第5話 召喚5

 食後部屋に案内された。

 図書室があった建物の三階である。

 案内されたフロアには、部屋数が4部屋ある。

 私達召喚者がその内の三部屋を使っている。

 東の部屋は中野充、その横が山形美緒、その隣が私、神原ゆきの部屋だ。

 西側の私の隣の部屋は空室になっている。

 

 階段は左右と中央にある。

 私と山形美緒の間にある階段が中央階段だ。

 因みに図書室は一階フロアにある。


 部屋の中は入って右にクローゼットとベッドがある。

 部屋の中央にテーブルとイスが置いてあり、左手の壁に扉が付いている。

 その扉を開けると、バスタブとトイレ、洗面所がある。

 広いワンルームだな。

 

 バスタブの壁から出ている筒に文字が書いている。

 昨日のライトと同じ要領かな?

 声に出して読む。


 「イーツ」

 筒からお湯が出る。

 やっぱり。


 もう一つの文字は水だな。

 「イータ」

 水が出る。

 同じ言葉をもう一度言うと水が止まる。


 洗面所も同じで、トイレは水しか文字がない。

 トイレも水洗で良かった。

 部屋に戻りクローゼットを開けてみる。


 ゲッ!

 中世ヨーロッパ時代のドレスが並んでいる。

 一枚手に取ってみる。

 お……重い。

 ドレスってこんなに重いの?

  

 ドレスに装飾品が施されているからか、生地が重いからか、かなりの重量だ。

 これを着て走るのは辛いわ。

 夕食を持って来たメイドに装飾品がつていない男性用のシャツとズボンを頼む。


 仕事が早い。

 食事をしている間に用意してくれたようで、下膳する時に持って来てクローセットに掛けてくれた。

 一枚手に取る。

 何も付いていないと軽い。

 

 食後ベッドに横になりながら考える。

 私にはレベルがないから、追い出されるのも時間の問題だ。

 ここは帰る魔方陣より先に魔法を習得した方がいいだろう。

 確か、魔方陣の棚の横に魔法書もあった。


 まずは、サバイバル生活が出来る魔法を習得しよう。

 水と火だな。

 この二つがあれば何とか生きていけるだろう。

 早速、翌日から魔法の勉強を始めた。


 魔法の練習を始めて五日が経った。

 かなり上手く魔法が使えるようになってきた。


 図書室で魔法をメモ帳に書き留めていたが、面倒臭くなったから、携帯電話で写真を撮って部屋の浴室でそれを見ながら練習をしている。

 何故浴室か?

 水に濡れても問題ないし、火が暴走しても消しやすいからだ。


 一度使った魔法は頭で考えると直ぐ使えるようになる。

 召喚者だからかな?

 最近では水魔法や火魔法に風魔法を加えて飛ばす練習も始めた。

  

 飛ばし方が上手くなったら威力も出てきて、さっき浴室の壁に穴を空けてしまった。

 だから今、図書室で壁の修復魔法を探している。

 回復魔法で壁って修復できるかな?

 人も建物も同じかな? 


 修復する魔法には違いないよね?

 そう自分に言い聞かす。

 回復魔法の写真を携帯電話で撮り、部屋に戻る。


 ここに来て携帯電話の写真が大活躍だ。

 私はインスタとかしないから写真を撮ることが少なかった。

 いや~、写真最高。


 この携帯電話、どういう訳か電池が減らない。

 これも召喚の時の特典かな?

 助かるわ。


 早速、携帯電話の写真を見ながら、壁に手をかざす。

 回復魔法を使うと、壁の穴に光が溜まって穴が埋まっていく。

 証拠隠滅完了。

 回復魔法凄い。


 これ、人も治せるのかな?

 そう思って自分の手を見る。

 いやいや、自分を傷つけるとかムリムリ。

 

 壁に穴を開けないために、外で魔法の練習をする事にしよう。

 ここは三階、何回も階段を上がったり下りたりするのは大変だな。

 一回降りたら、夕方まで部屋に戻りたくない。

 そんな事を考えながらベッドに横になる。

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