付録 4: Re: 偏差値 15 から始める伝達関数入門


 算数は小学校四年で諦めたイカワです。


 前回のロボットの歩行の論文を読みながら、数学が分かればあそこに出てくる数式を眺めながら、「ほうほう、こんな方法があるのだな! すごいぞ!」なんて考えられるんだろうな、と思って理数系(工学系)の人が大変羨ましくなりました。


 混合整数凸最適化とか、経時変化線形二次レギュレーターとか、閉形式最適コントローラーとか、もう名前からしてカッコいいじゃないですか。「この最適化の計算がうまく行かなくって……」とか言ってみたい……っ!


 今から小学四年生分からやり直すのは……、厳しいだろうな……。


 さて、今回はキラが一瞬だけ叫んでいた「伝達関数!」です。




Re: 偏差値 15 から始める伝達関数入門


 解読を始めて、「伝達関数」という言葉を見たときには、なにかを伝達する関数(プログラム)なのかな、なんて思ったのだが、そんな可愛いものではなかった。

 わずか五行程度の説明を書くのに十日かかった。それは伝達関数がバリバリ数学がらみだったからである。

 制御の勉強やお仕事をしている人だったら当たり前の概念らしいが、小学四年で算数(「数学」ではない)に挫折した者には理解し難い概念であった。以下は、算数の偏差値が 15 くらいの人が一生懸命考えた「伝達関数とは」です。



 伝達関数とは、システムの入力と出力の関係を見たり、理解したり、設計したり、調整したりするための数式のことだ。例えば、キラが調整したガンダムの歩行機能のサスペンションをシステム(互いに関連する部分が集まって一つの機構として機能するもの)として考えたとした場合、ガンダムの足の下のでこぼこの高さ(入力)とガンダムの腰の位置(出力)の関係は歩行時間の経過と共に変遷する。このように時間経過を伴うシステムは動的システムと見なされる。そして動的システムは、微分方程式で表すことができる。これは微分方程式の独立変数が時間だった場合、この方程式がある時点における変化率(以前と比べてどれくらい変わったか)を表し、求めることができるからだ。


「関数」は「入力 x に対して『何かする』と、出力 y が得られる」という関係を数式で表したものだ。そして x の値が変わっても、同じように『何か』を実行して、入力 x に対応した y を出力する。入力を変えられるということは、いろいろな入力に対する出力の「変化」を観察できるということでもある。


 上記のガンダムの例の場合、歩いていくガンダムの歩行時間が独立変数で、刻々と変わるでこぼこの高さが入力 x で腰の高さが y になる。この x を入れる -> 「何かする」 -> y が出力される、の「何かする」が変化率となる。


 伝達関数は、この「何かする」が「何をしているのか?」を知るためのものである。


 ガンダムのサスペンションは、油圧式のクッションとゴム製のダンパーだったとしよう。「何をしているのか?」を知るには、この油圧クッションの働きを表した微分方程式と、ダンパーの働きを表した微分方程式が必要になる。しかし、この二つの方程式を併せて計算するのは煩雑だ。


 そこで登場するのがラプラス変換である。

 ラプラス変換は、時間を元に考えている計算を、s という特別な空間(領域)に置き換えて計算するという裏技である。何がどうして s という領域に変換できるのかは算数偏差値 15 には永遠の謎だが、言ってみればすごく細かい方眼紙に円形を書くのに「上から数えて 10 マス目、右から数えて 30 マス目…」とマス目の位置を一つずつ数えて塗りつぶして行くより、中心点と半径を決めてぐるっとコンパスで丸を書くほうが早い、みたいなそんな感じらしい。


 テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、ラプラス変換で s 領域になぁれ ☆.。.:*・*°. *:.。☆..。.


 さて、s 領域になったところで、何が変わるのか。微分方程式が掛け算でできるようになるのだ。先程の油圧クッションの働きを表した微分方程式と、ダンパーの働きを表した微分方程式が掛け算で計算できる。これは楽だ。

 それだけではなく、周波数特性もわかったり、システムの安定性を調べたりお得なことがいろいろとあるらしい。


 最終的には、逆ラプラス変換で元に戻すと時間を元にした解が得られるんだそうだ。


 ラミパスラミパスルルルルル〜♪



 ということで、MIT が 46 ページにわたって記述する必要があった歩行アルゴリズムを一秒の伝達関数でチェックできていたキラより、それを実行できるコンピュータの性能の方が振り切れてるな、と思った伝達関数でありました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る