第13話 謎の女
通話が切れると途端に、俄然やる気が出てきた。
あの雪代が、助けようとしてくれている。……ヒロインに助けられる男子ってどうなんだろうと思わないでもないが、彼女に限っては全く問題ない。むしろ、彼女にお姫様抱っこされて、助け出されたい。
そんなバカな事を考える余裕も生まれた。
だが、ここでただじっとしているのも時間の無駄だ。……時間の概念がない空間だが、感覚でなんとなくそう感じた。
とりあえず、自分もやれることをしよう。
まずはこのゴミ空間の探索だ。何か使えそうなゴミがあるかもしれない。例えば、疲れた時に休めるベッドとか、それに代わる寝具系があれば嬉しいのだが。
あと、先ほどまで寝てしまったが、周囲はゴミだらけだ。寝るにしても、もう少しマシな場所を探すことにしよう。
裕人は周辺の探索を開始した。
使えそうなゴミを探しつつ、少しでも広い場所も探す。
いくつかまた残飯系生ゴミを見つけたが、今のところあの萎びた果実以外口にする気はない。その果実は今手に持っている。
それを齧りながら、それにしても、と周りを見渡す。何度見ても、見渡す限りゴミの山。その山で向こう側が見えず、この空間がいったいどれほどの大きさなのか、まるで判断がつかなかった。
上を見れば、空なんてものはなく、無限の青い空間が広がっている。そして、そこかしこから魔法陣が浮かび上がって、ひっきりなしにゴミがゆらゆらと水の中に落ちたようにゆっくりと降ってきていたのが見えた。
それを見て、重力とかどうなっているのだろうかと不思議に思った。裕人の身体に動きに変化はないし、息苦しいというわけでもない。
結局、ここは異世界なんだから気にしても仕方ないということで、考える事を放棄した。
そして、探索することしばし。疲れてきたところで、目に入ったそれ。ゴミ捨て場にあまりにも不釣り合いなそれを発見して、裕人は驚愕した。
「何だあれ! ベッドか!」
王族とか貴族が使うような豪華絢爛な、天蓋付きのベッド。四隅の飾り柱に、薄い青色のレースが周囲を囲っている。いわゆるお姫様ベッドだった。
確かに、ベッドを求めていたし、さっき雪代にお姫様抱っこされるイメージも浮かべたけど、流石にこれはない。これはないんだが、背に腹は変えられない。
とりあえず、ベッドの状態を見てみることにする。周りは綺麗そうだが、きっと中のシーツとかがボロボロで使える状態ではないかもしれない。
裕人は近づいて、閉じていたレースをめくり中を見て固まった。
若い女性が寝ていた。
ボサボサの青い髪。着ているものは白い下着の上に羽織った透けた青いネグリジェ。その上から見えるしなやかな白い肉体に目を奪われた。
思わず叫んで、裕人は後ずさった。
心臓が内から激しく叩いている。頭がパニックになっている。
なんでこんなところに女性が? なんでこんなところで寝ているのか? なんでネグリジェなのか?
落ち着け。深呼吸だ。ゴミ溜めで空気は悪いだろうけど、とにかく深呼吸で落ち着こう。
なかなか落ち着くことができず、鼻息荒くして、そろりそろりとまたベッドに近づき、レースを開けて中を覗く。やましい気持ちはこれっぽっちもないのだが、そんな姿の女性が寝ているベッドに近づくなど背徳感で押しつぶされそうだった。
さきほど裕人が大きな声を出したにも関わらず、女性は眠り続けていた。顔を見ると、見惚れるくらい綺麗な顔立ちをしていた。
女性の生の寝姿、しかもパジャマとかではなく、下着が透けたネグリジェなど、裕人にとっては刺激が強過ぎて、まともに見ることができなかった。
起こす勇気もないし、裕人は外で、彼女が起きるのを待つことにした。
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