第2話 休みが欲しい
「疲れた・・・」
冒険者はCランクが一番大変と言われている。
実力がありBランクに近いものは登録試験の試験官を任される。
俺みたいなCランクは登録完了してから1ヶ月間の新人トレーニングと登録希望の子供達への講習を任される。
ギルドから謝礼が出るとはいえ、なかなか割に合わない仕事だ。
まあ、将来助けになってくれる事を見越した上でだし安定収入と考えれば悪くはない。
しかし俺は受講者に助けられた事が一度もない。
というか、俺よりランクが上になった受講生の方が多いのだ。
「随分と暇そうな事で。」
「・・・何の用だ。金なら無いぞ、グラッド。」
「そう邪険にするなよ。俺とお前の仲じゃないか。」
「・・・で?お前のようなBランクが俺に構ってる暇は無いんじゃ無いか?」
蛇殺しのグラッド。
コイツは俺が知ってる冒険者の中でもかなりヤバい部類に入る。
何がやばいかというとコイツの武器にある。
細身のレイピアの先端には髪の毛1本分ほどしか無い穴がある。
その穴から出てくるのはどんな生物でも3分で死に至る毒である。(もちろん人には効かないように調節?してあるらしいのでどうにかなっているらしい。)
「実は、お前に協力して欲しい事があるんだ。」
「急に真面目な顔になるな。珍しいな、お前が頼み事なんて。」
「好きな女ができたからどうやって告白すればいいか教えてくれ。」
「・・・はあ?」
「種族はエルフで27歳だ。結婚を前提にお付き合いしたいと思っている。」
「ちょっと待t・・・」
「最初の出会いから話したほうがいいか?それともどんな見た目とかどんなところに惚れたとかの方がいいか?」
「いや、そうじゃなくt…」
「あれはクエストでの出来事でな…」
「いったん黙れ!」
グラッドの頭を剣の柄で殴ると大人しくなった。
「というか、エルフの女か…。やめといたほうがいいぞ。」
「なんでだ。まさか自分がモテないからって俺の恋路を邪魔しようってわけじゃないよな?」
「んなわけないだろ。」
エルフの女はかなり厄介な女が多い。
俺の母は珍しく「働かざる者食うべからず」の精神があった。
だが、普通のエルフは違う。
「女を養ってこそ男である」という考えが蔓延している。
ゆえに女エルフは何もしない。
仕事だけでなく家事をやらない女ですら珍しくないのだ。
説明をするとグラッドは意気消沈してしまった。
「疲れるだけだぞ。エルフの女なんか。」
「…一目惚れだったんだ。」
「…まあ見た目だけはいいからな。」
「でも、今度ご飯に行こうと誘ったら「行けたら行く」って言ってくれたんだ!」
「…それめんどくさいから行かないって意味だぞ。」
そう伝えると泣きながら酒を頼み始めた。
この後、無事に酔いつぶれたグラッドを担いで帰ろうとしていたらギルドの人間に声をかけられた。
「ハーリットさん。伝え忘れてたんですが明日の講習は朝の4時にギルドに集合なので遅れないでくださいね。」
「…ちなみに今何時?」
「2時ですね。」
徹夜確定である。
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