妖怪の友達
第6話 楽しい夜
僕は
彼は、
「さぁ、着いたよ」
僕ん家は二階建てだ。
『うわぁ。久っしぶりだなぁ』
まだ、僕が幼稚園の頃だったよ。
「牛乳飲む?」
『おう。喉がカラカラだぜ』
僕が冷蔵庫から牛乳パックを取り出す。
舌を出して、牛乳が飲めるのは今か今かとワクワクしているようだ。
「ふふふ。シロは変わらないなぁ」
あ、しまった。
「
『別にいいぜ。ふふふ』
「牛乳。どうぞ」
『おう! いただきまーーす! ペロペロ』
ふふふ。
牛乳を必死に舐めてるのは可愛いな。
真っ白いポメラニアンみたいだ。
母さんは二番勤務だからな。
帰りが遅い。
まずはお風呂に入ろうか。
ピロリロン。
『お風呂が沸きました』
『おお、すげぇえ。コイツしゃべったぞ。コイツも妖怪か?』
「ふふふ。自動湯沸かし器だよ」
僕たちは一緒にお風呂に入った。
『うっひゃーー! 懐かしいぜぇえ!!』
「ふふふ。あの頃は毎日お風呂に入ってたんだよね」
そういえば……。
それともシャンプーなのかな?
「毛が多いからシャンプーにしようか」
ワシャワシャ。
『痛てて。なんか目に入るとしみるんだな』
「シャンプー中は目はつむっとかないとダメだよ」
シャンプーを流したらしっかりとリンスもしておこう。
体が洗い終わると湯船に浸かって大はしゃぎ。
バシャバシャバシャ。
『ヤッホーー! 気持ちいいぜぇええ!!』
「ははは!
『それぇ!』
と、湯をかける。
「やったなぁ! 僕だってぇ、それぇえ!!」
『ブワァア!』
「「 アハハハハハーー! 」」
母さんがいたら、うるさいって怒られるだろうけど。
今日はいなくて良かったかもな。
あ、そうだ。
「明日の朝には母さんが帰ってるからさ。
『なんでだ?』
「
『けいさつってなんだよ?』
「悪い人を捕まえてくれる職業の人だよ」
『オイラ悪くなんかねぇぞ? 悪い妖怪は
「人間の世界ってのは複雑なんだよ。とにかく、
『おう。まかせとけ! ワンワン!』
その日は、
『うはぁあああ……。優斗と一緒に寝るなんて懐かしいぜぇ』
「僕もだよ」
それにシャンプーとリンスのいい匂い。
ふふふ。
『優斗って暖かいな』
「
『へへへ。また、こうやって一緒に寝れるなんて嬉しいぜ。
「ふふふ。そうかもしれないね」
『おやすみ。優斗』
……ああ、なんだか急に胸が締め付けられる。
昔の嫌な思い出がよみがえったよ。
「……ねぇ、
『なんだ?』
「朝起きたら、いなくなってる。なんてことないよね?」
『ああ。六年前はさ。父ちゃんが心配して探しに来てたんだよ。だから、どうしても仕方なかったんだ。文字が書けたら手紙を書けたんだがよ。オイラはまだまだ赤ん坊だったしな。あの時は悪かったな』
「……じゃあ、一緒にいてくれるんだね?」
『もちろんだぜ。
「うん……」
ああ……。
こんなこと思っちゃダメなのかもしれないけどさ。
ずっと一緒がいいな……。
今日は色んなことがあったなぁ……。
タガメを探しに行ったんだけど、まさか妖怪に出逢っちゃうなんて……。
ふふふ。しかも、シロと再会してしまった。
牛田だってこんなにすごい体験はしていないだろう。
「ふふふ。
『ああ優斗。おやすみ』
僕たちはぐっすりと眠りについた。
次の日。
朝になると母さんが起こしてくれる。
二番勤務を終えた母さんは僕が眠っている間に帰ってるんだ。
「優斗。おはよーー。もう朝よ」
「うん。おはよう」
「その横にいる物体はなんなの? 白い……。ぬいぐるみかしら?」
「あ、えーーと。毛毛……」
いや、
「シ、シロなんだよ。昨日、姫井ヶ森で偶然再開したんだ」
「シロって……。六年前に拾った子犬?」
「そうそう」
母さんを見るなりニコリと笑う。
『よぉ。優斗の母ちゃん久しぶり! オイラ。
えええええええええええ!?
