第43話 卵3
茂みの奥に座りパンを食べ始めるが、糸野虫が襲ってくる様子はなく相変わらず穴を掘って頭を突っ込んでいる。
あの中に餌でもあるのかな?
襲って来ないからのんびり休憩して、千里眼魔法で炭酸水野虫を探す。
ん?
あれは蜂蜜野虫?
昨日、花の蜜を吸っていた野虫だ。
あいつは飛ぶな。
パンを食べ終えてから花畑まで飛び、蜂蜜野虫がいる花の下に降りる。
下から首を狙って風魔法を飛ばし、首と胴体を切り離す。
「ぎゃー!」
最悪。
花も一緒に切ったから、上から蜂蜜が落ちてきて頭から被ってしまう。
全身ベトベトだ。
鮮度が大事だから、取り敢えず落ちてきた蜂蜜野虫のお腹を切り袋の中身を確認してみる。
やっぱり蜂蜜だ!
……もしかして、蜂蜜野虫を討伐しなくても花から直に蜂蜜がゲットできるんじゃない?
この花が肉食じゃなきゃだけどね。
肉食なら蜂蜜野虫は食べられているか。
考えるより、先ずはシャワーやな。
水魔法と火魔法を使って、お湯を出し頭から洗っていく。
石鹸がないから綺麗に洗えてないけどヨシとしよう。
昼間は温かいから自然乾燥でいっか。
そう言えば、ここに来てから季節が変わっていないような。
四季はないのか?
空から炭酸水野虫を探すが発見出来ず、飛んでいるうちに服も乾いたし仕方なく帰路につく。
途中、仕立て屋のルヴァノさんを訪ねてゲットした糸を渡しに行くと、白い糸を束で持ち上げて大喜びし、全ての糸を買い取ってくれた。
ありがとう!
白い服は王室の儀式で使われる衣装に使用することが多く、白い糸を沢山持っている仕立て屋は王室とのコネクションが作り易いらしい。
あの王室とコネクションか……。
そういえばここに来た時、白い服を着た人たちが儀式をしていたな。
ムカつく召喚の儀式というやつだ。
ルヴァノさんの店を後にして、蜂蜜について聞くためにジェフの店を訪れる。
「ビーバイを討伐したのか? 凄いな! 初めて見たよ。こんな高品質な蜂蜜」
高品質な蜂蜜?
「この袋の蜂蜜が高品質なの?」
「そうだよ。俺達は蜂蜜の収穫は茎に穴を開けて採取するんだよ。ビーバイを討伐して得た蜂蜜は王室か上位貴族くらいしか口にできない程の高級品だよ」
へぇ、そうなんだ。
ってことは、蜂蜜野虫からゲットした方が美味しい蜂蜜ということか。
「爪の毒で攻撃されたら暫く体が痺れて動けないのに、勇気あるな」
ジェフが感心したように呟く。
えっ?
毒?
あの蜂蜜野虫、毒持っているの?
早く言ってよ!
あの森は毒を持っている虫が多いな。
これからは勉強して討伐に行こう。
炭酸野虫についても聞いてみると、殆ど土の中にいて食事の時に出て来るくらいだそうだ。
昨日は凄いスピードで向かって来たのに、殆ど土の中ってことは滅多に会えないということか。
残念やわ。
王宮に戻って夕食の後、パン籠からロールパンを二個貰って部屋に戻る。
明日の朝、蜂蜜を付けて食べて見よう。
パンをテーブルに置いてベッドに入り、卵と睨めっこしながら考える。
今朝は危うく卵を体で踏みつけるところだったから、今夜は卵の周りにタオルを巻いて転がらないようにして布団を掛けてみようかな。
ピキッ!
!!!
またヒビ?
まさか孵る?
……。
大丈夫だ。
ヒビはそれ以上広がらないが、卵に二本亀裂が入ってしまっている。
安心していると、ヒビの所が一瞬白く光って消える。
何???
気持ち悪いので卵から離れて寝よう。
!!!
翌朝またしても脇腹に卵がある。
何で??
卵の周りに巻いていたタオルの形はそのままだ。
まさか自分で動いている?
……。
まさか……ね……。
深く考えるは止めよう。
今日は朝食後、オオグレの森に行くことにする。
野虫は止めて当初の目的通り、野獣の解体を練習することにしよう。
千里眼魔法で森周辺を見渡し、イーエルを探すが、発見したのはオドガザス二体である。
その奥に大蛇も発見!
先に大蛇を討伐してオドガザスを討伐するか?
そう言えば、前回討伐した大蛇の鱗や魔石が収納ボックスに入ったままだな。
今日の分と一緒に武器店に持って行こう!
残念なことに大蛇を討伐している間にオドガザスが遠くに行ってしまった。
ナイフは優れているから鱗ゲットに時間がかかったとは思わないけど仕方ない。
大蛇の肉は肉用の収納ボックスに入れ、鱗は生物以外の収納ボックスに入れる。
さっ、イーエルを探そう!!
と思ったが、直ぐ近くに大蛇を発見する。
もう一体鱗ゲットだ!!
二体目の大蛇を討伐し鱗を取って、肉はそのまま生肉用収納ボックスに入れる。
鱗ゲットに喜んでいると、内ポケットの卵が動いた。
!!!
何?
気持ち悪い……。
またヒビが入るかな?
部屋に置いとく訳にもいかないし、こうやって持ち歩くと振動で割れるかもしれないし最悪だ。
落ち着かないので今日は帰ることにしよう。
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