第40話 回復魔法5

 この国の橋は木が主流なのかな?

 「石を橋に使うことは難しいな」

 ライが顔を上げ山形美緒を見て答える。

 「何で?」


 「石材は高価な物だ。採掘に日数がかかるし運んで来るのも容易じゃない。人件費も考えると橋には使えない」

 「採掘しに行かなくても土魔法で作れば?」

 「えっ?」


 『えっ?』じゃないよ。

 ここには魔法があるのに、作るとか考えないのかな?

 「土魔法って岩とか作れるでしょ?それに風魔法も使えば岩は簡単に運べるやん?」


 ライは驚いたように、大きな目を見開いて山形美緒を見てくる。

 「川の真ん中に石を風魔法で運ぶねん」

 「す……凄いこと考えるな」

 凄い? 何が?


 「魔法を使うなんて考えつかなかった」

 えー!! 何で?

 折角魔法が使えるのにー!

 魔物退治がないなら、こういうことに使えよ。


 「しかし、石の橋は作り方が解らないな」

 作り方?

 「アーチ型に石を並べて行き、その上に更に石を重ねて最後に欄干を作ってはどう?」

 「……」


 ライが目を見開いて、机に手をつき山形美緒の方に体を乗り出して聞いてくる。

 「石の橋を作ったことがあるのか?」

 「ないよ」

 「……」


 彼はため息を付いて椅子に座り、再度本に目を落とす。

 「ないけど、見たことはある」

 中世のお城とか町並みが好きでテレビをよく見ていた。

 今は毎日見られる環境にいるが、何だろう、嬉しくはない。


 暫く山形美緒を見て、手にしていた本を閉じライは立ち上がる。

 「今の話を進言してみるよ。また、会ってくれるか?」

 「別に構わないけど」


 「ありがとう」

 ライは笑いながらお礼を言い、図書室を後にした。

 山形美緒はライの笑顔に少しドキッとすると同時に、彼も笑うんだと思った。

 「……」

 また会うとは言ったが、建築はど素人だから聞かれても解んないのに……。


 簡単に返事したことを後悔しながら部屋に戻ってきたところで私と会ったようだ。


 橋か……。

 丁度いい機会だ。『あんたも働け!』と心の中で怒鳴る。

 山形さんと別れ遅い朝食を摂った後、森に向かう。


 いつもはトシンを狩って帰るが、今日は大きな野獣を狙う。

 トシンは捌けるが、他はまだ捌けないし、トシン以外の肉も食べてみたいし!


 記憶した通りにナイフが動くから、イーエルやオドガザスを倒して捌くところを何回も見て記憶し、頭でイメージできるまでにして将来は自分で捌けるようになるぞ。

 そんなことを考えながらイーエルを討伐していると、魔法感知で大蛇を発見!

 鱗ゲットのチャンスだ!


 いや〜、魔法感知と千里眼魔法って便利〜!

 探さなくても野獣がいるところに行けるし、野獣に気づかれる前に討伐できる!

 いいね〜!!


 鱗と眼石、心石はその場で取り、皮はルーベンさんのところで捌いて貰おうと森を後にして、店を訪ねる。

 イーエル三体、オドガザス一体、大蛇一体を見たルーベンさんは大喜びで捌き始めるから、お願いして捌いているところを見せて貰うことにする。


 血の臭いと皮の剥ぎ方がグロテスクで気持ち悪いが我慢だ。

 この捌く作業を覚えないとサバイバル生活はできない。

 泣きそうになりながら見ていると隣でイーエルを捌いていた若い男性が声を上げる。


 「卵があるぞ!!」

 卵?

 若い男性が野獣のお腹からアヒルの卵大の物を取り出す。

 卵の言葉にルーベンさんが他の者に捌きを任せて急いで見に行く。


 「初めて見た」

 彼は珍しそうに卵を持ち上げて見ている。

 「本当に卵が出てくることがあるのか」

 スタッフ達も珍しそうに卵を見て話す。


 野獣の卵か。

 野獣も子供を産むんだ。

 なんてことを考えていたらルーベンさんが卵を目の前に差し出してきた。

 えっ?


 「これはあんたのだ」

 えっ?

 いやいや!

 いらないから。

 ルーベンさんが私の手に卵を乗せてくる。


 えー!

 どうしろって言うの?

 目玉焼き?

 卵焼き?

 どっちも食べたくないな。


 困った顔をして卵を見ていると店主が凄いことを言ってきた。

 「あんたなら育てられるよ」

 「……」

 育てる?


 えー???

 育てるって何?

 私が温めて孵化させるってこと?

 何が産まれるのよ?

 野獣やろ!


 ないない。

 えー!!!

 「卵が孵ったら狩りの時に役立つ相棒ができるぞ」

 ルーベンさんが笑いながら言ってくる。

 狩りで役立つ?


 いや、産まれたらあの大きさになるんでしょう?

 どう育てるのよ!

 ないない!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る