第26話 表記変更

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ヒガヒロト 十七歳 男

体力:G魔力:G素早さ:G運:G

称号:ゴミ使い

加護:蒼き深淵の加護(大)

スキル: 《ゴミ生成》レベル30 《ゴミ分別》レベル30《ゴミ合成》レベル30

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「………ちょっと待てぇ!」

 思わず叫んでいた。

 ゴミスキルが全部30なのは文句ない。このレベルになり、かなりのことが出来るようになった。だが、これはない。

 裕人のステータスを弄れるのはブルーティアだけだ。

「何で! どうしてランクがオールGに戻ってんだよ! ふざっけんなって! 俺の今までの努力はいったいなんなの! アンタ、いったい何がしたいんだよ!」

「まあ落ち着け」

「これが落ち着いていられるか!」

「落ち着けと言っている」

 ブルーティアが全身から圧を発した。神の威圧により、裕人は口を閉じて、萎縮した。

 それでも、ごにょごにょと、裕人は小さく文句を口の中で唱えていた。なんでだよ。なんでこんなことするんだよ……。

「そのGは、最高ランクの一つだ。即ち、Sと遜色ない実力ということだ」

 それを聞いて、裕人はブルーティアを驚きの顔で見た。

「本来最低ランクはFだ。その下にGランクというのは存在しない。にも、関わらずお前のステータスはGランクだった」

 そうだ。だからゴミのGとして、ゴミとしてここに捨てられたのだ。

「わたしが最初にヒロトに会った時に、なんて言ったか覚えているか?」

 ブルーティアの質問に、裕人は首を横に振った。

「人間を見たのは何百年ぶりだろうな、と言ったのだ」

 そうだった。それを聞いて、ブルーティアが何歳なんだと驚愕したことを思い出した。

「数百年前に出会った人間もまた、全てがGランクの者だったのだ。その者も、お前と同じく生きたままゴミとしてここに送り込まれた」

「なんてことだよ。その人もかわいそうに……」

 裕人はその人間に同情した。まさか、同じ境遇の人間が過去にいたとは。

「……その顔だとまだわかっておらぬようだな」

「え、何が?」

「少しは考えんか。この空間は、本来生物は入れないのだ。それが、お前たちは入ることが出来た」

 確かに。あの燕尾服の支配人もそんなことを言っていた。ということは、まさか。

「え? 俺、実は既に死んでいたってこと?」

 慌てて自分の胸に手を置く。ドクンドクンと、心臓の鼓動はしっかりと響いていた。

 生きている。ホッと安堵した。

 しかし、そうなると、ブルーティアの言葉の真意が全くわからない。

「……やれやれ。ようするに、Gランクの者のみがこの空間に自由に出入りできるということだ。通行許可の証みたいなものだな。そして、その者はこの空間へと誘われるように運命づけられておるのだ。Gとは、生物以外の全てを飲み込む空間である『グランドアビス』の頭文字のことだ」

 驚愕の事実。

 ここはただのゴミ空間ではなかった。そして、Gランクは最低ランクではなかった。

 スキルはゴミ関係だが、自分自身はゴミではなかったということだ。良かった。本当に良かった。俺はゴミクズ人間なんかじゃなかった。

 しばらく感慨に耽ったあと、裕人はステータスをもう一度見た。

 ブルーティアはステータスを弄れる。ならば、あと気になるのは、称号の『ゴミ使い』。それから、『ゴミ生成』『ゴミ分別』『ゴミ合成』……習得時にも思ったが、他にいいネーミングがあるだろう。

「……この称号名とか、スキル名って変えられないの?」

 ダメ元で一応聞いてみる。

「ん? 変えられるぞ。お前はわたしの眷属だからな。意味が同じようなニュアンスであれば問題ない」

 しばし、裕人は考えた。まあ、少し安直なネーミングではあったが。

「……よし、まず称号は『リサイクルマスター』で頼みます」

「よかろう」

 ついでに、『ゴミ生成』を『ウェーストジェネレイト』、ゴミ分別を『セパレート』、ゴミ合成を『ウェーストフュージョン』にしてもらった。裕人のネーミングセンスではその程度だったが、日本表記とカタカナ英語表記とでは、その響きが格段に違ってくる。

 そして裕人のステータスは、改められた。


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ヒガヒロト 十七歳 男

体力:G魔力:G素早さ:G運:G

称号:リサイクルマスター

加護:蒼き深淵の加護

スキル:《ウェーストジェネレイト》レベル30 《セパレート》レベル30 《ウェーストフュージョン》レベル30


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 なんということだろう。ほぼ同じ意味なのに、カタカナ英語にするだけでこれほどまでに違いが出るものなのか。少し裕人は感動した。

 Gランクも、Sランクと同等と知れば、とても素晴らしいものに見えた。と、ふと気づく。

「あ、でも、この世界の人たちがコレ見たら、やっぱりFランク以下のゴミカスだと思うんじゃないのか?」

 ブルーティアは、ふっふっふっ、と少し何かを企むような悪い顔になった。

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