第6話

 通力の練習を兼ねて、神足通で走った。そのかいがあったのか、すぐに町は見えた。

 町は魔物から守るように塀で囲まれているようだ。

 その一角に兵士が立っていた。そこが町に入る門のようだ。

 凛音は神足通を使わずに歩いて門番のところに行った。

「身分の証を」

 門番の体つきは普通だった。鍛えているのだろうが、ひょろ長い印象を受けた。

「ありません。こちらの世界に来たばかりです」

「何を言っている?」

 門番は視線で仲間を呼んだ。

「どうしたんだ?」

 同僚の門番もやせていた。

「身分の証がないらしい」

「それなら、役所で発行してもらえばいいだろう?」

「こちらの世界に来たばかりなんだと」

 門番はわからないというような仕草をした。

「お前は生まれた村は?」

「この世界ではありません。ですから、偉い人に会わせてください。事情を説明してもわからないと思います」

「それはオレたちでは理解できないということか?」

 門番の声には怒りがあった。

「申し訳ありません。この世界以外の世界を知る人にしかわからない話です」

「この世界以外に何がある?」

現世うつしよですよ。神通力を使えないと観ることもできません。ちなみにあちらではこちらを幽世かくりよと呼んでいます」

「オレにはわからないが笑えるところがある。こいつは神の力を使えるとよ」

 門番たちは笑った。

 やはり、門番では話が通じない。覚悟していたが、こうももめるとは思いもしなかった。

「使えますよ。その代り、使えたら一番偉い人に会わせてください」

「ああ。いいぜ。できるのならな」

 門番はいやらしく笑った。

 凛音は雷法を使った。自分の手のひらに雷を落とした。

「雷法です。一般的なのでわかると思います」

 驚いている門番にいった。

 門番は驚いて尻もちをついていた。

「たまたまだ」

「空を見れば晴天ですよ。雷が落ちるような天気ではないのがわかります」

「なら何をした?」

「だから、雷法ですよ。神通力であなたを観てもいいですよ」

 門番は黙っていた。理解できないらしい。

「あなたの名前はくんですね。息子はりく

「何でわかる?」

 門番は恐れながらもいった。

「神通力ですよ。宿命通でわかります。これで理解していただきましたか?」

「ああ。わかる。お前を町に入れることはできん。化け物を入れられない」

 凛音はあきれた。

 この世界では神通力を使えるのが当たり前の世界のはずだった。しかし、一般人には関係のない話のようだった。

「そう思うなら、神通力を使える上司に連絡してください。それに無理に入る気はないですよ」

 凛音は期待するのをやめた。

 今度は大きな街に行って探すしかないようだ。その前に町の有力者の名前をきいときたかった。後で同じ姓の有力者に会うこともあるかもしれない。

「この町の町長は誰ですか?」

「いうものか」

 門番は刀を抜いた。

 どうやら、話し合いは終わりのようだ。武器を抜くぐらい警戒感を与えたのだろう。失敗した。

「それなら、私は去ります。さようなら」

 凛音は風遁の風に乗り空高く上昇した。そして、街を探すべく道なりに飛んだ。

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