第19話 魔道具4

 休みの日に、店主が森に連れて行ってくれると言うので朝から装飾店に行く。

 「おはようございます」

 奥から店主が顔を出す。

 「おはよう」


 「今日はよろしくお願いします」

  頭を下げる。

 「おいおい、やめてくれ。俺も石が欲しかったから有難いよ。あっ、後二人来るけどいいかな?」

 「勿論です」

 

 数分後、二人一緒に店に入って来る。

 「ジェフ、今日はよろしく」

 「こちらこそよろしく。紹介するよ」

 入ってきた二人と目が合い頭を下げる。


 「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

 「よろしく。俺はチャドだ」

 「よろしく。俺はルーベンだ」

 手を差し出されたので二人と握手をする。

 「ゆきです」

 

 「チャドは肉店をしているから、肉の解体はプロだよ。ルーベンは毛皮店をしているから皮の剥ぎ取りがプロだ」

 肉?

 毛皮?

 

 挨拶が終わったところで馬車に乗って、いざ森へ出発!

 馬車には剣と矢、袋が積まれている。

 1時間程で森に着いたので、そっと魔法感知を発動させておく。


 防御壁も馬車の周りに張っておこう。

 これで多分、突然野獣が襲ってきても大丈夫だろう。

 馬車は森の奥へと進んで行き、開けた場所で止め辺りを見回しながら降りる。


 それぞれが武器と袋を持ちゆっくり徒歩で更に奥へと進んで行く。

 暫く歩くと魔法感知に野獣が引っ掛かる。

 「向こうから何か来ます」

 野獣を感知した方を指す。


 オドガザスだ!

 店主が矢を額に向けて放つ。

 来る方向が解れば攻撃の準備ができ、討伐し易い。

 案の定、簡単に倒せた。

 倒したのは店主だけどね。


 早速、店主が眼石と心石を取り出し始める。

 その後、血抜きをしたら、ルーベンさんが毛を剥ぎ、チャドさんが肉を解体する。

 石、毛皮、肉はそれぞれ袋に分けて入れる。


 毛を剥ぐのは無理だと実感し、血抜きは微妙かな。

 肉の解体も無理だな。

 じゃ、何が出来るんだ!

 と、大声で言いたい。

 自分の眉間に皺が寄っているのが解る。


 「血抜きだけ出来れば鮮度は保たれるよ。後は換金所で解体してくれるから」

 「はい……」

 血抜きも出来るかどうか……、不安そうに返事をする。


 その時、野獣を感知したので皆に伝え、感知した方に行き野獣を討伐し続け、合計四体ゲットする。

 野獣の血抜きをするよう勧められたので、ナイフを取り出し首に当てる。

 ナイフが伸びない。


 「首にナイフを刺して、横に自分で動かして切るんだ」

 店主にそう言われナイフを首に刺す。

 あっ、簡単に刺さる。

 そのまま横にナイフを動かし頸動脈を切る。


 「おいおい。いい物を狩っているじゃないか」

 声がする方を見ると、柄の悪い三人がこっちに向かって来る。

 見るからに盗賊だと解る。

 「怪我したくなかったら、その肉は置いて行きな」

 

 うっわー。

 定番のセリフだな。

 「そっちの袋も置いて行け」

 そう言いながらある程度近づいたところでゴン!!


 そう、私の防御壁にぶつかる。

 「どうしたんだ?」

 店主が小声で二人に聞く。

 二人も解らないと首を傾げている。

 皆に防御壁のことは話していないから、何が起こったか解らなくて当然だ。


 「何が起こった?」

 ぶつかって倒れた者が仲間に聞いているが、仲間は解らないと言った顔だ。

 そりゃそうだ。

 防御壁は見えないからな。


 その時イーエルが盗賊の背後の木の隙間から顔を出した。

 「イーエル!」

 その場にいた全員が驚き、大声を出した。

 私は感知していたので解っていたけど。


 盗賊は慌てて逃げて行く。

 店主達も木の陰に隠れた。

 イーエルは、逃げた盗賊に向かって腕を振り下りして行く。

 イーエルを討伐して収納ボックスがもう一つ欲しい!


 そう思った瞬間、体が動いた。

 背中を向けたイーエルを討伐する為に、空中に飛び、後ろから頭目掛けて圧縮した風魔法を打ち込む。

 見事命中!

 イーエルはその場に倒れ込む。


 盗賊に取られないようにイーエルを防御壁で囲む。

 店主に早く解体して貰おうと振り返って見ると、口を開けて驚いている。

 他の二人も同じ表情だ。

 やってしまったかな?


 ゴン!!

 音のする方を見ると、またしても盗賊が防御壁にぶつかって倒れている。

 何やってんだか。


 「おいどうなっているんだ?」

 「何がある?」

 盗賊は壁を触って確認している。

 「壁?」 


 店主達は何が起こっているのか解らない様子で近寄って来た。

 「イーエルの眼石が欲しいです」

 皆にそういうと、盗賊が喚き出した。

 「それは俺らの物だ!」


 盗賊は無視して眼の縁にナイフを当てて眼石を取り出す。

 「そのナイフ凄いな」

 チャドさんが感心した目で見てくる。

 心石は胸にナイフを当てると、刃が伸びて腹部の方に動いた後、刃が短くなると同時に心石が出てきた。

 

 このナイフは野獣の大きさに合わせて刃の伸びる長さが変わるのか。

 「店主さんが作ったこのナイフ、本当に凄いですね」

 「そう言って貰えると嬉しいよ」

 盗賊はまだ壁の向こうで喚いている。


 煩いので、風魔法で三人とも遠くに飛んで行って貰った。

 三人は驚きが隠せない。

 「ゆきは魔法が使えるのか?」

 ルーベンさんが聞いてくる。


 「少しね」

 「少しじゃないぞ。ゆきは回復士が治せなかった、弟の怪我も治したんだ」

 余計な事言わないで欲しい。


 「さっき飛んだな」

 チャドさんも聞いてくる。

 「まぁ……」

 やばい。


 「ところで、さっきの盗賊は見えない壁にぶつかっていたな?」

 店主も不思議そうに聞いてくる。

 まぁ、色々と気になって当然だよね。

 「森に入ってから皆の周りと馬車に防御壁を張っていたの。突然野獣に襲われても怪我しないようにね」

 

 「野獣が来るのが解るのも魔法か?」

 「そう。魔法で野獣が近づいたら解るように感知していたから」

 「凄いな!」

 三人共、凄い凄いとはしゃぎ出した。


 その勢いのまま三人が手分けして解体し出す。

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