第28話 イジメっ子と話し合い?

 暫く俺は、こうきに連れられて歩く。

 生徒も先生も体育館に集まっている為、静まり返った校舎内。

 俺達は特に会話する事も無く、ただこうきのすった足音が廊下に響いている。


 ……コイツ、一体どこで話をするつもりなんだ???


 俺はてっきり、楽園とかダサい名前つけてた倉庫裏に行くと思ってたんだが。

 ここ、図書館とかある普段は使わない棟だよな。

 こんな場所に第二の楽園でもあるんですかね。


 心の中で少し馬鹿にしていると、3階に上がった先の廊下の奥に人影が見える。

 目を細めて、凝視する。


 あれは……こうきの取り巻きじゃねーか。


「おい、2人きりで話するんじゃなかったのか?」

「あ? 安心しろよ、あれは単純に見張りで廊下に立たせてるだけだ」


 見張りとはなんともまぁ、何か俺にしてきそうな匂いがプンプンしますね。


 でもとにかく今回は、俺からは手を出さない様に気を付ける。

 ここからはより、色々と警戒していくか。


 見張り役の2人が立っていた所に着き、上を見て教室名を確認するとそこは視聴覚室だった。


 視聴覚室か……なるほどな。

 窓側にも廊下側にもしっかりと黒いカーテンが引かれたこの教室は、外からは中の様子が見えない。

 隙間が少しばかりあるが、部屋の電気が付いてないと覗いても物影くらいしか分からない。

 つまり、何か良からぬ事をするには絶好の場所だ。


 こうきはおもむろに、ポケットから鍵を取り出し、施錠された視聴覚室のドアを開ける。


 なんで鍵を持ってんだよと言いたかったが、どうせ黙って職員室から盗ってきたのだろうと思い、訊くのは辞めておいた。


「誰か来たら、すぐに知らせろ」


 こうきは取り巻き2人にそう言い残して持っていた鍵を渡し、教室に入っていく。

 続いて俺も入ると、ドアが閉められ鍵もかけられた。


「さてさて。まずはどこから何を話そうか」


 ドアの近くにある机に座り、考えるようにして言うこうき。


「できるだけ手短に頼むぞ。行きたい所あるし、次の試合には間に合わせたいからな」


 俺が急かすと、こうきは苛立ったのか突然声を荒げる。


「――あぁああ、それだよそれ! まずはそれからだ! なんでお前はそんな口を利くようになったんだ? ああ!?!?」


 こえーよ、瞬間湯沸かし器かこいつ。

 てかめっちゃ唾飛んできたし、きたねぇ。


「あたかも俺と対等かのような口調で喋りやがって。あげくの果てには俺に意見して、この間は手まで出してきたよなぁ!?」

「いやそれは――」

「ああーいいいい。言い訳はいいから、今すぐ謝罪しろッ!!!」

「……謝罪?」

「全裸で土下座して、お前の行動全部謝罪しろつってんだよ!」


 死んだ目を大きく見開いて、瞬きもせずじっと見つめてくる。


 は、なんで俺が謝罪しなきゃいけないんだ?

 先に謝るべきはコイツだろ?

 しかも全裸で土下座って、コイツ度が過ぎてるぞ。


 ちょっとだけイライラしてきたが、ここは我慢。

 落ち着いて、否定した場合はどうなるか訊いてみる。


「……仮に、謝罪しないって言ったらどうなるんだ?」

「ん? それは、謝罪しないって意思表示と受け取っていいのか?」

「いや仮の話で」

「そうかそうか仮か。アハハ、流石に仮の話に決まってるよなぁ。まぁ、もし仮じゃなく本当に謝罪しないなら――」


 こうきはそこまで言って、自身の体育服をめくり――真っ黒な警棒を勢いよく取り出してきた。

 そしてそれを俺に向け一言。


「どうなるかは、自分で考えろ」


 おいおいマジかマジか。

 コイツ学校に警棒持ってきちゃってるよ。


 これ、度が過ぎてるどころか、頭完全にイっちゃってるわ。

 要は謝罪しないなら、警棒でぶん殴るぞって事だろ。

 詳しくは知らんが、警棒ってかなり威力あったよな?

 デカい体格をしたこうきが本気で振りかぶったら、普通の人は骨折しそうだ。


 まぁ流石に魔法で身体を強化した俺には通用しないが、なんか1発でも当てられるのは癪だな。

 でもだからと言って謝罪するのも癪なんだよなー。


 そんな事を考えていると、こうきがニヤニヤしながら喋り出した。


「アレレ、みのるくんビビっちゃった? みのるくんビビり過ぎて、固まっちゃってるぅ!? 勘弁してくれよぉ〜ビビってないでさっさと謝れよカ〜ス」


 こうきは自分の手を警棒で軽く叩きながら、謝罪を急き立てる。


 うん、面倒だが、やっぱコイツの態度腹立つから謝らない方向でいこう。

 警棒で殴ってくるだろうけど、全部軽く避ければいいし。

 後々の事も考えた準備もしてあるから、今の俺は怖いもの無しなんでな。


 かかってこいよ、ダンゴムシ。


 俺はケツをこうきに向けペチペチと叩き、間抜けな顔をして分かりやすく挑発する。

 これのポイントは、声を出してない事だ。


 ガキの様な煽りを受けてこうきは、無言で机を降りて言う。


「――覚悟しろ」


 のってくれた。

 短気でサンキュー!


――――――――――――――――――――――――


【申し訳わかめっ!】


2~3日に1回更新を目指してたのに、前回から5日も経っちゃいました!

言い訳はないです、どうもすみません!

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