第22話 虐めっ子フルボッコ

「りゅ、りゅうせいっ!?」


 なんでりゅうせいがここに!?

 もう彼女と帰ってる時間帯じゃ?


「みのる、その人達は誰? 一体どういう状況?」


 いつもより低めの声のトーンで訊いてくるりゅうせい。


「っ!」


 若干怒ってる様な声の雰囲気に俺は少し驚く。


 え、全然普段と違うんだが……なんか俺、りゅうせいを怒らせた?

 あっ、もしかして。俺がりゅうせい以外の男子といるから、嫉妬させてしまった?(見当違い)

 ごめん! こいつ等全くそういうんじゃないんだ……っ!


「っと、こいつ等は――」


 焦りながら説明しようとすると、こうきが俺の口を手で塞ぎ、言う。


「俺達はみのるの友達だよ」


 こいつ、なんと白々しい。


「――へぇ。友達なのに、なんで殴ろうとしてたんですか」


 りゅうせいがこうきを睨み付けながら鋭い質問をする。


 あっ、りゅうせい。嫉妬とかじゃなくて、普通に俺がされてた状況を見て怒ってくれてるのか。

 変な勘違いしてたごめん。


 するとこうきは睨まれた事にムカついたのか、俺の口を塞ぐ手に力が入る。


 おお、中々な握力。うん普通に痛い。


「ただ一緒に遊んでただけだが、なんか文句あるか?」

「遊んでた? とてもそうは見えなかったっすけどね」


 りゅうせい、身長は俺と大して変わらんのに中々の迫力があるな。

 こうきに劣らず気迫が凄い。


「遊びの価値観は人それぞれ違うからなぁ?」

「価値観って……。てか、そもそも俺はみのるに質問したんすけど? みのる、この人達は本当に友達?」

「だってよ、みのる。この正義面男に言ってやってくれよ。俺達は友達だってな」


 そう言ってこうきは俺の口を塞いでいた手を放した。


 こうきの方を見やると、めちゃくちゃ目で圧をかけてきている。

 友達って言えって事ね。了解。


 意図は分かったよという意味を込めて、こうきに向かってウインク。

 そしてりゅうせいに説明。


「端的に言うとね――こいつ等は友達だよ」

「それは本当か?」

「うんマジマジ。中学のからの友達でね~、結構仲良いんだよ」


 俺は正直に話さずに、こいつ等をかばった。

 かばったのには理由があるんだけど……プッ。

 それでこうきの奴、機嫌よくなってニヤニヤしてる。

 ふふ、俺の真意も知らないで、馬鹿め。


「みのる、俺はそれを信じて良いんだよな?」


 りゅうせいは疑ってるみたいだ。

 まぁそりゃそうだよな。

 動けないように抑えられてる人が殴られそうになってる場面、どう考えても友達同士の遊びには見えないし。

 まっでも、今回はそれを上手いこと利用させてもらいまーす。


「うん、信じてくれていいよ。さっきのもね、本当に昔からやってる俺達の遊びの一部でさ、こんな感じで――はい、よいしょー」


 ――ドスッ!


「ウグッ!」

「遊んでるんだよねー」


 振り向いて、魔法なしの全力でこうきの腹を殴った。

 こうきは腹を抑えてうずくまっている。


 あれれ、1発でダウン?

 俺、魔法使ってないよね?

 魔法なしで、そんな痛がるくらい威力出るとは思わなかったな。


 ちょ、弱くないっすかこうきさん。


「「え、え?」」


 急に俺が殴って、リーダー的存在のこうきがダウンした事で、驚くレンと太郎。


「えっ。そ、それが……あ、そび?」


 りゅうせいも驚いている。


「うん。遊びだよ。あっ、もう1度見せようか。こんな感じでね――はい、よいしょよいしょー」


 ――ドスッ、バコッ!


「うっ!」

「あっス!」


 レンにはこうきと同じく腹にパンチ。

 太郎には大事な部分に蹴りをお見舞いした。


 すると2人共うずくまる。


 フォォォオ!

 キモチィィィイ!