「いやいやいやいやーーーー!」
「え? な、なに!? この犬しゃべるの!?」
「ちが、違うよーー! 気のせいだよぉおお。ねぇ? シロぉ?」
僕は小さい声で耳打ちした。
「おおおい! 打ち合わせしただろぅ。君は犬のシロなんだからぁ! いい?」
『おお。そうだったぜ。すまんすまん』
『わんわん』
母さんは目を細める。
うわぁ、完全に疑ってるよぉ。
「……おかしいわね。さっき、言葉をしゃべったんだけど?」
「テ、テレビの声に勘違いしちゃったんだよ。きっとぉ。あははは」
「そうかしら?」
「そ、そうだよ。なぁシロォ?」
『わん!』
「ほ、ほらね。シロもテレビの声って言ってるよ。あはは……」
母さんはしぶしぶ納得してくれた。
そして、朝ごはんを準備しながら、
「そういえば、昨日の撮影はどうだったの? タガメの捕獲は成功した?」
妖怪を見つけました。
とは言えないしな。
「動画、観てもいいかしら?」
あ!
そういえば、そのことをまったく考えてなかったぞ!
「あら? 電源が切れてるわね。充電するわよ?」
「あ、うん。あのぉ……。や、やっぱり動画は観ないとダメかな?」
「当然でしょ。配信はお母さんと一緒にやるって条件なんだから。変な物を撮影してたら学校で問題になるんだからね」
あうぅ……。どうしよう……。
大ピンチだ。
「ちょっとぉ。あなた、生配信してたのぉ?」
「な、生配信? なにそれ? 僕は録画ボタンを押しただけだけど?」
「リアルタイムで撮影した動画が配信されることを生配信というのよ」
ああ、そういえば、クラスの女の子でも生配信してる子はいたな。
牛田だって生配信をして自慢げに話してたっけ。
「んもぉ。優斗ったらしょうがないわね。うっかりとはいえ、生配信ボタンを押すなんて」
「ご、ごめん……」
「まぁ、慣れてなかったら仕方ないわね。んじゃ、何人が視聴してたか数字を確認してみましょうよ」
「う、うん……」
視聴者数の確認は緊張しちゃうよ。
牛田が初めて生配信をした頃は、視聴者数十人って言ってたよな。
初心者が生配信をしても0人が当たり前みたい。
だから、十人でも観てたらすごいことなんだって。
あいつは、そのことをめちゃくちゃ自慢してた。
牛田はクラスでも人気者だから、みんなに声をかけてさ。
自分の生配信を見るように宣伝しまくってたんだ。
そうやって十人の視聴者を獲得した。
ああ、僕は宣伝なんかしてないからな。
十人は観てくれるだろうか?
観てくれてたらうれしい。
だって、牛田に自慢できるもん……。
うう、一人とかだったらどうしよう?
0人かもしれないぞ。
牛田に話したら絶対笑われるだろうな。
『ギャハハハ! 0人とかマジかよ! 俺なんか初めての生配信は十人だったけどな! やっぱ、おまえは配信者に向いてないわ!! ギャハハハ!!』
ああ、絶対にそうはなりたくない。うう……。
「ちょ、ゆ、優斗! これはどういうことよ!?」
「な、なにが?」
ああ、0人なのかな?
せめて一人が良かったけど……。
母さんは大きな声を張り上げた。
「視聴者数。十万人も観てたわよ!!」
じゅ、
「十万人? どういうこと!?」
「お母さんだってわからないわよ!? 有名人でもない優斗がなんで十万人も観られてるのよ!?」
「あ…………」
僕は
妖怪を撮影したからだ!!
『わんわん!!』
「一体……。優斗は何を生配信したの?」
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