第3話 召喚3

 メイドに図書室とは違う、別棟に案内される。

 二階に上がりメイドが部屋をノックし扉を開ける。

 部屋の中は、窓の前にソファーとテーブルが置いてあるだけで殺風景だ。

 飾りが一切ない。



 一緒に召還された2人は既にソファーに座っている。

 私も2人の横に座る。

 「はじめまして、私はサルナス・イカラーナと申します。騎士部魔法科の部長をしています」

 昨日の暗い顔とは違い、笑顔で挨拶してくる。


 その挨拶に誰も返事をしない。

 私も挨拶する気になれない。

 元はと言えば、こいつが諸悪の根源だからな。

 只、黙ってサルナスを見る。


 「皆様には申し訳ないと思っています。私の魔力が強く、作った魔法陣の威力が高かったため、三人もお呼びしてしまいました」

 おい、サラっと自慢か?


 「まさか本当に勇者様を召還出来るとは思わなかったので」

 自分の実力の凄さを、猛アピールするな。


 「ちょっとしたテストがこんなことなってしまって。あっ、皆様の生活援助は致します」

 えっ?

 テスト?

 まさか、用事もないのに呼んじゃいましたとか?


 サルナスの話を、男性の召喚者が遮る。

 「俺達、何をしたらいい?魔王でも討伐するか?」

 はっ?

 魔王?


 あんた、今の話聞いていた?

 テスト召喚だよ。

 私達、必要ないの。

 

 「今は魔国とも友好関係にございます。他の国々ともいい関係性が築けておりますのでそう言ったことは必要ありません」

 男性の質問にサルナスが答える。

 ほらね。

 必要ないでしょ。


 「じゃ、俺達を呼んだ理由は?」

 だからテストだって。


 「先程も説明致しましたが、勇者召喚の魔方陣を作ったので、テストしたのです。今は平和なこの世界です。正直、勇者は必要ございません。」

 おい、サラッと凄いこと言ったな。

 全員、空いた口が塞がらない。


 私達の気持ちはお構いなしに今度はサルナスが聞いてくる。

 「勇者様のお名前を教えて下さい」

 これまた笑顔で訪ねてきた。

 この空気、読めないかな?


 「俺は中野充」

 ぶっきらぼうに彼が言う。

 「なかのみつる勇者様。何とお呼びすれば宜しいですか?」

 「は?呼び方?」


 少し考えて答える

 「どっちでもいいよ」

 「どっちでも?」

 サルナスが首を傾げる


 「中野でも充でもだよ」

 「どちらが名前ですか?」

 「名前は充だ。中野は姓だよ」


 サルナスは隣の彼女を見る。

 「私は山形美緒」

 面倒臭そうに言う。

 「どうお呼び……」

 サルナスが全部言う前に彼女は答える。

 「美緒が名前」

 

 最後に私を見る。

 「神原ゆき。名前はゆき」

 先に聞きたいこと全部言う。

 「ゆき勇者様」

 名前の後ろに勇者が付くのね。


 「それで、勇者様達のレベルを教えて下さい」

 レベル?

 レベルって何?


 「左肘の辺りに数字が出ていると思います」

 あぁ、昨日から何かなって思っていたわ。

 肘の下辺りの皮膚に浮いた帯が付いていて、そこに数字がある。

 手で隠すと見えなくなるけど隠してなかったら視界に入ってくる。


 帯は細く短く、数字は小さいから気になる程ではない。

 これって人には見えないようだ。

 横にいる彼女の肘を見るが数字は見えない。


 「レベル1だ」

 中野充が答える。

 「私もレベル1」

 山形美緒も1と答える。


 1?

 1なの?

 サルナスがこっちを見ている。

 「私もレベル1です」


 嘘を付いた。

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