第10話 ゴミスキル

「……そういえば、異世界といえばアレだよな」

 ラノベファンタジーではもはや定番とされるステータス確認画面。目の前にウィンドウが開かれて、タッチ操作で出来る優れもの。ファンタジーというジャンルにおいて、裕人としては、そういったものは、SF、ゲーム要素が入っている感覚で何となくあまり好きでない。が、自分の情報を得るため、今はそんなことを言っていられない。

 ガチャの時には何やら空間に巨大スクリーンに投影されていたが、自分でみることはできるのか。

「……ステータスオープン」

 ……………。

 何も起こらなかった。

 何回か言ってみるが、やはり何も起こらない。自分では見れないのか? そういえば、ガチャの中に入っている時にはステータス画面は見えていた。ガチャカプセルに何か仕掛けがあるのだろうか。

 とりあえず、カプセルの所に戻ってみた。よく調べてみると、何か不思議な紋様のようなものがあり、そこに触れると光を帯びて空中にスクリーンが投影された。

 どうやら、この紋様で自分のステータスを確認できるらしい。

「……いちいち、これに触れないとダメなのか。結構面倒くさいな。それにしても、やっぱり酷いステータスだな」

 体力、魔力、素早さ、運の全てがG。そして、スキル『ゴミ生成 レベル1』。

 最近のゲームやファンタジーのステータスだと、もっと能力の種類があり、普通は数値なのだか、ここでは必要最低限の情報しかないらしい。

「にしても、Gランクって……。実はこれが最高ランクでGreatestとか、GODのGってことは……ないよな」

 先ほどの自分の体力の無さが証拠だ。

 では、『ゴミ生成』が実はチート能力だっていう説はどうだろうか。名前からしてとてもチート性能を有しているとは思えない。でもとりあえず、あるものは使ってみることにする。

 裕人は片手を前に出して、「ゴミ生成」と唱えた。

 言ってから、あまりにダサいのでできれば口に出したくないと思った。

 結果は、何も起こらない。何でと、思ったが、そういえばただ言っただけで、こういうのはイメージが大切なのではないか、と気づいた。これも、誰が最初に考えたか知らないが、異世界の常識の一つだった。

 しかし、ゴミをイメージするとしても、何をイメージすればいいのか。と、周りを見て、「……周りにいっぱいあるな」と頭を掻いた。

 もう一度やってみる。イメージは卵の殻だ。

 今度は、心の中で唱えた。

 翳した手の少し先で、空間が歪み、何かがうにょうにょと蠢き、そして、それは形を成して地面に落ちた。

「おー、卵の殻だ。凄い凄い」

 無から有を作り出したのか。それとも、ここのゴミ捨て場にある卵の殻を再形成したのかはわからないが、とにかく出来た。

 ゴミスキルでできたゴミだが、異能力が使えたことは楽しかった。

「他は何ができるんだろ」

 別のものをイメージ。今度はバナナみたいな果物の皮だ。これもできた。次は布の切れ端。できた。紙屑。できた。

 全部、このゴミ捨て場にあるものばかりだ。

「……じゃあ、これはどうだ?」

 裕人が次にイメージしたのは、先ほど食べた萎びた果実だった。あれがゴミとして認定されているのなら、きっとできるはず。

 空間が捩れ、またうにょうにょと何かがアメーバーみたいな動きをして、萎びた果実が出現した。

「やった! これは嬉しい!」

 小躍りしたくなったが、不意に急激な脱力感に見舞われた。

 え? なんだこれ?

 貧血を起こしたように頭がくらくらして、その場に蹲る。

 いったい何が起きたのかわからない。虚弱体質だから、ちょっとはしゃぎすぎて疲れたのか。いや、いつもの感じと違う。体の中にあった何かが無くなったかのような……。

 よく異世界単語に使われる一つを思い出す。

 『魔力切れ』。

 そういえば、と裕人は自分の魔力ランクがGだったことを思い出した。ここにきて、何で数値じゃないのかと、義憤に駆られたが、今は貧血で怒る元気はない。これじゃあどれだけ魔力を消費したかわからないではないか。

 しばらく休んでいると、少しだが気力が回復してきた。

 今『ゴミ生成』を使ったのは5回。5回で魔力切れが起きるということ。もっとも、生成するゴミの種類や大きさによって、変動するかもしれない。

 分析したいが、頭が回らない。肉体的にも精神的も疲労が溜まっている。

 ダメだ。眠い。

 裕人はゴミのないスペースに横になった。そのまま、あっという間に眠りに落ちた。

 

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