第33話 便利器具3

 二つも洗濯機を作ったよ。

 洗濯機?

 機械じゃないけど洗濯機でいいのか?

 いいか!


 いや~、今日はいい仕事した。

 早く使ってみた~い!

 あっ、でも不具合が出たら作り直しか?

 そんな事を考えながら王宮に向かって飛んでいるとリオを見つける。


 誰かと歩いているが、宿に来ていた兄とは違う。

 迎えに行くと言っていたから使用人でも来たのかな?

 リオが魔国の王子とはね。


 そう言えば忘れていたけど、人は魔国で生活出来るのかな?

 魔国ってどんな所だろう。

 魔国の妄想をしながらもう一度リオの方をみると、彼らの後ろから赤い髪の女性が隠れるように尾行しているのが見えた。


 尾行?

 これって、悪者に尾行されている?

 それとも一緒にいるのが悪者?

 まさかのどっちも悪者?

 王子だしヤバい状態か?


 気になるので私も尾行の尾行をする。

 空から下にいる二人を隠れるように追って行くと、二人は暗い路地に入って行く。

 気が付けば赤い髪の女性はいつの間にかいなくなっていた。

 あれ?

 尾行じゃなかったのかな?


 首を傾げているとリオの前の地面が光って大きな魔方陣が浮き上がり、その中央から男性が一人出て来た。

 「召喚?」

 まさかね。


 魔法陣から出て来た男性はリオの前に立ち、彼の首飾りを皮の袋に入れるように話している。

 あの首飾りって、お兄さんが外していた事を怒っていたやつかな?

 帰ったら直ぐ付けて、二度と外すなと言っていたはず。


 確か、リオを危険から守ると言っていたけど……。

 リオが首飾りを外そうとすると、突然声が響き渡る。

 「外すな!」

 魔法陣から出てきた男性とリオを連れてきた男性が声の方を見ながら、リオの腕を掴んで自分の方に引き寄せた。


 ヤバイ状況だよね。

 咄嗟にリオの掴まれている腕以外の全身に防御壁を張った。

 「大臣これまでだ。魔王城を混乱に陥れた罪は重いぞ」

 さっきの赤い髪の女性がそう言いながら建物の陰から出て来た。

 

 どこに隠れていたの?

 「プランヌエール様の悪行を広め、前魔王を殺害した証拠も揃っているぞ」

 銀髪のショートヘアの男性が空からリオの背後に降りる。


 「私が魔王城を混乱に陥れただと?前魔王を殺害したのは側近ではないか」

 リオを連れてきた男性が薄笑いを浮かべながら言う。

 「人の子が魔王の血を引くなど許されない!」

 そう言いながら魔方陣から出て来た男性が、ナイフでリオを刺す。


 ナイフはリオの前の防御壁に当たり粉々に飛んだ。

 「何だ?」

 男性は舌打ちをし、自分の足元に魔法陣を出す。

 

 さっき出て来た魔法陣かな?

 と言うことは、あの魔方陣でどっかに行ってしまうかも。

 防御壁を魔方陣の上に張ってみる。

 リオを連れ出した男性も魔方陣の上に立つが何も起こらない。


 「あれ?」

 二人は魔方陣の上でキョロキョロしている。

 「引っ捕らえろ!」

 声と同時に魔族兵が二人を捕えた。


 「何故魔方陣が効かない?」

 魔方陣から出て来た男性が喚いている。

 「防御壁スゴ!」

 防御壁で魔方陣を無効化出来るなんて新しい発見だわ。


 「それにしても魔国の大臣ヤバイな」

 「君、凄いね」

 えっ?

 声がする方をゆっくり見ると赤い髪の男性が腕を組んで立っていた。

 いや、羽を広げて飛んでいるから立ってないか。


 「防御壁って言ったね?」

 はっ?

 「防御壁をどう使ったの?」

 えーと?


 顔から血の気が引くのがわかる。

 確実にやばい状況だよね。

 前魔王が殺害されたとか、大臣がヤバイ奴だとか知ってしまったし……。


 魔国の王族と何かあったらサルナスに何言われるか。

 いや、それ以前に王宮を抜け出していることが知られたらマズイことになるのは目に見えている。


 私が頭を抱えて考えていると下から声がした。

 「ウエラ!」

 赤い髪の彼が声のした方を見た瞬間、空高く飛び上がり逃げる。

 チラッと後ろを見ると、赤い髪の男性はこちらを見ているけど追っては来ない。

 ホッと胸を撫で下ろす。


 後を追って来ないか魔法感知で確認しながら、千里眼魔法でリオの様子も見る。

 下に降りたウエラがリオを抱きしめる。

 「間に合って良かった。心配したよ。城内の動きからリオナジャに危害が及ぶのは時間の問題だと思っていたからさ」


 赤い髪の女性もリオに抱きつき怒った口調で言うが顔は笑っている。

 「ヨガラクス石を外していたなんて驚きよ。あの石は父の魔力で子供を危険から守る魔法が付与されているのよ。魔国じゃ王族の子供は不要と判断されれば魔王の臣下に殺される率が高いから、必ず王族の父親は子供に自分の魔力を付与したヨガラクス石を与え、あらゆる危険から子供を守るの。だから絶対これは外しては駄目よ。」


 「そうだよ。他の者はリオの石には触れることが出来ないことも覚えておきなさい」

 宿に来た兄のサガージャがリオに近寄りながら言う。

 「ところでリオナジャ。空飛ぶ人を知っているか?」

 ウエラに聞かれリオは少し考えてから返事をする


 「見たことはありますが、誰かは解りません」

 えっ?見られていた?

 いつ?


 「何?空飛ぶ人って?」

 サガージャが興味深そうに聞いてきた。

 「そうだ、サガージャ!!遅かったな。大臣捕まえた時いなかっただろ」

 ウエラがサガージャに指を立てて文句を言う。

 「俺必要ないだろ?戦闘は兄上達で十分だろ?」


 まぁなと大臣を捕まえに来た兄や姉がガッツポーズをみせる。

 ウエラは『チッ』と小さく声にすると、他の者がクスクス笑いだす。

 「そうそう、防御壁を使う人間がいて、大臣の魔方陣を無効化していたぞ」

 ウエラが両手を広げてサガージャに言う。

 「凄いな」


 あいつ防御壁のことをベラベラと話して!!

 魔国と関わることはないと思うが、気を付けよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る