて庶民には接点がないらしい。
神と並ぶような神通力を持つ人間は、神と同じで雲の上の人間であるらしい。
凛音は疑問しかなかった。魔物がはびこる幽世では必要不可欠な能力だ。使える者を育成してないのか不思議だった。
しかし、その疑問もすぐに理解できた。神通力を手に入れるには資質を必要とした。それに日々の生活に追われている。修行して神通力を手に入れる余裕はなかった。
しかし、護衛の侍はその手の力を習うらしい。しかし、神通力を身に着けられるのは少数だ。できのは、身体能力を一時的に向上させるぐらいらしい。
「なぜ、幽界にも関わらず、現世にいない魔物が出るのか知っておるか?」
凛音は姫にきかれた。
もちろん、凛音には心当たりがない。魔物がいない現世の方が安全だった。
「こちらの世界では現世での思いが形になる。そのため、現世ではあるはずのない異形のモノがいる。だが、現世の思いは悪いことばかりではない。新しい道具や考え方を与えてくれる。そのため、幽界は変わっていく」
幽界は現世の想像が反映されているようだ。だが、魔物なら現世でも観たことがある。何体もの霊が重なり合って異形な化け物となっている。しかし、霊感がなければ観れなかった。
「その化け物も、この世界にはいる。だから、旅は危険であり死を覚悟して望まなければならない」
姫の言葉はわかる。しかし、神である姫の前には魔物など簡単に退治できるはずだ。
「われは力があり過ぎるゆえに手を出せない。わしを運んでくれいる一行の全員を根の国に流してしまいたくはない」
神は神で苦労しているようだ。大きすぎる力は身を滅ぼすという。それを体現できるようだ。
「ゆえに、おぬしの力はありがたい。神通力を使える神仙なら、魔物を倒せるからな」
神には及ばない力でありながら、強い力がある。魔物を倒すのにちょうどいい強さのようだった。
「ところで、どこに向かっているのですか?」
凛音はきいた。
「今さらながらきくか? ちょっと心配だな」
姫はいった。
凛音は流されて一行について歩いていない。
元々、こちらに来て黄泉への道を探す予定だった。最初の町で話を聞こうとしていたが、門前払いをされた。そんな時に姫に拾われた。
お陰で町に入って尋ね回ることができるのだが、要領を得なかった。そのため、姫の一行から離れる機会がなかった。
だが、黄泉の入り口は
「わしは
「神様は神界では?」
凛音はきいた。
「そうだが、幽界でなければ現世に満足な力を届けられん。それゆえにあの場所に神が集っている。おぬしでいうところの現役の神の居住まいだ」
「神界の神は何をしているんですか?」
「それぞれ自分の仕事をしているのだろう。わしがいた場所だからな」
「そうでしたか。伊勢に行ったら自分も神様にあいさつできますか?」
凛音は現世で行くことのなかった場所に思いをはせた。
「無理だな。神仙といえど人の子。興味本位で姿を見ることは失礼にあたる」
凛音は残念だった。いつかは行ってみたいと願っていた場所だからだ。
「そう。ガッカリするな。おぬしの黄泉の入り口に入れる許可を取れるかきいてやるから」
思いもよらぬ申し出に驚くと共に喜びが沸いた。
「まだ、喜ぶには早い。普通なら却下されるからな。だから、期待するな」
「はい」
凛音はそう返事をするが、期待するなという方が無理だった。
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