第2話 召喚2

 ここで嘆いても仕方ない。

 さっきの男性に声を掛ける。

 「魔法陣が書いている本が見たいから、図書室に連れて行って」

 先ずは行動あるのみ。


 男性は快く案内してくれた。

 「こちらです」

 部屋を出て図書室に向かう。

 図書室は別棟にあるようで一度外に出て案内された。


 図書室の中は2階建てになっている。

 入口を入ると左右の壁沿いに階段がある。

 階段は緩く弧を描くように造られている。

 本棚は上も下も奥に配置されており、入口の近くにテーブルと椅子が並べられていた。

 テーブルの上には等間隔で四角い箱が置かれている。


 二階に上がり一番奥の本棚に案内された。

 「魔法陣の書物はこちらです」

 壁一面ビッシリ分厚い本が並んでいる。

 これを全部調べるのは無理だ。


 「魔法陣の作り方はどれ?」

 「こちらが魔方陣の作り方を記した書物です」

 三つ目の棚を指した。

 「ありがとう」

 お礼を言って本を手に取る。


 本を数冊持って机に置く。

 鞄からメモ帳とボールペンを出して、さっき写真に撮った魔方陣を書き写す。

 携帯電話の電源がいつ切れてもいいように、今の内に魔方陣を書き写し、いつでも確認出来るようにしておく。


 携帯電話の電源が切れる前にもうひとつ。

 妹にラインをする。

 元の世界に届くことはないだろうけど、一応私が勇者召還されたことを書いて送信する。

 ついでに、さっきの写真も送信。


 テーブルに置いた本を捲って魔法陣の形を見ていく。

 これと似た魔法陣を探すが、どれもこれも同じ形に見える。

 簡単じゃないな。


 文字は日本語じゃないのに読めちゃいます。

 召還の時にこっちの文字が記憶の一部として刻まれたのかな。

 なんか外国語を修得出来たって感じ。 


 どれ位本を見ていただろう。

 辺りが暗くなってきて、文字が見辛くなってきた。

 机の上の四角い箱を手に取り書かれている文字を見る。


 イール?

 声に出して読むと四角い箱の上に丸い光が出来た。

 おぉ~!

 明るい!

 電気の明るさ以上に明るかった。


 イールの文字は後側にも書かれている。

 箱の左右は違う文字が書いている。

 イーラ?

 声に出して読むと丸い光が消えた。


 これって電気のスイッチが書かれているのね。

 箱を2個傍に置き灯りを付けた。

 仕事終わって更衣室を出たのが夕方の6時。

 携帯で今の時間を見ると夜の9時。


 ここの時間は何時だろう。

 図書室の床に横になって本をお腹の上に置いて考える。

 考えながら、いつの間にか寝ていたようだ。

 誰かの声で起こされる。


 「勇者様。勇者様。」

 誰?

 体が痛い。

 図書室の床で寝ちゃったのか。


 「サルナス様がお呼びです。」

 サルナス?

 あぁ、昨日項垂れていた人か。

 「何時?」

 欠伸をしながら、呼びに来た女性に時間を聞く。


 「何時?」

 ん?聞き帰された?

 ここは時間がないのか?


 「今は朝?昼?」

 「昼前でございます。」

 昼前か。

 呼びに来たメイドと一緒にサルナスの所へ向かう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る