 暴力が遊びってお前らが言ったんだからなー。

 それなのに、俺はお前らと遊びたかっただけなのにっ!


「あれ、もう遊び終わり? 流石に違うよね?」


 3人揃ってそんな地面に寝転がっちゃってさぁ、なんか絵面笑っちゃうって!

 まるで横向きに少し丸まったダンゴムシだな!


 アハハハ!


「この遊び、りゅうせいもやる?」

「……い、いや遠慮しとく」

「そっか。楽しいのに」

「……じゃ、じゃ俺はそろそろ帰ろうかな? みのるはどうする?」

「俺も帰るわ。校門まで一緒に行こうや」

「お、オッケー」

「じゃあ、俺帰るんで。お先~」

「「「ううぅ」」」


 いまだに痛がってる3人に俺は挨拶して、りゅうせいと校門に向かう。


「……で、みのる。あれ本当はどういう関係なん?」

「あー、あいつ等は中学の時、俺の事を虐めてた人達だよ」

「はっ? それマジ?」

「うん。それでさっき久々会って、また虐められそうになってた」

「マジかよ。やっぱ引き返してきて正解だったわ」

「え、どういう事」


 訊くと、どうやらりゅうせいは、俺と3人が倉庫裏に行ってる場面を目撃していたらしく。

 途中まで彼女と帰っていたけど、やっぱり何かおかしいと思い、わざわざ引き返してきたらしい。

 なんていい奴なんだ。女だったら惚れてる。てかりゅうせい主人公すぎ。


「いやでも本当助かったよ、ありがとう」

「感謝される事、なにもしてない気がするけどな」

「いやいや、ほんと助かったよ。りゅうせいが来てくれたおかげで、俺は殴られずに済んで大義名分もゲットできた」

「あーうん? どういたしまして?」


 りゅうせいが来なかったら俺は、こうきに殴られてた。

 本来はそれを大義名分にして、あいつ等をボコボコにやり返す作戦を考えていたが。


 りゅうせいが来てくれたおかげで、殴ったりする事は遊びの一部って話の流れになり、結果殴られずにあいつ等をボコボコにできた。

 凄くありがたい。


 しかしまあ、咄嗟に思いついた作戦だったから魔法を使わず殴る事になったのに、あそこまで痛がられるとはマジで思わなかったな。

 素で、俺なんかやっちゃいました状態だった。


 俺も強くなったんだなぁ。


 最初から最後まで、あいつ等の事を面倒だとは思っても、怖いとかそういった感情は全くなかったし。

 身も心も、成長したんだと実感。


「じゃまた明日な」

「おう、また明日。っとそういや、明日の昼食代忘れず持って来いよー」

「あー分かってるよ、ったく……」


 校門前で、帰るりゅうせいを見送る。


 ……マジで、いい友達持ったなぁ。


「ちょっと、なに1人でニヤついてるの? キモいんですけど」


 せっかく浸ってたのに、横からアリシアが邪魔してきた。


「うるさいなー。今俺は胸にジーンと来たものを噛みしめてんだよ」

「あ、そう。そんなのどうでもいいからさ、早く家に帰って一緒にゲームしましょうよっ!」

「えー? 俺がボコされるだけやん」

「大丈夫大丈夫。手加減するから!」

「はー、ちょっとだけな」

「やったー!」


 ぴょんぴょん跳ねて喜ぶアリシア。


 俺はいつもアリシアにゲームでコテンパンにされる。

 だから正直やりたくはないが、今日はだけは特別。なんせイジメっ子をボコボコに出来て気分がめちゃくちゃ良いからな。

 ちょっとだけとか言いつつ今日は何戦でも出来る気がするし、イラつかないと思う。


 家に帰り、俺とアリシアは早速ゲームをする。


「イェーイ、また私の勝ち! ほんと弱いな~みのるは~」

「うぜっえ! もういい。一生やんねぇ!」

「ええ! ちょっと、ちょっと待ってよみのる!」


 数戦でイライラした俺は、一生アリシアとゲームやらない宣言をした。


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