第44話 卵4
森の帰りに武器店に寄り鱗をカウンターに置くと、前回同様に大喜びして店主が踊り出す。
「こんなによろしいのですか?」
「勿論です。また鱗が手に入ったら買って頂けますか?」
「勿論でございます」
実は前回の鱗は収納ボックスに残している。
腐る物でもないが品質が悪かったら今後の取引に支障が出るかもしれないので、やめることにして今日ゲットした物だけを買って貰った。
武器店の後、宿の厨房に行き料理長に大蛇を見せて料理できるか聞く。
「これは凄い。こんな高級品を扱える日が来るなんて幸せだ」
何か変なテンションで喜んでいる。
「しかも口に出来るなんて!」
「そんなに喜んで貰えるなんて良かったです」
「貴重な食材を手に入れるのは難しいからな。こんな高級肉が料理できて、誰かに食べて貰えるなんて、こんな幸せなことはない。本来、この肉は上位貴族しか口にできない物だぞ。」
そうなんだ。
……あれ?
王族は食べないの?
「王様は食べないの?」
「王様はどうだろう? 市場に出れば貴族が直ぐ買うからな。買った日は晩餐会を開いて振る舞い、自分の名前を売るんだよ。これはそれぐらい貴重な食材だよ」
へぇ~。
じゃ、貴族に売れば顔が利くようになるかな。
まぁ、売らないけどね。
面倒臭そうだし。
料理長の捌きを見ていると、眼石と心石を取り出して皮を剥ぎ取り手渡してくる。
あぁ〜、だよね。
生き物だから、心臓あるよな。
背中の鱗の下に心臓があるなんて考えもしなかったけど。
そう言えばこの眼石や心石も魔石かな?
皮は何に使うの?
良く分からないが一応収納ボックスに入れる。
その後、爪を落として手渡してくる。
奥で待っているよう言われたが、料理の仕方も見たいので見学させて貰う。
この大蛇の肉をお客にも出していいか聞かれたので問題ないことを伝える。
料理が終わりに近づいてふと思いつく、もう一体の大蛇も捌いて貰って、それを動画に収めればいいやんって!
思ったら直ぐ行動!
料理長の傍に行きもう一体の大蛇を出す。
「料理長、これも捌いてくれない?」
覚えるのは無理だから動画を撮ることにする。
「もう一体あるのか?」
凄く嬉しそうに言い、楽しそうに解体し始める。
早速、携帯電話を出して動画を撮る。
早く思いつけば良かった。
これなら、部屋で何度も見て確認できるやん。
私のバカ。
捌き終わったら料理長が携帯電話を指差し聞いてくる。
「それ何だ?」
しまった。
いいアイデアだと思ったが、携帯電話を人前で使うのは良くないかも。
私のバカ……。
「え〜と、魔道具?」
不味い、疑問形になったよ。
「へぇ〜、魔道具か。流石だな!!」
信じた?
便利な世界だな。
何でも魔道具で通用するのか?
料理を始めた料理長のテンションが可笑しい。
ニヤニヤと鼻歌を歌いながら料理をし、いつもの落ち着いた料理長じゃない。
料理長が変なテンションで料理するほど、大蛇は嬉しい食材なのだと知る。
また変わった野獣がいたら持ち込もうと思ってしまう。
大蛇はフライにして塩で食べたが、お肉が口の中で溶けてビックリ!!
これは貴族が欲しがる訳だ。
部屋に戻ってから、料理長が捌いた大蛇の動画を見ていると“バキ”と音が聞こえて、直ぐベッドの端に置いている卵に目をやる。
!!!
……穴……。
卵に穴が……。
次の瞬間“パーン”と卵の殻が四方八方に飛び散る。
!!!
何?
……?
「……ペン……ギ……ン??」
いや、足は鳥だから違うな。
卵から出て来た小さな生き物は、私に背中を向けて顔だけ動かし周りを見ている。
……。
息を呑んで小さな生き物の様子を見ていると、クルッと首だけ回し私を見てくる。
!!!
目が合った瞬間方向を変えて私の方にヨチヨチ歩いてくる。
……。
え~と……、何だろう……鳥?
丸い体……、鳥の足……?だな。
手はヒナ鳥みたいで……、やっぱり……と……り?
でも……。
何で真っ直ぐ立って歩いて来るの?
鳥のヒナってテレビでしか見たことないけど、お尻突き出していたよね?
やっぱペンギンか?
小さな生き物はヨチヨチと傍に来ると、私の膝に乗ろうとしてバランスを崩し横にこける。
やだ、チョー可愛いかも!!
大きさは手の平より小さいのに、頑張って起き上がりまた私の膝に乗ろうとしてくる。
指を出すと、体を指に擦り寄せ手で掴み吸い出す。
くすぐったい。
ミルクが欲しいのかな?
やばい!
か……かわい過ぎ!!
可愛くってジーと見ていると、突然小さな生き物の体が白く光る。
!!!
何???
今の光……って、何???
体が光った後は私の膝に体を摺り寄せて来る。
甘えている?
目を細めて見ていたら、小さな生き物もこっちを見て首を傾げる。
「キャー! かわいい! ヤバすぎる!」
ずーとこのまま大きくならなかったらいいのにと思ってしまう。
「私はゆき。よろしく」
笑いかけながら挨拶をすると、また首を傾げる。
可愛過ぎる。
「あなたの名前は何にしようか?」
足は鳥だけど……ペンギンにも見える……。
大きくなったら毛が生えてきて鳥みたいに空を飛ぶかな?
取り敢えず、この生き物は鳥ということにしよう。
「あなたの名前はマヌね。かわいいわ〜」
何時間見ていても飽きない程かわいい。
「マヌは何を食べるのかな?」
猫なで声で話掛けると、マヌはまた私の指を吸い始める。
くすぐったい。
ん?
また、マヌの体が白く光る。
まさか!!
私の魔力を吸っているの?
いやいや、まてまて!
野獣でしょう?
いや、何かもう魔獣でいいやんとか思うわ。
大きくなったら、私の魔力全部吸うとか?
まさか、私はこの子に魔力を吸われて死ぬ運命?
それは困る。
魔力以外で食べる物はないのか?
調べなきゃ。
調べる?
何処で?
そもそも、これ何ていう生き物?
生き物の正体は解らず部屋に置きっぱなしという訳にはいかないから、出掛ける時は内ポケットに入れて一緒に部屋を出る。
私が食堂で食べていてもマヌが欲しがる様子はなく内ポケットで寝ている。
可愛いが将来が不安だ。
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