第6話 緊急って実はそんなに急ぎじゃない

「緊急のクエストが張り出されました!Cランク以上の冒険者は依頼内容を確認の上クエストカウンターまで来てください!」


ギルド内に緊張が走る。

緊急クエストというのは、要人の保護や危険度の高いモンスターが出現した際に張り出される。

というのはギルドの言い分で実際は貴族のわがままや失敗した依頼で緊急性の高いクエストを上位ランカーに処理させるというのが実態だ。

依頼を見てみると「第二王女の護衛」と書いてあった。


「ハーリットさん!お願いします!あなたしか残ってないのです!」

「断る。先月も同じ依頼来てて受けたら地獄を見たからな。」

泣きついてくる受付嬢にそう告げてその場を後にしようとした。


そう。それは先月のこと。

全く同じ依頼が来ていて、短時間の拘束と聞いて受けてみたらそれはもうわがままな姫様が振り回しまくってくれたのだ。

魔物の群れに突撃するわ、歩きたくないと駄々をこねるわ、挙げ句の果てには城に帰る時間になった瞬間に姿を眩ませて探し回る羽目になり怒られるわで散々だった。

そんな依頼を誰が受けたいというのか。


受付嬢が泣いていると奥から新しい受付嬢が来た。

「ちなみにハーリットさんには拒否権は無いです。」

「はぁ⁉︎なんでだよ!」

「姫様曰く、『面白かったから前の冒険者は必ず呼ぶように!』との事です。」

「・・・逃げたら不敬罪になる?」

「なりますね。ちなみに王様からも、『あの後満足して城を抜け出す事も無くなった。今月も満足させるように。』と言伝をいただいてます。」

「・・・逃げ場ねえな。」


俺は依頼を受ける手続きをして憂鬱になりながらクエストの準備を進めるのであった。


「・・・一発ぐらい殴っても怒られないよな?」

「ダメですよ。」

小声で言ったはずなのに聞かれていた。

受付嬢恐るべし。

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