第46話 オオグレの森1

 中野充の返答にムッとしながら焚火を眺めながら、ワインにチラッと目をやる。

 そうだ!

 収納ボックスから炭酸水を出してワインに足してみよう。

 今はシュワシュワした物が飲みたいと思い、ワインと炭酸水を合わせた飲み物があったことを思い出しそれを作ってみることにする。

 作った炭酸水入りのワインを一口。

 ……?

 思った味と違う。


 「何を足したんだ?」

 中野充が変な顔をして聞いて来る。

 「炭酸水」

 「炭酸水?炭酸あるのか?」

 目を大きくして彼が聞いてくる。


 そういう反応になるよね。

 私も炭酸水を知った時は驚いた。

 まさか野虫から取れるとは思わないだろうな。


 炭酸水の袋を彼に手渡すと空になっている自分のグラスに注ぐ。

 それを一口飲んで顔を顰める。

 「ん~!久しぶりの味だ!!」

 美味しそうに飲むな。


 ケイブ達が不思議な顔をして見ているので炭酸水を勧めてみる。

 「あぁ、それ例の口の中が痺れるやつだろ?俺達はいいよ」

 ジェフが手を振って拒否してくる。

 美味しいけどな。

 

 「思った味と違うのよね」

 「思った味って、何?」

 そう聞かれても、何かカクテル風になるかなと思ったのだが……。


 「よく、お店とかにあるじゃない!ワインと何かを割って飲む的なもの」

 「……」

 暫く間があってから中野充が答える。


 「それって、ジンジャエールやコーラーじゃないか?」

 ジンジャエール?

 コーラー?

 そんな物ここにあるわけないやろ!


 「後はオレンジジュースとか?」

 「オレンジジュースか……」

 ……それってシュワシュワしてないやん。

 中野充は話している間、炭酸水を出したブレスレットをジーッと見ている。


 「これ何?」

 ブレスレットを指して聞いてくる。

 「収納ボックス。この中に色々入れて持ち運べるの」

 彼は目を見開いて私を見る。

 「アイテムボックス?」


 アイテムボックス???

 「俺も欲しい!!」

 俺も欲しいって……。

 キラキラした目で言われても……困るな……。


 「じゃ、野獣を倒しに行かないと」

 魔法が使えない、剣が使えない、それで野獣を倒しに行けるのか?

 と、いう目で彼を見る。


 「野獣?」

 彼の顔色が変わった。

 「野獣って、前に死体が殺られていたやつだよな」


 死体が殺られていたって……、殺られて死体になったんやん。

 日本語間違っているし。

 「でも、アイテムボックス欲しい……」


 泣きそうな顔でブツブツ言っている。

 ったく。

 「因みに何入れるの?」


 彼は少し考えて答える。

 「何入れよう?」

 おい!!

 何やの!!


 「明日、一緒にオオグレの森に行くか?」

 セドルが中野充を誘う。

 マジか……。


 一緒に森に行くと言うことは、ここまでこいつを運んで来た私も参加ってことだよね?

 中野充は即答しない。

 てっきり両手を上げて行きたがると思ったのに。


 「中野さん?」

 「どうしようか。野獣って魔物みたいなものかな?」

 まぁ、私も始めは魔物みたいだと思ったけど。

 「魔物だな」

 嘘を付いても仕方がないので私が最初に感じた印象を伝える。


 「なあ?考えたら野獣を討伐に行く部隊があるなら、そいつらって冒険者ってことか?」

 あんたの言う冒険者が解らない。

 冒険者って何?


 「俺、冒険者になるよ」

 いやいや、あんた勇者だから。

 可笑しいって!!


 「冒険者って何だ?」

 ジェフが聞いてくる。

 疑問に思うよな。

 ライもこんな感じだった。

 他の二人もキョトンとしている。


 中野さん、これどう説明するの?

 私達の話は理解出来ていないぞ。

 「よく解らないが明日行ってみたらいいんじゃないか?」

 セドルが中野充に笑顔で声をかける。

 セドルってホント優しい。


 「解った。一緒に行くよ」

 偉そうに答える中野充の脇腹に一発!

 「うっ……、何?」

 「お願いしますでしょう?」

 「……あ……、お願いします……」


 中野充が頭を下げたらセドルも

 「こちらこそお願いします」

 と、笑顔で頭を下げる。


 何か話がまとまってしまった。

 「そういうことだからゆきさん宜しく!」

 中野充が私に親指を立てて言ってくる。

 やっぱり……。


 何かムカつくから飲んでやる。

 「ケイブ!ここでトシンを焼いていいですか?」

 「構わんよ」

 「ありがとうございます」


 お礼を言ってトシンを収納ボックスから出そうとしたら、セドルが突然椅子から立ち上がり嬉しそうに聞いて来る。

 「チーズのやつか?」

 チーズ?

 あぁ、前に作ったチーズフォンジュ風のことか。


 「チーズは買ってないな。ごめん」

 「そうか……。あれ美味しかったな」

 残念そうに呟いて椅子に座る。


 「あれはまた今度作ってあげるから」

 そう言いながら焚火の左右に土魔法で壁を作り、収納ボックスから網を出して、作った壁の上に網を置きトシンの肉に塩コショウをかけ焼いていく。

 ふふふ……、焼き鳥だ!


 「この匂い……」

 中野充が私を見る。

 「焼き鳥もどきだよ」

 人差し指を立てて言う。

 「やっぱり!!」


 焼きあがったら全員が一斉にフォークでお肉を取っていく。

 「上手い!!ゆきのこれ本当に上手いよ」

 セドルが物凄い勢いで食べていく。

 こんなに喜んで貰えると嬉しい。


 中野充も塩辛い料理に感動して、泣きそうな顔で焼き鳥を食べる。

 鳥じゃないけど。

 ここの料理で塩辛いものは出ないからメッチャ喜んで食べている。

 「この味久しぶりだ。美味しい。来て良かった」

 凄く美味しそうに食べる姿を見ていると、また作ってあげたくなる。


 ケイブとジェフも大絶賛だ!

 持っていたトシンを全部食べてしまう程好評だった。

 良かった。良かった。

 

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