第4話 召喚4

 サルナスに呼ばれてかなりの時間が経った。

 皆はレベル1だと答えたが、私の腕には0が見える。

 ゲームはしないけど私にレベルがない事は解る。  


 レベルが無いことは隠しておこう。

 レベルが無い事を理由に、ここを追い出されるかもしれない。

 もしくは、役立たずだと言われ、地下牢に監禁されるかもしれない。

 まさか殺されはしないと思うが……。


 異世界、何があるか解らないからな。

 用心するに越したことはない。


 サルナスが私達の前に袋を置く。

 「国王様より勇者様にこちらをお渡しするようにと仰せつかりました」

 中を確認する。

 お金?


 「100ザラールです」

 100ザラール?

 10と書いた紙が10枚入っている。


 「必要な物を購入して下さい」

 必要な物?

 この金額って多いのか、少ないのか解んないな。


 「町の食堂はいくらですか?」

 「食堂にもよりますが、町の人が食べる定食は2マナザラールあれば十分です」

 ん?

 マナザラール?


 数字の後ろが違うような。

 「マナザラール?」

 聞き返す。

 「1ザラールが10マナザラールです。」


 「これで食堂行けるわ。昨日来てから何も食べてないからお腹が空いていたのよ」

 二人がこっちを見る。

 「何も食べていない?」

 サルナスが身を乗り出して聞いてくる。


 「そうよ。ここがどこかも解んないし」

 「お部屋に配膳するようお伝えしていたのですが、申し訳ありません。」

 サルナスが頭を下げる。


 「手違いがあったようです。今後はこのようなことがないように致します」

 部屋?

 「部屋って何?」

 「はっ?」


 サルナスはキョトンとする。

 「私、昨日は図書室の床で寝たのよね」

 「としょしつ~?」

 サルナスが大声で聞き返してくる。

 二人もビックリしたようにこっちを見る。


 サルナスは私達を見て立ち上がる。

 「今から食堂に行きましょう」

 そう言って歩き出し扉を開けて出るよう促す。


 食堂は隣の棟にあった。

 「こちらは職員食堂になっています」

 サルナスに続いてトレイを取ると、お皿に料理が盛られていく。

 スープとバゲット、メインは何かの肉だ。

 蛙や鼠の肉なら嫌なので、肉の正体は聞かないでおこう。

 

 恐る恐る肉を食べる。

 柔らかい。

 食事の味付けは美味しい。

 「ここの料理が2マナ何とかで食べられるの?」


 計算して食べないと。

 お金は直ぐ底を付くからな。

 「こちらは無料でございます。王宮で働いている者は無料で食べられます」

 「おうきゅう~?」 

 大きい声が出た。


 「ここ王宮なの?」

 「はい」

 そう言えばさっき、国王からのお金って言っていたな。


 この食堂は二十四時間で、夜中は食事の提供はないがパンやお菓子、お茶は準備されていて自由に食べることが出来るらしい。

 ここは、王都アラルメナというらしい。

 海を渡った先には魔国、エルフ国、ドワーフ国等がある。

 それぞれの国が、海を挟んで存在する為、今は戦争がなく平和な世の中だそうだ。


 各国との貿易も盛んで今の段階では問題が発生する可能性は考えられないと言う。

 マジ、何で召喚した?

 食事をしながらサルナスに、私達を元の世界に戻す魔方陣について聞いて見る。


 「ところでサルナス?」

 「……」

 一同、呼び捨てなんだと思った。

 「……はい。何でしょう?」

 一瞬、間ができたがにこやかにサルナスは返答する。


 「私達を元の世界に帰す魔方陣は作れるの?」

 前でお茶を飲んでいた中野充も、彼の横でケーキを食べている山形美緒もサルナスを見る。

 サルナスは全員の顔を見て。

 「作ってみます。」

 頷きながら返答する。


 作ってみます?

 作るじゃなく、作ってみますか。

 期待薄だな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る