第1話 なんもなかった
あれから15年。
ベテランと言われるぐらいまでにはなった。
冒険者ランクはCランク。
S・A・B・C・D・E・Fの中のCだ。
収入はそこそこ稼いだが使い道もなく持て余しているし、強さは普通だった。
…普通なのである。
めちゃくちゃ強い魔法が使えるわけでもなく、属性が希少なわけでもなく、剣術がものすごく強いわけでもなかった。
「…どうしてこうなった。」
酒を飲みながらそう呟いていると、体格のいい男が話しかけてきた。
「おっいたいた!元気にやってるか?」
「…お前ほどではないけど元気でやってるよ。」
こいつは俺と同じ時期に冒険者になった奴で、言わば同期ってやつだ。
「それにしてもお前は相変わらずだな。パーティも組まずに一人で依頼受けてるんだろ?」
「…あんだけのことがあればそりゃこうなるさ。」
「自分で言うもんじゃねーぞ。そのセリフ。」
冒険者を初めて1年ぐらいでパーティを1度だけ組んだことがある。
依頼を進めていく中で仲間の視線が険しいものに変わっていくのを俺は気付かなかった。
パーティを組んで3ヶ月が経った頃、突然パーティを首になった。
理由はパーティの女魔導士に手を出していてセクハラまがいのことをしていたとのことだったが身に覚えはないしそんな度胸もない。
それから、揉めに揉めてギルドに怒られた後に正式に首になった。
それからはそいつらはこの町で見ることは無くなったので気にすることもなかったのだが、噂に尾ひれが付きまくった。
パーティに加入の申請を出しても断られたり罵倒されたりで散々だった。
そんなわけで俺はソロで活動するようになったのだが、たまにコンビを組んで仕事をしたりしていた。
目の前にいる男もその一人だ。
「…ところでいきなりなんだがよ。」
「仕事を手伝えだろ。内容見せろ。」
「流石だな!話が早えぜ!」
「断ったら土下座してくるだろお前。」
「いい加減名前覚えろよ!!」
「覚えてますよ。剛腕のガレフ殿。」
「…畏まるなよ。気色悪い。」
「ひでえ言い草だな。」
この剛腕のガレフという男は、その異名の通り腕っぷし一つでAランクまで上り詰めた男だ。
彼が率いる「剛腕列車」も猛者が多くもうすぐSランク入りが見えているらしい。
「で、仕事の内容は?」
「エルフの里の近くにできたゴブリンの巣の掃討と破壊だ。」
「なるほどな、仲介役になれということか。」
「そういうことだ。お前みたいにエルフの人間嫌いが無くなってくれると嬉しいんだがな。」
「あれでもまだ人間に優しい方だぞ。」
「…あれでか。」
「人・即・斬のエルフじゃないだけマシだな。」
そう、俺はエルフだ。
と言ってもこの世界では長命ということもなく、耳が尖っているぐらいしか特徴がない。
始祖のエルフは1000年生きているらしいが実際はどうだか分からない。
そしてエルフは人間嫌いである。
その理由は、特にない。
というかただ傲慢だったエルフの王に対して人間の王が指摘したところ、態度が悪かったという理由で各村に「人間と仲良くするな」というお触れが出されただけである。
なんでこんなのが俺たちの代表なんだろう。
恥ずかしい限りである。
「そういう訳だ。出発は明後日だから準備はよろしくな。」
「はいよ。」
そうして俺は、宿に帰りぐっすりと眠った。
ちなみに依頼の前払いでガレフには飯を奢らせた。
どの世界でも人の金で食う飯はうまいものである。
そして依頼の日。
朝から出発して、話を付けた後は宿に帰ってゆっくり眠った。
討伐に関しては特にやることは無かった。
========================
最後までお読みいただきありがとうございます。
レビューやフォロー、いいねなどいただけると励みになります。
アンチコメントも募集してますので感想も気軽に投げて下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます