第18話 身勝手

 ゴミ分別生活5日目。


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ヒガヒロト 十七歳 男

体力:B魔力:B素早さ:B運:B

称号:ゴミの仕分け人

加護:蒼き深淵の加護(小)

スキル:《ゴミ生成》レベル2《ゴミ分別》レベル1

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 ブルーティアの力のおかげで、オールGランクだったものがオールBランクになり、そして、ようやくゴミスキルである『ゴミ生成』がレベル2になった。さらに、新たなスキル『ゴミ分別 Lv1』が追加された。

 ブルーティアによると、『ゴミ分別』は、違う素材の混じった混合物のゴミを分けるスキルだった。もっとも、レベルが1なので、木材に使われた小さな釘などの鉄を取り出すことしかできない。

 ゴミの分別で、地域の指定通りに父親が分けていて、よく面倒臭いと愚痴をこぼしていたのを思い出した。世のゴミの分別をしっかりしている人にこそ、このスキルを与えてあげたい。

 『ゴミ生成 Lv2』では、今まで木材や紙類の端材(小)だったものや卵の殻や萎びたリンゴだったものが、端材(中)となり、中身の入った卵やちょっと萎びたリンゴに変わったりした。まだ複雑なモノや、鉄などは生成できない。

 加護にある『蒼き深淵』とは、ブルーティアのことらしい。

 そして、あまり触れたくなかったが、称号の箇所。

「ゴミの仕分け人って何だよ! いや、確かにゴミを仕分けしているけどさ!」

 思わずツッコミを入れてしまった。いったい誰がこのステータスを書き込んでいるのだろうか。一言文句を言ってやりたい。

 この調子でレベルをあげていこうと思ったが、いったんそろそろ、クラスのみんな──主に雪代の声が聞きたくなり、電話をかけた。

「もしもし、比嘉くん。どうかしたの?」

「あ、雪代さん」声が少し上擦った。「あ、いやクラスのみんなの声が聞きたくなって。今大丈夫?」

「大丈夫。みんな、比嘉くんから電話よ。声を聞かせてあげて。じゃ、スピーカーにするわね」

「あ、うん」

「あー待て待て。会話ならわたしも混ぜろ」

 いきなり目の前に現れたブルーティアに、裕人はうわぁーっと声をあげて驚いた。

「ど、どうした比嘉! 大丈夫か!」

 クラスのみんなの心配する声がした。

「だ、大丈夫。ブルーティア様が突然出てきて驚いただけ。もう驚かさないでくださいよ……」

 彼女は本当に神出鬼没だった。いつの間にかいなくなったと思ったら、今のように突然に現れるから心臓に悪い。

「お主が勝手に驚いたのではないか」

「いやいや、急に現れたらビックリしますよ」

「……ヒロトは肝が据わっておらん。こんなことでいちいち驚いていたら、外の世界では生きていけんぞ。まあ、そんなことはどうでもよいのだ。ヒロトの世界のクラスメイトとやら、お前たちの世界のことを聞かせてもらうぞ」

 勝手に話を始めるブルーティア。彼女の身勝手がまた始まった。

 実はこの5日間で、ブルーティアがどういう性格なのかだいたい分かってきた。

 彼女は我儘で、ぐうたらで、酒飲みで、酔うと絡んできて、下ネタ好きで、本当にこの異空間の管理者なのか疑いたくなるものだった。

 ブルーティア曰く、管理者とは、その空間を支配する神のような存在だという。裕人は、こんな女神がいてたまるか、と内心でツッコミを入れていた。

 あとで、雪代たちに愚痴を聞いてもらおう。

「ブルーティア様、わたしたちの世界のことを教えるのは構いませんが、先に答えてください。比嘉くんは今何をしているのですか?」

「ゴミの分別だ」

 腕を組んで、何故か得意げに言うブルーティア。スマホの向こう側で、クラスメイトたちがどよめいた。

「……なんか、この前と言ってることが同じなのは気のせいか?」

「いや、ゴミの分別で合ってるよ」裕人はため息混じりに伝えた。そして、先ほど習得したスキルのことも話した。

 スマホの向こう側が、沈黙した。

「……マジでゴミ関係のスキルなんだな」

「スキルレベル上げに、ひたすらゴミの分別って地味過ぎるだろ」

「俺が夢見た異世界生活とかけ離れすぎて、他人事ながら辛くなってきた……」

「……比嘉くん、頑張って」

 クラスの同情票が裕人に集まる。周りから言われると、余計に悲しくなってきた。

「だけど、生成できるものが変わってきたんだろ? めっちゃ頑張れば、凄えものも創れるんじゃないか? それこそ、コッチの世界に帰れるような装置とかよ」

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